Aguhont Story Record 18th Episode

『干渉コード:Bought or Stolen』 

作:よぉげるとサマー 

(1:2:2) ⏱80分 

 

■キャラクター紹介

〜〜〜〜〜〜

※ 前提として、最小5人台本です。

 キャラ名( ):

 の台詞は、キャラ名の方が全て担当。

 商人のみ、ヴェールに兼役頂く想定での最小5人です。

 ただ、本作出演のキャラクターはキャラ名( )含めて、10項目で紹介を記載しております。

 台詞のバランスを考えて、兼役を適宜振り分け、お好きに人数調整をして演じて下さればと思います。

〜〜〜〜〜〜 

ヴェール:

 バルナ国 近郊の森で防具屋を営む女エルフ。

 かつては戦いの日々に身を投じていたが、いまではボケジジイに絡まれる日々を送っている。

ナキオ:

 元軍人の隠居老人。

 ボケ改善の為も兼ねて、新たな刺激を求め、趣味を増やしている。

 健全な精神は健全な肉体に宿る、という言葉の下、バルクアップに勤しんでいる。

ネコ:

 タングリスニ国 軍部所属のネコ型じゃないアンドロイド。

 ようやくの国外任務により、ネコ耳とメイド服をパージできた。

 まだ義体の見た目に慣れないのか、鏡や反射物の前で立ち止まり変なポーズをしていることが多い。

 ネコ(潜入用義体):

  猫獣人を模した義体。潜入用なので外観だけではアンドロイドとは分からない。

  潜入時は本来の声と性格を少し変化させるようにしている。

 ネコ(博士):

  義体をハッキングされ、リモートで操作された状態。

  一時的にネコの人格形成プログラムをスリープさせ、義体の眼球カメラと擬似声帯を通してコミュニケーションをリモートにて行っている。

  ネコがマリシ国にいた頃からの同僚である、タングリスニ国軍部所属の自称天才のクズ人間が中身となる。

ティアン:

 所属不明の謎獣人。

 歴史の見届け人として暗躍しているようだが、結構人目につく。

 二つ対になっている双剣には、何かしらのつよつよパゥワァが秘められいるとかいないとか。

 煽りが上手い。買い物下手疑惑がある。

479:

 タングリスニ国 軍部にて開発されている人工知能。虫型機体『戦略兵装-多脚六型:七星』(せんりゃくへいそう たきゃくろくがた ななほし)や鳥型機体『戦略兵装-双翼ニ型:鶫』(せんりゃくへいそう そうよくにがた つぐみ)を義体化し軍事作戦をサポートする。

 が、今回は様子がおかしい。

 ちなみに鶫は飛行能力に特化した機動性重視の機体で、体積も小型な為、隠密作戦に利用される場合が多い。

 兵装もサポート的な物が基本であり、重量制限がシビアな為、殺傷能力が低い物しか積めない。

 479(e53):

  479の操作する義体、鳥型機体『戦略兵装-双翼ニ型:鶫』(せんりゃくへいそう そうよくにがた つぐみ)へのハッキングし、コントロール件を奪った謎の人物(?)。

  特徴的な笑い方と喋り方をしており、性別も不詳である。

 479(博士):

  479の操作する義体、虫型機体『戦略兵装-多脚六型:七星』(せんりゃくへいそう たきゃくろくがた ななほし)の操作権を正式に借りて、通信している状態。

  ナナホシ型に擬似声帯は無く、内蔵スピーカーより通信音声を流している。

  中身はタングリスニ国 軍部所属の自他共に認めざるを得ない稀代の超大大大天才、ギャギャギャリアン・ヴェルナヴァンド(名前)である。

商人:

 バルナ国 首都の裏通り、闇市にいた商人。

 老人のようだが、フードを深く被っており、性別や見た目は分からない。ただ、人の形をしているのは、確かだ。

 


〜〜〜〜〜〜

*aguhont://アグホント大陸/バルナ国/バルナ首都近郊の森/ヴェールの防具店/


ナキオ:

 ……どうですか、先生。

ヴェール:

 うーん……とりあえず、その先生ってのやめてくんない?

ナキオ:

 いやいや、先生は先生ですからのぅ。

ヴェール:

 そんなん言われる程のことしてないって。

ナキオ:

 ほっほっほっ、いやはや。

 やはり「賢者は己を誇らない」とは、真実ですな。

ヴェール:

 今度は賢者になったし……本当、やめてくれ。

ナキオ:

 それはさて置き。

 ワシが作ったこの革鞄(かわかばん)。ご講評をお願いしますよ。

ヴェール:

 ……アンタだけだぞ、革細工教室以外の日に図々しく押しかけて来るの。

ナキオ:

 ほっほっほっ、こんな老人までもを魅了してしまうなんて。

 いや、職人の技とは、罪深い物ですなぁ。

ヴェール:

 そこまで評価される物作れてるかねぇ……というか、教室だって、子供の為に開いてるんだから……私から見たって、子供扱い出来る年齢じゃないぞ、アンタ。

ナキオ:

 良いじゃないですか。あんまり盛況じゃないのですから。

ヴェール:

 うるせぇなっ! はぁ……1番参加してるアンタを怖がって寄り付かないんじゃないかい?

ナキオ:

 ほっほっほっ、こんな好好爺(こうこうや)を前に、何をおっしゃるやら。

ヴェール:

 いや、アンタ全然イカついからな?

 あと、革細工作り始めると殺気みたいなの出てるからな?

 あれ、本当に。やめてくれ?

ナキオ:

 うむぅ……武器を握ると、つい。

ヴェール:

 ハンマーも針も、細工用ので、武器じゃねぇんだよ!

ナキオ:

 オヌシ、ワシを舐めておるな……?

 どんな物でも、闘いとなれば、武器にして見せようぞ。

ヴェール:

 革細工は、闘いじゃねぇだろが!

ナキオ:

 はい。すみません。

ヴェール:

 ったく……まぁ、いいや。見せてみなよ、それ。

ナキオ:

 ……ん?

ヴェール:

 ……ん?

ナキオ:

 ……なんじゃったかの?

ヴェール:

 ボケてるぅー!

 アンタが作った革鞄見てくれって話だったろうがーい!

ナキオ:

(※無駄に深刻そうに)

 はっ……そうじゃ……思いだしたっ。

 あれは、いまから60年前の出来事じゃった……。

ヴェール:

 やめて。聞いてもいない話を続けないで。

ナキオ:

 タングリスニの悪政下、ひとりのエルフの娘が囚われており、酷く辛い労働と拷問を受けておった……その頃、ワシは軍部の将校をしており……。

ヴェール:

 やめろって! 聞きたくなっちゃうって!

 今回そういう話じゃないでしょ、じいちゃん!

ナキオ:

 ……なんのぉ、話じゃったかぁ……。

ヴェール:

 ボケてるぅー!

 聞きたくないって言いつつ、ちょっと続けて欲しかったのにー!

 ボケが来たー!

 あー、どんな話だったんだろうなー!

ナキオ:

 まぁ、そんなことより、さっさと革鞄見てよ。

 良い加減、長いって。

ヴェール:

 クソジジイ……!

ネコ(潜入用義体):

 カランコロンカランコロン……邪魔するよぉ。

ヴェール:

 そんな鳴物(なりもの)は、うちのドアにゃついちゃいないぞ。

 てか、準備中なのに入ってくるなっ!

ネコ(潜入用義体):

 鳴る物が無いから、ご丁寧に口から鳴らしてあげたんだよー。

 あと、邪魔するよぉって言ったんだから、邪魔になるのは当たり前なんだよなー。

ヴェール:

 ご丁寧に説明してくれてありがとよ。

 邪魔だ、帰れ。

ネコ(潜入用義体):

 ひっどーい! 来たばっかだよっ!

ナキオ:

 ほっほっほっ、元気が良い子じゃのう。先生のお友達ですかな?

ヴェール:

 知らん、誰だお前。

ナキオ:

 初対面ぇん? えぇ……仲良さそうだったじゃぁん……。

ヴェール:

 私の知り合いに、生きてる獣人は少ないんだ。知らないねぇ。

ネコ(潜入用義体):

 私は、クライドヌ。よろしく。

ヴェール:

 クラ? え? 呼びにくっ。

ネコ(潜入用義体):

 まぁ……クライって、呼んで。

ヴェール:

 そうかい。私はヴェール。

 ここの防具屋の店主だ。

 よろしくな。帰れ。いますぐに。

ナキオ:

 ちょ、ちょっと、先生。

 その態度は、あまりにも可哀想すぎませんかのう……。

ネコ(潜入用義体):

 えぇ、ワタシも先刻からそう思っていました。

 あまりにも、とりつく島が無い。

 まだ何もしてないのに、店に入っただけなのに。

ヴェール:

 ずけずけと知らねえ奴が、入んなって書いてあるとこに侵入してきたら、追い返すが吉(きち)。

 可笑しな奴を相手にする趣味も寿命も無いんだよ、こちとら。

ナキオ:

 おぉ……思っている以上に警戒しておる……元軍人で良いとこまで行ったワシより、リスク管理出来ておる……これが若さか。

ヴェール:

 だーから、アンタより年上だっての!

ネコ(潜入用義体):

 ……あははっ、まいったなー、こんなに警戒されるとは……予想外だよ、ヴェール。

ヴェール:

 てめぇ……何の用で来たかは知らねえけどな……私の店と作品に傷ひとつでも付けやがったら……。

ナキオ:

 ふおぉ……職人の怒り方じゃ。カッコ良。

ヴェール:

 きっちり、全額弁償して貰うからな!

ナキオ:

 商人の怒り方じゃった!

ネコ(潜入用義体):

 ふふっ……しょうがないね。じゃあ……。

ナキオ:

 この感じ、こやつも手練れ(てだれ)じゃな。

 闘いとなれば、ワシが身を挺(てい)してでも……。

ネコ(潜入用義体):

 せっかくはるばる来たのに、営業してないから、めちゃくちゃガッカリしたけど。

 中に人が居たから、ラッキーってテンション上げて入ったら、普通に怒られたから……ちゃんと次は、営業してる時に来るね……。

ナキオ:

 ただの客じゃったぁ! しかも、ちょっと迷惑な!

ヴェール:

 ……おい、待てよ。

ネコ(潜入用義体):

 ……何かな?

ナキオ:

 またもや剣呑(けんのん)な雰囲気じゃ……何かに気付いたのか、先生!

ヴェール:

 お客様だったんならぁ、先に言って下さいよぉー!

 いやぁ、どうぞどうぞ、見てって下さぁい!

 あ、お茶でも飲まれますぅ?

ナキオ:

 へりくだったぁ!

 そうじゃあ! 先生、金に困ってるんじゃったぁ!

ネコ(潜入用義体):

 えっと……金なら、ある!

ヴェール:

 ははぁーっ!

ナキオ:

 ひれ伏したぁー!

 先生、そんなことより、ワシの鞄を見て下さいよぉー!

ヴェール:

 うるさいっ!

 縫製(ほうせい)時に力が入り過ぎてる部分が目立つけど、革模様の付け方が、お洒落(しゃれ)なのと、教えたことを活かせてるから、75点っ! 

ナキオ:

 え……トゥンク……ちゃんと、見てくれてる……んもぅ……せんせぇ。



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*aguhont://アグホント大陸/バルナ国/バルナ首都近郊の森/ヴェールの防具店の側/


479(木の上):

 うーん、強引に入って行った……出だしから心配ですねぇ。

 大丈夫でしょうか、ネコさん……ダメな気はしていますが。

ティアン(茂みの中):

 うーん、あいつ突撃してったなぁ……クローズって札読めなかったのか?

 いやぁ……んな訳無いよねぇ。やっぱり、ヴェールが狙いかなぁ。

479:

 やはり、ナナホシ型でリュックに擬態して、付いて行くべきだったかもしれませんね。

 鶫(つぐみ)型だと、フォローが難しい。

 なぜ博士は、ネコさんにネゴシエーションのようなことをさせたのでしょうか……どう考えても、向いていない。

ティアン:

 やっぱり、こっちも店に入った方が良いかなぁ……いや、干渉(かんしょう)し過ぎになっちゃう?

 でもなぁ、流石に中の様子を伺うのも、こっからじゃあ難しいよねぇ……。

 くっそぉ、たまには隠密に徹しろとか、おっちゃんが、くどくど言うから、面倒なことになってんぢゃん……うあぁ、店に突っ込みたいぃ。

479:

 この義体では、戦闘の補助は出来ても、戦闘力になることは難しいですし。

 ここまで離れていては、碌(ろく)なことが出来無い……。

 店の窓際付近までくらいは近付いた方が……でも、私のサポートは今回ネコさんにバレてはいけないと博士から言われているし……。

 いや、そもそも作戦が失敗するリスクを放置している方が問題では?

 タングリスニの国益を損なうことは、博士ですら望んでいないでしょうし……。

 しかし命令違反に……いや、総合的に判断すると、これはむしろ正しい選択なのでは……?

 

ティアン:

 てかさぁ、ちびっと音だけ聞こえたって、状況良く分かんないって。

 やっぱり、記録に残すなら、リアルな体験ぢゃーん?

 ヴェールの店に突撃するべきだよ、そう思うよねぇ?

 (※以下、適宜、声音を変えて)

 うん、僕もそう思うー。

 私もー。俺もだー。

 そうだそうだー。これは民意だー。

 うむ、皆の意見は良く分かったぁ。村長のワシも、そう思うぞいっ。

 (*声音を戻す)

 あちゃー、村長もそう思ってんなら、ダメだー。こりゃ、行くっきゃないねっ。

479:

 博士も、おっしゃっていました。

 やって良いか迷った時はやるべき。

 やって怒られたら、無視すれば良い。

 しつこければ、謝っておけば大概セーフ、と。

ティアン:

 おっちゃんに、まぁた『お小言(こごと)』言われんのは癪(しゃく)だけどぉ。

 そもそも、自分たちの目的や使命を忘れちゃいけないんだよ、そもそもねぇ。

 それに、誰しも向き不向き、十人十色、千差万別……あ? 何言おうとしてたっけ……。

 えぇー……あぁ……ま、まあ、なんか、そんなんあるぢゃんねっ?

 つまり、そゆことよっ。

479:

 ふぅ、論理的思考が出来て良かった。

 危うく作戦の成功率を、著(いちじる)しく下げるところでした。

ティアン:

 あぁ、スッキリ解決して良かったぁ。

 おっちゃんのオッサン臭い説教で、自分の良さを見失うところだったぁ。

 

479:

 では、行きますか。『飛行(フライト)機構』起動。

ティアン:

 んじゃ、とーつげきー。よぉーっこらせーい。

479:

 ん?

ティアン:

 あ?

479:

 ……あ、ここら辺のぉ……方、ですか?

ティアン:

 ……えっと……まあ……。てか、え、鳥? ん? 機械?

479:

 えっとぉ……これは鹵獲(ろかく)するべきかぁー……どうしましょっ……うっ!?

ティアン:

 え、なにっ?

479:

 こ、れ……なん……エラー……どう……。

ティアン:

 えー、なになに? どうしたのさ、出会って突然……え、びっくりして壊れたとか?

479:

 ユーザーログアウト。別名ユーザーにてログインが試行中……ログインに成功しました。

ティアン:

 これは……嫌な予感だねぇ……。

479(e53):

 ……うぅーん……コントロール奪取(だっしゅ)、成功。

 てなわけでぇー……拘束バンド、射出ぅ。ポチィッとぉっ!



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*aguhont://アグホント大陸/バルナ国/バルナ首都近郊の森/ヴェールの防具店/取扱い商品紹介/


ヴェール:

 でー、これなんかどーよ? 黒龍石(こくりゅうせき)をベースに鍛(きた)えたナイフだ、綺麗だろ?

ネコ(潜入用義体):

 へぇ……いいね。綺麗な仕上げだ、グリップの握りも馴染みやすいように工夫されてる……切れ味も良さそうだね。

ヴェール:

 あぁ、その点もお墨付きさ。果物も硬い根菜も、スパーっと切れるよ。

ナキオ:

 えっ、その見た目で料理用なのですか?

ヴェール:

 うーん……兼用かな。

ネコ(潜入用義体):

 兼用とかあるんだ……。

ナキオ:

 まぁ……サバイバルナイフ的な物ですかな。

ネコ(潜入用義体):

 それにしちゃあ、殺意高いデザインだけどね……。反射止め加工もされてるし……。

ナキオ:

 めっちゃ暗殺用な感じですな。

ヴェール:

 いやいや、物切ってる時に光が反射したら眩しくて危ないだろっ。そんだけだよっ。

ナキオ:

 料理中に、そんな眩しくて危ない状況は、無いと思うんじゃが。

ヴェール:

 無いとは言い切れねぇだろっ。

ネコ(潜入用義体):

 まぁ……何にせよ、多目的で使えるのは良いね。

ヴェール:

 ですよねぇー。ほら、わかる人にはわかんだよ。

ナキオ:

 うーん、ですが……この辺りで作って売るには、過ぎたスペックでは?

ヴェール:

 それは……っ、いいだろ別にっ。半分趣味で作っただけなんだから。

ネコ(潜入用義体):

 防具の腕もさながらに……うん、武器だって素晴らしいじゃない。趣味なのが勿体無いくらい。

ヴェール:

 あはは、嬉しいこと言ってくれるねぇ……ただ、趣味くらいなのが丁度いいんだよ。

 武器なんてさ……売物にしちゃいけない。

ナキオ:

 ……んむ。

ネコ(潜入用義体):

 そうかな? 需要はあると思うけどね。

 ここら辺だと、狩人とか、傭兵とか。

 そういうのが、入用(いりよう)になるんじゃない?

ヴェール:

 それが生活に必要ってんなら、私に助けてやれることもあるさ。

 ……だけど、戦いの道具になるなら、話は別だ。

ナキオ:

 先生は、死なない為の手助けはして下さる。

 だが、殺す為に腕を振るうことは無い……ということですな。

 ほっほっほっ、何とも素晴らしき職人魂かな。

ヴェール:

 そんな大したもんじゃないよ……単に、つまらないだけさ。

ネコ(潜入用義体):

 つまらない?

ヴェール:

 あぁ。自分の作ったもんで、誰かが傷つくなんて……そんな、つまんねぇことないだろ?

ナキオ:

 先生……。

ネコ(潜入用義体):

 ふぅーん……。

ヴェール:

 ……だあぁ、もうっ、なんかっ!

 辛気臭せぇ空気になっちまったねっ!

 あっ、あと、先生って呼ぶなって言ってんだろっ!

ナキオ:

 ……ほっほっほっ、照れ隠しする先生も可愛らしいですなぁ。

 いやはや、ワシが先生より若ければ、告白しているところでしたよ。

ヴェール:

 なぁっ!? か、からかいやがって!

 てか、何度も言うけど、私の方が年上だっつの!

ナキオ:

 え……つまりそれって、先生よりワシの方が若いから……告白しろってことぉ!?

ヴェール:

 黙れクソジジイ! くたばれ!

ネコ(潜入用義体):

 なーるほどねー。

ヴェール:

 あっ、すまないねぇ……ジジイがうるさくってさ。

ネコ(潜入用義体):

 いや、気にしてないよ。仲が良くていいじゃない。

ナキオ:

 そんな、夫婦みたいだなんて……。

ヴェール:

 言ってねぇだろっ!

ナキオ:

 ほっほっほっ……飯はまだかぁ!

ヴェール:

 またボケやがってっ! 勝手に食えっ!

ネコ(潜入用義体):

 ふふっ……ねぇ、ヴェール。

ヴェール:

 なんだよっ!

ナキオ:

 先生、引っ張られて大声になってますぞ。落ち着いて落ち着いて。

ヴェール:

 誰のせいだっ!

ナキオ:

(※せつな気)

 ……誰かのせいになんて、して欲しくない。

ヴェール:

 うるせぇよっ! お前のせいじゃっ!

ネコ(潜入用義体):

 ヴェール。

 君はどうして、武器を作ったんだい?

ヴェール:

 んあ? どうして?

ネコ(潜入用義体):

 君は、武器という物に、忌避感(きひかん)を抱いている。

 けれど、趣味だと言って、こんな……素敵なナイフを、作っている。

 どうしてだい?

ヴェール:

 ……それは。

ナキオ:

 それは武器じゃない。先ほど先生は、そうおっしゃったではないですか。

ネコ(潜入用義体):

 えっと、ナキオさんだっけ?

 貴方にだってわかるはずだよ。

 これは……人を殺す道具だ、って。

ヴェール:

 っ。

ナキオ:

 道具も技術も、使い手によって、毒にも薬にもなる。

 突き詰めれば、カトラリーも、裁縫道具も。

 使い方を誤れば、何かを壊すことが出来る。

ネコ(潜入用義体):

 金言(きんげん)だね。

 でも、使い手がそれを決めるのなら……作り手が何を願ったって、変わらないんじゃない?

ナキオ:

 ほっほっほっ、揚げ足取りがお上手ですな。

 ……つまり、何が言いたいので?

ネコ(潜入用義体):

 ヴェールはさぁ……本当は、武器を作りたいんじゃない?

ヴェール:

 違うっ!

ネコ(潜入用義体):

 へぇ、じゃあこのナイフは何なの?

 夜闇に紛れて敵を殺す為の武器じゃないの?

 まさか、眩しい照明浴びながら使う為のバターナイフじゃないよね?

ヴェール:

 違う……確かに、武器なのかもしれない。

 けどそれは、人を殺す為に作ったんじゃない。

ネコ(潜入用義体):

 何を言ってるのさ。

 武器は、人を殺す物だよ。

ヴェール:

 あぁ、そうさ……でも、それは……人を守る為に作った道具だ。

ネコ(潜入用義体):

 守る?

ヴェール:

 堅(かた)い黒龍石(こくりゅうせき)は、耐久性に優れてる。

 どんな爪や牙……刃や銃弾だって弾いてくれるさ。

ナキオ:

 なるほど……高性能なアーマーにも使用される素材ですからな。

 それを元にした物となれば、防御面でも優秀……そして、刃こぼれもしにくく、継戦能力(けいせんのうりょく)も高いですな。

ネコ(潜入用義体):

 ……言いたいことはわかるよ。

 でも護(まも)ることに長(た)けているって……それは同時に、戦闘に特化しているってことなんじゃない?

ナキオ:

 どうやら……オヌシは、喧嘩を売りに来たようじゃな?

ネコ(潜入用義体):

 あはは、怖いなぁ。

 私はただ買い物しに来ただけだよ……良い武器を、ね。

ナキオ:

 無礼者がっ……!

ヴェール:

 やめなっ!

ナキオ:

 っ、ですが……!

ヴェール:

 良いんだ……わかってんだよ、自分でもさ。

 どんな言い訳並べたって、結局は戦いの道具になっちまう。このナイフも……盾も鎧も、ね。

ネコ(潜入用義体):

 そうだよ。日常生活を平和に送りたいだけなら、武器も防具も作る必要無い。

ヴェール:

 はっ……そうだよ。その通りだ。

ナキオ:

 先生……。

ヴェール:

 矛盾してんのは、百も承知さ……見ないようにしてただけで……ずっと頭の片隅にこびりついてんだ。

ナキオ:

 ……けれど、それでも防具を作り続けたのは、先生なりの理由があるのでしょう?

ヴェール:

 ……人っていうのは、どうしても争わないと気が済まないみたいでね。

 どんなに平和に見えてたって、水面下じゃ血生臭い争いが、絶え間無く続けられてきた。

ネコ(潜入用義体):

 見てきたような口振りだけど、年の功って訳かな?

ヴェール:

 あぁ、伊達に長く生きちゃいないさ。

 ……嫌なもんをクソほど目にしたよ。

 それに……クソなことも、嫌になるくらいやった。

ナキオ:

 ……軍人は、国に逆らえないことの方が多い、ですからな。

ヴェール:

 それでもっ……私がやったことだ。言い訳なんて出来やしない。

 ……だから、私は逃げたんだ。嫌になって逃げた。

 ……自分に、嫌気がさしてね。

ネコ(潜入用義体):

 それで……逃げた先で、この店を開いたと。

ヴェール:

 ……笑えるだろ。人を傷つけるのが嫌になって、逃げたってのに……私には、戦いの道具を作ることしか出来なかった。

ナキオ:

 そんなことありません。先生は、革細工を子供たちに教えているではないですか。

 それに、危険から身を守る為の防具ばかり作っている。

 充分ですよ。誰にも恥じることのない、立派な選択です。

ヴェール:

 ……ありがとな。私なりに、贖罪(しょくざい)のつもりだったんだ。

 せめて、誰かを守れるように。

 せめて、誰かの助けになれるように。

 ……そうやって、この店を続けてきた。

ネコ(潜入用義体):

 ふぅーん……じゃあ、武器を作りたい訳じゃないんだ?

ヴェール:

 ……いや、必要なら……作るさ。

 それが、守る為に使われる物ならね。

ネコ(潜入用義体):

 そっか……じゃあ、守る為の物。作って貰っちゃおうかな?

ヴェール:

 いいや、お前にゃ売れないね。

ネコ(潜入用義体):

 あれー、どうして?

ヴェール:

 血生臭いからだよ、軍人さん。

ネコ(潜入用義体):

 ははっ……金ならあるんだけどなぁ。

ヴェール:

 あいにく、金なんてずっと困ってんだ。

 今更貰えなくたって、こちとら痛くも痒くも無いね。

 国に帰りな、クソガキ。

ナキオ:

 ほっほっほっ! いやぁ、嫌われてしまいましたな、クライ殿っ!

 さぁさぁ、お立ちなさいな。ワシが店の外まで、お見送りしてさしあげよう。よっこらせ、と。

ネコ(潜入用義体):

 いや……お構いなく。怒らせちゃったみたいで、申し訳ないね。

 残念だけど……買い物は、終わりだ。

ナキオ:

 っ、先生っ!

ヴェール:

 あ? うぉっ!?

ネコ(潜入用義体):

 ……へぇ、老いぼれのくせに、素早いね。

 でも、危ないよ?

 当たりどころ悪かったら……死ぬかもよ?

ヴェール:

 あっ、うぇっ、テーブルが真っ二つにぃっ!

ナキオ:

 貴様……何のつもりじゃ?

ネコ(潜入用義体):

 べつに?

 買い物して帰れないなら……無理矢理作らせるしかないじゃない?

 それだけ。

ナキオ:

 ほっほっほっ……ワシの前で、よくもそんなことが言えたなあ……無知とは、恐ろしいのう。

ヴェール:

 えぇっと……なんか私、攫(さら)われそうになってる?

ナキオ:

 おぉ、すみませんな、先生。手荒な真似をしてしまい。

ヴェール:

 いや、それは別に。助けて貰ったんだしさ……。

ナキオ:

 咄嗟だと加減が難しいですな。まさかテーブルを壊してしまうとは。

ヴェール:

 お前かよっ! あっちの攻撃じゃないんかいっ!

ネコ(潜入用義体):

 なるべく、君も含めて何も壊さないようにしたいんだよ、こちらはね。

ナキオ:

 ふんっ、たとえこの店がぶっ壊れようとも、先生はお守り致す。

ヴェール:

 店も守れよ! 敵の方が良心的なの、何なんだよっ!

ネコ(潜入用義体):

 ははっ、守るだなんて無理だよ。

 だって……壊す為に、暴力は振るう物だからぁ……。

ナキオ:

 ナイフお借りしますぞっ!

ネコ(潜入用義体):

 ……さぁっ!

ナキオ:

 ふんがっ!

ヴェール:

 うわぁっ!

ナキオ:

 っ……先生に、危害を加えたくないんじゃ無かったのか?

ネコ(潜入用義体):

 多少はしょうがないでしょ……それに、アンタが守るんだから、問題ないんじゃ?

ナキオ:

 ほっほっ……然(しか)り。うらぁっ!

ネコ(潜入用義体):

 ぐっ……ふはは、隠居した爺さんの筋肉量じゃないでしょ。

ナキオ:

 何事も……ふんっ! 体が資本っ。

 新たな刺激を得る為には、心身ともに隆々(りゅうりゅう)でいなくては……ふんっ!

 んマッスルゥ!

ヴェール:

 いちいちポーズを取るなっ!

ネコ(潜入用義体):

 良い心がけだね。私も同意するよ。

 ……何事も、兵装(からだ)が資本、だ。

ナキオ:

 むぅ……何じゃ?

ヴェール:

 アイツ……体が、青白く光って……!

ネコ(潜入用義体):

 『霊子駆動』(エーテルドライブ)……『凶暴』(ブルータル)ッ。



〜〜〜〜〜〜

*セキュリティ通知:479へID:U48s/e53_293からのログインが検出されました。


479(e53):

 いやぁー、面白いことになってきたじゃあないかぁ。ギィッハハァッ(※笑い声)……ねぇー、お前さん?

ティアン:

 ……そぉだねぇ。こぉんな状況じゃなきゃ、もっと楽しめただろうけど。

 とりあえずさぁ、そこの木から降りてきて、このベルト外してくんない?

479(e53):

 あらぁー、せっかくワタクシちゃんが、ギッチギチに拘束してあげたのにぃ……気に入らないのかぁーい? ギィッハハァッ!

ティアン:

 あははっ、キモい一人称に、キッモい笑い方だねぇっ。

 そんで、こぉんなことしてさぁ……機械のくせに、変態なの?

479(e53):

 んぅー……傷つくことばっかり言ってくれてさぁー。立場分かってんのかぁーい? 半端(デミ)ィ。

ティアン:

 あぁ? 今時聞かない差別用語持ち出してくんぢゃん……お前、さてはヨボヨボのしわくちゃだな? 当たり?

479(e53):

 ギィハハ……そっちこそぉ、随分安い挑発じゃないかぁーい。……残念だけど、蓄積されたデータを学習してるだけで、製造年数はそこまで経っちゃいないー……よぉっ!

ティアン:

 ぐぎっ……! うっ……あ、はは……ちゃんと効いてんぢゃんか……顔、真っ赤かよ、ぐっ!

479(e53):

 真っ赤なのは、お前さんの方じゃないかぁー……首絞まっちまってぇ、つらいんだろぉー? んぅー?

ティアン:

 がっ……はっ、ゴホッ、グッ、はぁ、はぁ、はぁっ!(※首の絞まりが緩む)

479(e53):

 ギィッハハァッ! すまないねぇー、ついイジメたくなっちまったよぉー。殺す気はないさぁ。単に……邪魔しないでくれりゃあー、それで良いさぁ。

ティアン:

 はぁ……ははっ……何だよ、邪魔ってぇ。逆に、何をしたら、邪魔になるってのさぁ。

479(e53):

 気にしなさんなよぉー。いちいち確認するのも面倒だろぉー?

 何もしなきゃ、それが1番楽さぁー、お互いにねぇ。

ティアン:

 ……何もしないのは、難しいでしょ。こっちにも、やらなきゃいけないことがあるんだからさぁ。

479(e53):

 記録するだけなんだから、お前さんならぁ、ここからでも何となく聴こえるだろぉー?

 あの店の中で起こってることがさぁー。

ティアン:

 ……何で知ってんの?

479(e53):

 へぇー、単なる人払いの為に、お前さんを拘束してるとでも思ってたのかぁーい?

 ギィッハハァッ……そんなわけないだろぉー、個体識別名「ティアン」。

ティアン:

 ……誰だ、お前?

479(e53):

 ギィッハハァッ! そういや、自己紹介してなかったねぇー!

 ワタクシちゃんは、カイ……おぉっとぉー、今は479(シャナク)って名乗らないとだったかねぇー? ギィッハハァッ!

ティアン:

 こっちの記録だと、479(シャナク)って型番の機械は、鳥型じゃあなかったはずだけどぉ?

479(e53):

 あぁー……細かいこと気にすんじゃないよぉー。それじゃあー、293(ニー、キュー、サン)で293(ツグミ)ってのはぁ、どうだぁーい?

ティアン:

 ははっ、どぉでも良いー。

479(e53):

 ギィッハハァッ、んじゃあ個体識別番号もサービスで教えようかぁー? e53(イーゴーサン)……こっちはお気に召したかぁい?

ティアン:

 へぇー、それ1番気に入ったよ。e53……53(ゴミ)って、ははっ、お似合いぢゃん。

479(e53):

 ……煽るのが上手いねぇー、半端(デミ)ィ。

ティアン:

 機械のくせに怒んなよぉー、53(ゴミ)。

479(e53):

 ……あぁーあぁー……許可がでてりゃあ殺してやれたのにさぁー。残念だねぇ……っとぉ。

ティアン:

 ぐぁっ! がっ……うっ!

479(e53):

 なぁに逃げようとしてんのさぁー?

ティアン:

 っ……ははっ、バレちったぁ。

479(e53):

 つれないねぇー。もうちょっとお喋りしておくれよぉー。

ティアン:

 いやぁ……参っちゃった、なぁ。人気者はツラいねぇ……キモいアンチも、相手にしなきゃなんて、さぁ。

479(e53):

 ほんっとぉーにぃ…… ギィッハハァッ。そういうさぁー、煽りばっかり上手いから、目を付けられたんじゃあないかぁーい? お前さんたち。

ティアン:

 「たち」……? ははっ、なんのことだよ?

479(e53):

 だからさぁー……そんなんだからぁ、劣等種の巣は焼き払われちまうんだってぇ、言ってるんだよぉー。

ティアン:

 ……んだよ。それも、データで知ってんの……?

479(e53):

 いぃやぁー? これはねぇ……経験、さぁ。

 死に遅れぇ。

ティアン:

 …………なぁ。

479(e53):

 んぅー?

ティアン:

 死ねよ、ゴミ。

479(e53):

 はぁ? っ!? グギィアッ!

479(e53)M:

 衝撃感知。視界不良……修正中。

 ……いったい何がぁ……攻撃を、食らったぁ?

 視界(カメラ)映像から、危機検知が出来ないなんて……感知機構のセンサーも貫通したって言うの?

 何の冗談……あの状態からぁ……どうやって動けるようにぃ……!

ティアン:

 つっ……っ、あはっ、驚いたぁ?

479(e53):

 ……あぁ、驚いちまったよぉー……関節外して縄抜けしちまうとはねぇ……痛かったんじゃないかぁーい?

ティアン:

 そっちのが痛かったんぢゃん? こっちは慣れたもんだよぉ……慣れたか無かったけどぉ。

479(e53):

 ……不意をつかれちまったけどさぁー。

 片腕がまだ動けないみたいじゃないかぁーい?

 そんなんでぇ、ワタクシちゃんを壊せると思ってるんならぁ……。

ティアン:

 あぁ、大丈夫。今、もう片方も解放するから。

479(e53):

 ……関節外したくらいじゃあ、そっちはどうにもならないだろぉー?

ティアン:

 んなの分かってるよ。だから、これで……ぶち斬るんぢゃん。

479(e53):

 そぉんなさぁ……剣で斬れるような拘束具使うわけないだろぉー?

 それはヴェルナバンドって言う、馬鹿みたいに耐久性のある拘束ベルトでぇー……。

ティアン:

 『調理開始』(セ・パルティ)

 『切断』(クーぺ)

479(e53):

 なっ!? えぇえぇえぇ! あのベルトが、いとも簡単にぃ……!

ティアン:

 ……どぉ? スッパり斬れたけど?

479(e53):

 ……ギ、ハハァ……ここじゃあ、魔法は使えないはずだけどぉー?

ティアン:

 じゃあ、魔法じゃないんぢゃーん?

479(e53):

 ……教える気はぁー、無い訳ねぇ。

ティアン:

 どうせぇ、お前『義体』ってヤツだろ? 見す見す情報は上げないよん。

479(e53):

 ギィッハハァッ……半端(デミ)の癖に賢いねぇ。

ティアン:

 ははぁっ、黙れってゴミ。

479(e53):

 その呼び方ぁー、やめておくれよぉ。

 そんなんで記録されたらぁ、みっともないじゃないかぁーい。

ティアン:

 安心しなよぉ。お前は、歴史に残さない。

 中身も探し出して、スクラップにしてやるよ。

 だから……根絶(ねだ)えろ、ゴミ。



〜〜〜〜〜〜

*aguhont://アグホント大陸/バルナ国/バルナ首都近郊の森/ヴェールの防具店/取扱い商品紹介/商品の仕様詳細/


ナキオ:

 ぬぅっ! 速いっ……じゃが、ナイフ1本で防ぐには、事足りるっ!

ネコ(潜入用義体):

 ははっ、この機動力について来れるなんて……もしかしてアンドロイドとか?

ナキオ:

 ふんっ、純度100%の筋肉製じゃ……よぉっ!

ネコ(潜入用義体):

 つっ……地形を上手く使って攻撃してくる……厄介な奴だ。

ヴェール:

 おわぁーっ! 馬鹿野郎!

 店の柱、折って武器にすんなぁーっ!

ナキオ:

 問題ありませんぞ先生。

 『達人は武器を選ばず』という事です。

ヴェール:

 達人は、他人の家を破壊しねぇーんだよぉ!

ナキオ:

 あ、ワシ、達人じゃ無いのでー。

ヴェール:

 じゃあ武器を選べっ、ボケジジイッ!

ネコ(潜入用義体):

 兵装、起動……『雷荷』(フルメン・オヌス)ッ。

ナキオ:

 おっとぉ、残念ながら、選ぶ暇(いとま)も与えてくれぬみたいですなぁっ!

ヴェール:

 時ぃ間の問題じゃ無いだろがぁいっ! モラルの問題じゃあっ!

ネコ(潜入用義体):

 ふふっ、避けれるか、なっ!

ナキオ:

 ぬらぁっ! ナイフパリィッ!

ネコ(潜入用義体):

 ダメだよ、避けなきゃ。

ナキオ:

 っ!? ぐあぁあぁっ!

ヴェール:

 じいちゃんっ!?

ネコ(潜入用義体):

 今、私の義体(からだ)には高圧電流が流れている。下手に攻撃を受けると、雷に打たれるよ?

ナキオ:

 うっ、がっ……さ、先に言って欲しいのぅ……。

ヴェール:

 だ、大丈夫かいっ?

ナキオ:

 ほっ、ほっ……ほっ。問題、無いです。

 ちっとばかり……筋肉の凝り(こり)がほぐれた程度、じゃ。

ヴェール:

 んな訳無いだろ、高周波治療じゃないんだからさ……心配しづらくするなよ……。

ナキオ:

 先生……ひとつお願いしてもよろしいですかな。

ヴェール:

 な、なにさ?

ナキオ:

 ……このままでは、クライ殿に勝てない……じゃから、少々本気を出したいのです。

ヴェール:

 本気? い、いや、そんなん、もちろん構わないよっ!

ナキオ:

 おぉ……ありがとうございます。

 先生の店が、ぶっ壊れると思いますが……。

ヴェール:

 え?

ナキオ:

 んぬぅっ!

 本気で行かせて貰おうっ!

ヴェール:

 聞いてない聞いてない聞いてなぁいっ!

 ストォーップ!

ネコ(潜入用義体):

 すごい闘気……どうして筋肉バカは、皆それ出来るんだろうな……。

 さて、これはニードルなんかじゃ、遅れを取りそうだね。

 申し訳ないけど……君の店が燃え尽きるかもしれないが、私も熱線(ビーム)兵装を使わせて貰うよっ!

ヴェール:

 えぇえぇ! やめろぉー!

ナキオ:

 本気の拳(こぶし)……『怒ッ天ッ壊ッ命ッ』(どってんっかいっめいっ)!

ネコ(潜入用義体):

 『霊子駆動』(エーテルドライブ)、『熱線剣装』(ビームサーベル)ッ!

ヴェール:

 うわぁぁあぁあぁあん!

479(e53):

 ギィアアァアァッ! バリィィィンッ!(※窓割り音を口で) グギヘッ! あでっ!

ヴェール:

 どぉわあっ! なになになにぃ!?

ナキオ:

 なんじゃっ!?

ネコ(潜入用義体):

 なに?

ヴェール:

 なんだなんだ、なんなんだぁこの鳥……いや、機械ぃっ!?

 って、うわあぁ! 窓、ぶっ壊れてるぅっ!

479(e53):

 ウ……ギィッハハァ……やれやれぇ、滅茶苦茶だよぉー、クソッ。

ヴェール:

 それは、こっちのセリフなんだがぁっ!

ネコ(潜入用義体):

 貴様……ヴェルのおもちゃか?

ヴェール:

 え、私のじゃないよ!

ネコ(潜入用義体):

 あ、うん、分かってる……名前似てんの、めんどくさっ。

479(e53):

 ちぃー……エンカウントするつもり無かったんだけどねぇー……。

ナキオ:

 知り合いのようじゃが……オヌシも敵っちゅーことかのう?

479(e53):

 ……えぇー、っとぉ。

ネコ(潜入用義体):

 早急に、貴様の軍部所属コードの無線送信をリクエストする。

 これに拒否する場合、貴様の所属に関わらず、任務妨害および国家反逆行為と見なし、破壊する。

479(e53):

 ぐぅ……まぁー、ちょいとお待ちよぉ。そんな場合じゃあー……げぇっ!

ナキオ:

 むぅっ? 気配がもうひとつ……。

ネコ(潜入用義体):

 ……誰?

479(e53):

 ワタクシちゃんを、ぶっ飛ばした奴だよぉ……。

ティアン:

 『切断』(クーペ)

ネコ(潜入用義体):

 えっ、ちょっと……!

ナキオ:

 ぬっ!? 先生っ!

ヴェール:

 うおわぁっ!

479(e53):

 家ごと、ブツ斬るなんてぇ……ほんっとぉー、無茶苦茶するねぇー、お前さぁん……。

ティアン:

 あっははぁ、お前がさせてるんぢゃーん……ゴーミー。

ナキオ:

 おぬし……ティアンか?

ヴェール:

 う、わっ、あっ……て、天井がぁ……てかっ、2階がぁ……!

ネコ(潜入用義体):

 斜めに切れて、スライドしてく……このエネルギーは……。

ナキオ:

 ……先に壊されちゃった。

ヴェール:

 なんで残念そうなんだっ!

ティアン:

 ごーめんごめーん、驚かせちゃったよねぇ。でもさぁー……そのゴミ。

ネコ(潜入用義体):

 ゴミ?

479(e53):

 だからぁー……その呼び方ぁ、やめろっつってんだろぉー?

ナキオ:

 うむ。どちらかと言うと、鉄屑(てつくず)ですからな。

ヴェール:

 いや、正しい表現して欲しい訳じゃ無いだろ……。

ティアン:

 なんでも良いけど、それ壊すの……僕だからさぁ。

ネコ(潜入用義体):

 それは別に構わないけど、他所(よそ)でやってくれない?

 こっちも取込み中なんだけど。

ナキオ:

 そうじゃ、他人(ひと)に迷惑をかけてはいけませんな。

ヴェール:

 お前が言えたことかっ!

ナキオ:

 はにゃあ?

ヴェール:

 うがぁ! お前も一緒に壊して貰えっ!

ティアン:

 あのさぁ……分っかんないかなぁ……。

ネコ(潜入用義体):

 ……っ。

ナキオ:

 むぅ……。

ヴェール:

 うぇっ……?

ティアン:

 俺、ちょっとぉ、キレてんだよねぇ。

 だから、巻き込まれて死にたく無かったら……どっか行ってね?

479(e53):

 ギィッハハァッ……怖いねぇー。

ティアン:

 ははっ……。

ヴェール:

 ど、どうしたんだい、ティアン?

 なんかぁ……怖いよ?

ナキオ:

 いかんっ、先生っ!

ヴェール:

 えっ?

ティアン:

 『粉砕』(エクラーゼ)ェッ!

〜〜〜〜〜〜

*aguhont://アグホント大陸/タングリスニ国/作戦室/

ネコ:

 なんだこれは?

479(博士):

 なぁんだと思いますぅ?

ネコ:

 ……くだらない問答はやめろ。

479(博士):

 んもぉー、ノリが悪いですねぇー。

 機械化されていたってぇ、思考回路を働かせることはぁ、重要なことなんですよぉ?

ネコ:

 いいから……作戦に関わる物なんだろう?

 さっさと共有して。

479(博士):

 はぁ……べつに、作戦に関係がある物じゃないですよぉ、それぇ。

ネコ:

 じゃあ、外せっ。それなりに重いぞ、これ。

479(博士):

 いやぁ、必要があって付けて貰ったんじゃないですかぁ。

 別件ですがぁ、いま行っている調査で使う、とあるデータを収集する装置なんですよぉ。

ネコ:

 ……潜入任務に持って行きたくないんだけど。

479(博士):

 いやぁ、そこをなんとかぁ……バルナなんてあんまり行かないんですからぁ。

ネコ:

 そんな事ないだろ。

479(博士):

 私がぁ、って話ですよぉ。

ネコ:

 そりゃ、お前はそうだろうけど。

 他の奴か、その機械にでも付けて、バルナに送ればいいだろう。

479(博士):

 いやぁ、それが出来たらお願いしないですってぇ。

ネコ:

 まあ、そうか……だけど、任務に支障をきたしたくない。

479(博士):

 大丈夫ですってぇ。そう言いながらぁ、上手いことやれちゃうでしょお?

 もぉ、わかってるんですからねぇ、このこのぉ。

ネコ:

 ウザい。

479(博士):

 酷いっ! でもぉ、否定はしない、とぉ。

ネコ:

 ……お前天才とか馬鹿なこと言ってるんだから、もう少し軽量化してよ。

479(博士):

 ちょおっ! 馬鹿ってなんですかぁ、馬鹿ってぇ!

 それでもかなりコンパクトにしたんですよぉ!

ネコ:

 なら、天才もこの程度って訳か。

479(博士):

 ぐぅぬぬぬぬぅ……むぅかぁつぅくぅ……。

 へーん! 分かりましたよぉ! あと、50グラム……いや、1キロ軽くしてやりますよぉーだっ!

ネコ:

 えー、出来るかなぁ……無理しなくていいよ?

479(博士):

 無理じゃなぁいですぅー!

ネコ:

 ははっ……でも、本当に何に使うのさ。

479(博士):

 内緒、でぇーす。

ネコ:

 ……私にも言えないことって訳ね。

479(博士):

 ……大したことじゃないですよぉ。

 ただ、データを収集する際に、意識しない方が良い結果となるだけですぅ。

ネコ:

 なんだそりゃ。

479(博士):

 そんなことに思考回路を働かせる必要は無いですよぉ。

 バルナに着いたら、貴方はこれを起動させて、放っておく。

 それだけで大丈夫なんですからぁ。

ネコ:

 ……私を暗殺しようとか、してないよな?

479(博士):

 あっはっはーっ、だとしたら随分と非効率的ですってぇ。

 それにぃ……貴方は殺すより、利用した方が良いに決まってますよぉ……ネコぉ君。



〜〜〜〜〜〜

*aguhont://アグホント大陸/バルナ国/バルナ首都近郊の森/ヴェールの防具店/改装工事のお知らせ/


ネコ(潜入用義体):

 ……あぁ……なんだっていうんだ。

ナキオ:

 んぬぅ……店が一瞬で瓦礫に……。

 先生、ご無事ですかな?

ヴェール:

 あ、わ、わた、私の、お、おみ、お店が、が、が、がががががが……。

ナキオ:

 良かった、お体は無事ですな。

ネコ(潜入用義体):

 メンタルはダメそうだけどね。

ナキオ:

 体が健康なら、後から心もついてくる。そういう物じゃよ。

 だから、大丈夫大丈夫、いけるいける。

ネコ(潜入用義体):

 テキトー過ぎ……本当に守るつもりある?

479(e53):

 ギ……アッハァッ! ふぅーっ、危ねぇー、死ぬかと思ったぁー……いやぁ、別に死なないけどさぁー。

ティアン:

 ……チッ。芋みたいに潰れときゃあ良かったのに。

479(e53):

 ちょおっとぉー、さすがに酷いんじゃないかぁーい?

 無関係の人間に危害加えるなぁんてぇー。

 しかもぉー、店までブッ潰しちゃってさぁ?

ティアン:

 無関係ぇ? ははっ! なぁに言ってんだよ……関係あるから、巻き込んでんだろ?

 『お前が』、さぁ。

479(e53):

 ッ……なぁんのことだかぁー……。

ネコ(潜入用義体):

 そちらの話の途中で悪いけど。お前たちのせいで、こちらの話はもう、ぐちゃぐちゃなんだけど?

 これ以上ややこしくするなら……。

ティアン:

 するなら、なんだよ? そっちの邪魔されたから、今度はこっちの邪魔してやるってかぁ!?

 はっはぁー! 人類史から戦争が無くならない訳だよねぇ、こりゃあーさぁー!

ネコ(潜入用義体):

 ……話が通じないみたいだな。

ティアン:

 へぇー、良いように解釈しやがんぢゃん!

 獣人のコスプレなんかしちゃってさぁ……馬鹿にしてんだろ、アンタもさぁ?

ネコ(潜入用義体):

 馬鹿にしてないし、コスプレもしてない。

 ……自意識過剰なんじゃない?

479(e53):

 おぉー、バチバチじゃないかぁーい? ギィッハハァッ!

ナキオ:

 ふむぅ……これ以上暴れられると困るのぅ。先生の店どころか、辺り一帯に被害が出そうじゃ……。

479(e53):

 ギィッハハァ……やぁっぱりさぁー、ごたついた人間関係を円滑に進めるにはぁー、共通の敵を用意するのが1番だとぉ、思わないかぁーい?

ネコ(潜入用義体):

 はぁ……貴様のことを後回しにするのは不本意だが……まずは、変な魔導機械を付けてる奴の制圧を優先しよう。

ナキオ:

 ティアン。少々、頭に血が昇り過ぎじゃないかのぅ。周りが見えておらんぞ。

 どれ、ワシが落ちつかせてやろう。

 優しく……してやれればいいがのぅ。

ティアン:

 どいつもこいつも……あぁ……イライラするぅ。

 っ……!

 

479(e53):

 ほぉらぁー……。

ネコ(潜入用義体):

 ……っ、な、んだっ?

ナキオ:

 ふぅんっ。

ヴェール:

 ががががががが……。

479(e53):

 ……来るよぉっ!

ティアン:

 ブチ斬れろ……『切断』(クーペ)ェッ!



〜〜〜〜〜〜

*aguhont://アグホント大陸/タングリスニ国/軍事研究所/科学部門室/


479:

 再ログインのリクエスト……送信中……エラー。

 ……ダメですね。通信プロトコルが遮断(しゃだん)されてしまっている。

 『戦略兵装-双翼ニ型:鶫』(せんりゃくへいそう そうよくにがた つぐみ)は、完全に略奪されたようです。

 ……えぇ、遠隔操作系統は、すべてダメです。

 おそらく、特定の場所からの通信を禁止にしているのではないかと。

 はい……え、ネコさん経由で?

 ……あぁ、確かに……取り付けた装置とは通信が取れてますね。

 ……なるほど、その繋がりを利用して……承知しました。

 直ち(ただち)に、ネコさんをハッキングします。

〜〜〜〜〜〜

*aguhont://アグホント大陸/バルナ国/バルナ首都近郊の森/ヴェールの防具店/休業日のお知らせ/

ナキオ:

 ほっ! 痺れる拳、『羽雷主』(うらぬす)っ!

ティアン:

 かき混ざれっ、『混合』(メランジュ)ッ。

ナキオ:

 むぅっ、空気の渦で、拳の軌道がっ……!

ティアン:

 そんで、ぶっ飛べっ……。

ナキオ:

 うぬぅ……っ。

ティアン:

 『粉砕』(エクラーゼ)ッ!

ナキオ:

 ぐぅっ! ぬぁっ!

479(e53):

 うひぃー、強烈なの入ったねぇ。

 壁に埋まったけどぉ、大丈夫かぁーい?

ナキオ:

 ふんぬぅっ! いやはや……綺麗に食らってしまったが、大丈夫じゃよ。

479(e53):

 そりゃあ良かったぁー、戦力が減ったら終わりだろうからねぇ……。

ナキオ:

 そうじゃな。なんせ、2人があんな感じじゃからな。

ヴェール:

 ……店がががかががが。

ネコ(潜入用義体):

 ……ガガガガガガガ。

479(e53):

 なんなんのぉ……アレって感染(うつ)るのぉ?

ナキオ:

 分からんが……ワシらで何とかするしか無いじゃろうて。

ティアン:

 はぁ……そこのゴミを渡せば良いだけってぇのに。

 どぉして人間は、こんなに馬鹿なんだろうねぇ。

ナキオ:

 ほっほっほっ……理由がなんであれ、無辜(むこ)の民を傷付けておいて、自分の要求だけ通そうなど……筋が通らんじゃろ、ティアン。

ティアン:

 無辜(むこ)ぉ? はっ……はははっ!

 どんだけ自分らを棚に上げちゃえるんだよ、アンタらっ。あはははっ!

ナキオ:

 何のことか分からんが……やはり、様子がおかしいのう。

 

479(e53):

 ……へぇー、そういうのわかっちゃうくらい、アイツと親しいのぉ?

ナキオ:

 ちょっ、やめろしぃ! べ、べつにそんなんじゃねぇしぃっ!

479(e53):

 えぇー、照れてんじゃーん。

ナキオ:

 て、照れてねぇしぃ!

ティアン:

 『粉砕』(エクラーゼ)

479(e53):

(※ティアン言い終わりですぐ)

 ギィアアァアァッ!

ナキオ:

(※ティアン言い終わりですぐ)

 ぎゃああぁあぁっ!

ティアン:

 キモいやり取りをするな。

ナキオ:

 ぬぐぅ……ワシらは、青春を取り戻すことも許されぬか……。

479(e53):

 いつだってぇー、心くらいは若くいたいもんだよねぇ……。

ティアン:

 機械が何言ってんだ、しかも大して歳とって無いって言ってたろお前。

479(e53):

 ギィッハハァッ、そうだよぉー……ワタクシちゃんは、ねぇ。

ティアン:

 ……?

ナキオ:

 重い拳……。

ティアン:

 っ、しまっ……!

ナキオ:

 『重飛多』(じゅぴたぁ)っ!



〜〜〜〜〜〜

*aguhont://アグホント大陸/バルナ国/バルナ首都/


ティアン:

 おーおー、バルナの裏通りは今日も賑わってるねぇ。闇市だってのに、堂々としちゃってまぁ。

商人:

 ちょいとぉー、そこのお前さぁん。

ティアン:

 ん? 僕?

商人:

 そうだよぉー。面白いのがあるんだけどさぁ……見ていかないかぁーい?

ティアン:

 ふーん……どんなのぉ?

商人:

 これさぁー……。

ティアン:

 腕輪? にしちゃあ、ちょっとゴツいね。

商人:

 これはねぇー、調理補助ガジェット『ラビリテ・デュ・シェフ』って代物(しろもの)さぁ。

ティアン:

 調理補助? 料理の道具ってこと?

商人:

 まぁー、そうだねぇ。ナイフを扱う方の腕に嵌(は)めればぁー、音声入力で色んな調理法が再現できるんだよぉ。

ティアン:

 へー……でもさぁ、こんなお上品なヤツ。こんなとこで売らないでしょー? 本当のとこぉ……なんなのさ、これ。

商人:

 ギィッ……ふぇっふぇっ……迷い込んだ馬鹿じゃないって訳だねぇー。

ティアン:

 あははー、分かって話しかけた癖にぃ。

商人:

 ふぇっふぇっ……こいつぁねぇー、違法改造品で、威力が凄い事になってんのさぁ。

ティアン:

 具体的には?

商人:

 魚を捌(さば)こうとすりゃあ、周囲の人や建物ごとぉ……スッパリ斬れちまうさぁー。

ティアン:

 うっへぇー、そりゃあヤバいね。

商人:

 つまりぃ……戦闘用だねぇー。

ティアン:

 そら、こんなとこで売る訳だ。でもぉ……お高いんでしょお?

商人:

 ふぇっふぇっ……お前さんにゃ特別にぃ……お安くしたげるよぉ。

ティアン:

 えぇ? なんでぇ?

商人:

 これが捌(は)けたらぁー、今日はもう仕舞(しま)いに出来るからさぁ。

ティアン:

 あぁー、なるほろね。

商人:

 それにぃー……お前さん、死相(しそう)が出てるからねぇ。

ティアン:

 死相(しそう)? なに、アンタ占い師もやってんの?

商人:

 ふぇっふぇっ、なぁに……分かるんだよぉー、なんとなぁく……ねぇ。

ティアン:

 あぁ……んで、その運命を避ける為にもぉ……買えと?

商人:

 そぉーゆうこったぁ。ギィッ……ふぇっふぇっ。

ティアン:

 あっははー、商売上手ぢゃん。良いよ、なんか面白そうだし。買ったげる。

商人:

 おぉ……まいどありぃ。お前さんにぃ、良い運命が訪れることを願うよぉー……本当に、さぁ。



〜〜〜〜〜〜

*aguhont://アグホント大陸/バルナ国/バルナ首都近郊の森/ヴェールの防具店/お知らせ-私の店ぶっ壊れました/


ナキオ:

 むぅ……。

ティアン:

 ……っ。

479(e53):

 えぇ……?

ネコ(博士):

 ……『防御機構:衝撃吸収(ショックアブソーブ)』。

ナキオ:

 ワシの拳を止めるとは……。

ネコ(博士):

 いやいやぁ……止まってませんよぉ、全部受け止めたんですぅ! まったくぅ、馬鹿みたいにエネルギー使いましたよぉ……。

ティアン:

 ……なんで、庇(かば)った?

ネコ(博士):

 庇(かば)うぅー? べっつにぃ、庇(かば)ってなんか無いですよぉ。ただぁ……素敵な玩具(おもちゃ)をお持ちだなぁって、ちょっと興味が出て……ねぇ?

ティアン:

 あ、えっ、いつの間にっ! その腕輪返せっ!

ネコ(博士):

 おっとぉ、まぁまぁ、もうちょい見せて下さいよぉ。

ティアン:

 なぁんでだよっ、おい、返せってぇ! 割と高かったんだからさ!

ネコ(博士):

 ふむふむぅ…… 調理補助ガジェット『ラビリテ・デュ・シェフ』、の違法改造品ですねぇ……。

 わぁー、出力が馬鹿になってるぅ……こんなんずっと使ってたら、いずれ爆発して腕が無くなっちゃいますよぉ?

ティアン:

 爆発っ!?

ナキオ:

 おぉ……まあ、本来の用途が、料理の補助だとしたら、随分と威力がおかしいからのぅ。

ティアン:

 うへぇ……危なぁ……って、あれ?

ナキオ:

 どうかしたか?

ティアン:

 いや、なんか……。

ネコ(博士):

 気分がすぅーっきりしたぁ……ってぇ、感じですぅ?

ティアン:

 う、うん……なんか、ずっと変に頭痛いし、イライラしてたんだけど……。

ネコ(博士):

 あっはっはーっ、治って良かったですねぇ。どぉーやらぁ、この腕輪から変な電波が出ていてぇ、体調に影響していたのかぁもぉ……しれません……ねぇ、そこのアナタ?

479(e53):

 ギィックゥッ!

ネコ(博士):

 さっきから随分と無口じゃあないですかぁ?

479(e53):

 いやぁー……元からお喋りなほうじゃあないからねぇー……。

ナキオ:

 いや、かなりお喋りだったと思うがのう……。

479(e53):

 あぁー……昔はそうだったかもねぇ……。

ネコ(博士):

 未来と現在(いま)以外を、遠い過去にしてしまう、アナタのその姿勢は大変素晴らしいと思いますけれどぉ……。

 明らかに動揺しているぅ……これだから進歩し過ぎたAIは、人間臭過ぎていけない。

479(e53):

 ぐっ……ワタクシちゃんが、AIだって決め付けるのはぁ、良くないんじゃあないかぁーい?

ネコ(博士):

 気にし過ぎ。

479(e53):

 はぁ?

ネコ(博士):

 だからぁ、気にし過ぎなんですよぉ、アナタ。

 べっつにぃ、私が作った義体を操作しているのがAIか人間かなんてぇ、どっちでも良いじゃないですかぁ。少しでも情報を与えたく無いなら、そんな発言は無視すべきです。

 そういうのを無視出来ないってのはぁ……コンプレックスがあるかぁ、くだらない誇り(プライド)があるかぁ……ですよぉ?

 人間臭っせぇ、AI君。

479(e53):

 グギッ……ギィッハハァッ! うっざいねぇー、お前さん……!

 いったい、中身は誰になっちまったんだぁーい?

ネコ(博士):

 誰だって良いでしょう。

 私の計画(プラン)を邪魔しようとする、愚かな『道化』(クライドヌ)にはぁ……教えてやることなんてぇ、ひとつも無いんですよぉ。

ナキオ:

 むぅ……話が見えない。

ティアン:

 なんか、今度は別のバチバチが始まったねぇ……。

ナキオ:

 うむぅ……なんも分からんが、今日が厄日(やくび)だということは、確実じゃな。

ヴェール:

 ……がががががががが。

479(e53):

 ……まだぁー、ハッキングの途中なんでぇ、戦闘は勘弁して欲しいんだけどねぇ。

ネコ(博士):

 おやぁ、そうなんですかぁ?

 私が作ったダミーサーバーへ必死になってアクセスしようとしてるのってぇ、ハッキングだったんですねぇ。

479(e53):

 なっ……ダミーッ!?

ネコ(博士):

 そぉんなに大量のゴミデータが欲しいんですかぁ? ま、そんな訳ないですからねぇ。

 私てっきりぃ無駄な労力が好きな方なんだなぁーって、思ってましたよぉー。あっはっはーっ! ウケるぅー。

ティアン:

 うわぁ……めちゃくちゃ煽るぢゃん……。性格悪っ。

ナキオ:

 あれは、聞いてるだけでもイラっとするのぅ……。

479(e53):

 ギ、ギィッ……ギギギッ……ギィッハハァ!

 ……クソボケ野郎めぇ……お前さんをここで殺せないのがぁー……ストレスで死にそうだよぉ!

ネコ(博士):

 だからぁ……死ねるなら死んでみて下さいよぉ。

 人間の真似事しやがってぇ、良い加減キモいんだよ、クソゴミAI。

ナキオ:

 うぉ……なんか凄いキレとるぅ……。

ティアン:

 何が琴線(きんせん)に触れたんだろうねぇ……怖ぁ……。

ヴェール:

 なんかちょっと、AIが可哀想だよねぇ。

ナキオ:

 そうですよねぇ……って、えっ! 先生、治ってるぅ!?

479(e53):

 お前さんに、ワタクシちゃんたちの計画を理解して欲しいとは思わないしぃー、状況もクッソ悪くなっちゃったからねぇ……そろそろお暇(いとま)させてもらうよぉ。

ネコ(博士):

 逃げるんですかぁー?

 その義体、探知出来ちゃいますけどぉ?

479(e53):

 知ってるよぉー……だからぁ、こうすんのさぁ……『飛行(フライト)機構:爆速(バースト)』!

ネコ(博士):

 げっ……しまったぁっ!

ヴェール:

 あっ、クライの持ってた腕輪がっ!

ナキオ:

 すごい、ちゃんと喋ってるぅ……先生さっきまで『が』しか言って無かったのに……。

ティアン:

 あー、俺の腕輪ぁ!

479(e53):

 ダメじゃないかぁ、買った物は奪われないようにしなきゃあ……ふぇっふぇっ。

ティアン:

 あ、その笑い方……まさか!

479(e53):

 『調理開始』(セ・パルティ)

ナキオ:

 くっ、まずいぞい……先生っ、ワシの後ろへ。

ヴェール:

 ががががががが。

ナキオ:

 えぇっ!? どしてぇっ!?

479(e53):

 じゃあねぇー、またどっかでぇ……。

ネコ(博士):

 面倒臭いですねぇ……ネコ君、後は任せましたぁー。

479(e53):

 燃え爆ぜろ、ワタクシちゃん。

ネコ(潜入用義体):

 う、えっ!? ちょっと、おいっ、ヴェルっ! 馬鹿っ!

479(e53):

 『加熱』(キュイソン)ッ!

ネコ(潜入用義体):

 『霊子駆動』(エーテルドライブ)!

 『量子絆環』(クォンタム・リンク)ゥ!

※爆発音



〜〜〜〜〜〜

*404 not found


ヴェール:

 ……う、うぅん。わた、しの……店がぁ……がが……はっ!

ナキオ:

 おぉ、先生。お目覚めですかな。

ヴェール:

 うぅん? じいちゃんかい?

ナキオ:

 ほっほっほっ、何をおっしゃいますやら。

 ……貴女のナキオですよ。(※イケボ)

ヴェール:

 うるせぇ、クソボケジジイ。

ナキオ:

 んもぅ、つれないんだからぁ。ほっほっほっ。

ヴェール:

 はぁ……というか……ここ、どこだ?

 なんか、やけに白い部屋だけどさ……。

ナキオ:

 ……タングリスニです。

ヴェール:

 え? タングリスニ?

 それは……え、国の?

ナキオ:

 いや、他に無いでしょう……。

ヴェール:

 そ、そうだけどさ! え、なんで?

ナキオ:

 ……それが、言いにくいのですが。

ヴェール:

 な、なんだよ……。

ナキオ:

 先生のお店が、ぶった斬られ、ぶっ潰され、その上で爆発して、燃えカスになった……までは覚えてますかな?

ヴェール:

 爆発して燃え……わ、私の、私の、み、店……がががががが。

ナキオ:

 おぉっと、PTSDっ!

 先生、お気を確かに!

 深呼吸ですぞ! ひっひっ、ふうんっ!

ヴェール:

 ひっひっふぅんっ……ってぇ、筋肉を見せるポーズをとらせるなっ!

ナキオ:

 ナイスバルクッ!

ヴェール:

 うるせぇ!

ナキオ:

 良かった、正気に戻れたようですな。

 やはり、筋肉は全てを解決する。

ヴェール:

 くっ、戻れた手前、完全に否定できないのが、ムカつく……!

ナキオ:

 それで、燃えカスになった後のことなんですが。

ヴェール:

 うっ……はぁ、はぁ……心臓が痛い……。

ナキオ:

 あのぅ、大丈夫ですか?

ヴェール:

 はやく続けろっ、身が持たない……!

ナキオ:

 では……その後、土地の管理者の方がいらして……。

ヴェール:

 うっ! あっ……うぅ……。

ナキオ:

 「はぁー、こらぁ、えらいこってぇ……困りまんなぁ。ヴェールはん、まだぁ、ここのショバ代、全部払ろてもろて無いんですわぁ……ふぅー……どないしはりますん?」

 ってぇ、イカついグラサンのオッサンが。

ヴェール:

 うぐぁ……うぅ……そ、それで……?

ナキオ:

 まぁ、普通にヤってしまおうかと思ったんですがぁ。

ヴェール:

 やめとけよっ! どちらかって言うと、こっちが悪いんだからさぁ!

ナキオ:

 いやぁ、何もしてませんからぁ、ほっほっほっ……ちょっとスゴんじゃったけど。

ヴェール:

 おいぃ……そいつだけで済むんなら良いけど、そいつらの頭が出て来たらヤバいんだから、勘弁しろよぉ……まあ、もう遅いだろうけど……。

ナキオ:

 それで、クライ殿……あぁ、いや、ネコ殿、ですな。

ヴェール:

 ネコ?

ナキオ:

 クライ殿の、本名です。

ヴェール:

 へぇー……なんか可愛いね。

ナキオ:

 ふっ……君の方が、可愛いよ。(※イケボ)

ヴェール:

 早く続き話せ、ボケジジイ。

ナキオ:

(※拗ねる)

 むぅ……あー、なんじゃったかのー!

 なーんかー、忘れちゃったなぁー!

 おじいちゃんだからぁー!

ヴェール:

 いい歳して拗ねるなっ! 悪かったから、早く肝心なところ教えてくれ。

ナキオ:

 ふんっ……はいはい……えっと、そのネコ殿が、ショバ代を立て替えてくれたんです。

ヴェール:

 え、はぁ? そんな……立て替えられるような金額じゃ……え、マジ?

ナキオ:

 そこでは、そういう話になりました。

 それで、立て替えたんだから、返済まで監視できるように側に置く、と……。

ヴェール:

 ……つまり、借金のかたに、私はタングリスニへ連れて来られたと……気絶中に。

ナキオ:

 そうなりますなぁ……同意無く。

ヴェール:

 はぁ……散々だ……。

ナキオ:

 ……まぁ、拘束される訳じゃないようですから。

 捕虜じゃないだけマシかもしれませんな。

ヴェール:

 そうなんだねぇ……というか、なんでアンタまでここに居るんだ?

ナキオ:

 ……そりゃー、まあ、先生を1人で行かせる訳にはいきませんからな。ほっほっほっ。

ヴェール:

 ……私はこれでも強い方なんだけどね。

ナキオ:

 ががががが、って壊れているのを見て、そうは思えませんでしたからな。

ヴェール:

 うっ……それはそうか……。

ナキオ:

 まぁ、ちょうど良かったんじゃよ。そろそろ、住まいを変えようかと思っておったしのぅ。

ヴェール:

 ふぅーん……住まい……あーあ……店も仕事道具も……なぁんにも無くなったんだねぇ……。

ナキオ:

 ……先生、お気を落とさず。

ヴェール:

 ……だから、先生ってのやめてくれ。

 良い機会だしさ、名前で呼んでくれよ……ほら、店も何も、もう無いんだから。

ナキオ:

 ……また、店を開けば良いじゃないですか。

ヴェール:

 そうかもねぇ……でも、しばらくは良いさ。先生もやる気は無いね。

 それに……アンタとは対等で居たいんだよ、なんかさ。

ナキオ:

 えっ、告白?

ヴェール:

 黙れ、クソジジイ。

ナキオ:

 ほっほっほっ、クソジジイじゃなくて、ナキオじゃよ……ヴェール。

ヴェール:

 ……へんっ、アンタなんか、じいちゃんで充分だろうが。

ナキオ:

 ほっほっほっ、年上は敬うものじゃぞ。

ヴェール:

 いやだから……私の方が年上だっつーのぉ!



〜〜〜〜〜〜

*aguhont://アグホント大陸/タングリスニ国/ブリーフィングルーム/


479:

 ネコさん、お疲れ様です。

ネコ:

 あぁ……なんとか作戦は成功したけど……イレギュラーが多かったね。

479:

 そうですね……『虎の子』まで使用してしまうなんて、ネコさんにしては、焦ってましたしね。

ネコ:

 あれは……被害が想定しきれなかったんだから、仕方がないだろ。

479:

 はい、適切な対応だったと思いますよ。流石です。

ネコ:

 ……事後の手間は、最悪だけどね。

479:

 秘密保持契約を結ぶ必要がありましたしね。

 ナキオさんなら……まぁ、黙っていてくれるでしょう。

ネコ:

 契約してるんだから、黙っていてくれないと困るでしょ、本人が。

479:

 そうですね。

ネコ:

 ……ねぇ、今回の兵装さ。

479:

 あぁ、試験運用のご協力ありがとうございました。

 取得できたデータを見るに、まだ安定した運用は難しそうです。

ネコ:

 ……そっか。

479:

 ……お好みでしたか?

ネコ:

 まぁ……実用化できたら真っ先に積んで欲しいくらいには?

479:

 ネコさんのお墨付きとなれば、よほど良い性能だったということですね。伝えておきます。

ネコ:

 うん。でも、あの……『量子絆環』(クォンタム・リンク)は……。

479:

 要調整ですね。1度の起動で、『霊子駆動』(エーテルドライブ)の回路が焼き切れましたから。

ネコ:

 いや……というか、アレは。

479:

 なんです?

ネコ:

 ……人の身には、余る力じゃないか?



〜〜〜〜〜〜

*aguhont://アグホント大陸/タングリスニ国/ブリーフィングルーム/


ティアン:

 ……ねぇ、どういうことだったの?

479(博士):

 ……どういうこと、とはぁ?

ティアン:

 とぼけるなよぉ……ギャリアン。

479(博士):

 そんなキモい呼び方するの……貴方だけですよぉ。

ティアン:

 いいから。

 ……あの、僕が買ったガジェットも、53(ゴミ)のハッキングも、お前の仕組んだことなんだろ?

479(博士):

 あっはっはーっ、ネコ君が居なくなったや否や、天井から飛びついてきたと思ったらぁ……とんだ妄言をおっしゃるじゃあないですかぁ。

ティアン:

 妄言? ははぁっ、そりゃあ普通ならそう思うぢゃんねぇ?

 でもさぁ……ギャリアン、お前がやってるなら、話は別なんだよ。

479(博士):

 ……随分とぉ、買い被ってくれますねぇ。

 いやぁ……そろそろ降りろよ、キトン。

ティアン:

 ふっははぁ……そんなキモいあだ名で呼ぶの、お前くらいだよ、ギャリアン。

479(博士):

 てめぇが重くて動作不良が起きんだろっつってんだよ。

 早く降りろ。腕だけじゃなく、全部爆破されたいのか?

ティアン:

 おー、こーわっ。よっ……ほらよ。

479(博士):

 ……断っておくが。

ティアン:

 あん?

479(博士):

 別に、この世の全てを掌握(しょうあく)できる訳じゃない。だからイレギュラーだらけだし、計画(プラン)通りには行かないことの方が多い。

ティアン:

 それってさぁ……自供(じきょう)してるのと変わらなくない?

479(博士):

 さぁな……だから、今回の件で言うと……75%くらいだよ。私の掌(てのひら)にあったのは、な。

ティアン:

 へぇ……じゃあ、100%だったらどうなってたのやら。

479(博士):

 if(イフ)の話に興味なんて無い。お前も良く知っているだろう、キトン。

ティアン:

 ……まぁね。

479(博士):

 とりあえず……お礼でも言っておきましょうかぁ?

ティアン:

 あぁ?

479(博士):

 利用されてくれて、ありがとうございましたぁ。ティアン君。

ティアン:

 ははっ……どういたしまして、博士。

 ……てか、なんも教えてくんないぢゃん。

【END】



〜〜〜〜〜〜

*TIPS①

⭐︎簡単習得! 君にも出来る調理テクニック!

 調理補助ガジェット【ラビリテ・デュ・シェフ】

本機の起動は、バッテリー格納部分の蓋裏に取り付けてある、ミクロボタンの上から1028番目を10秒長押しするか、

ボイスコマンド『調理開始』(セ・パルティ)にて行えます。

『切断』(クーペ)

 どんな野菜やまな板も完璧にカット出来ます。クシャミの音を音声認識で誤検知し、人体を切断する事故が度々報告されておりますが、当社は一切責任を負いません。

『粉砕』(エクラーゼ)

 どんな物でも蒸さずに簡単に潰せるので、力の弱い方でも疲れません。範囲の指定は出来ませんので、なるべく平らな場所で、ご使用下さい。

『細断』(エマンサージュ)

 千切りなど細やかなカットもイメージ通りに出来ますが、使用する際は、まな板の破片にお気を付け下さい。

『飾切』(デコラシオン)

 10パターンの簡単な図形をご用意しており、その通りにカットすることが出来ます。もちろんまな板にもご使用出来ます。

『混合』(メランジュ)

 調味料や生地を作る際に、ダマを自動検知し、完全に液状化するまで混ぜ合わせることが出来ます。ダマを自動検知する機構は別売りです。

『加熱』(キュイソン)

 火力の調整は、なんと38段階。最高出力だと、お湯が1時間で沸騰します。30分以上最高出力を維持すると、内部バッテリーの発火に繋がりますので、お気を付け下さい。

『冷却』(ルフロワディール)

 冷却力の調整は、こちらも38段階。最高出力だと氷を製造することが出来ますが、内部回路が凍結し、故障へ繋がるので、おすすめ出来ません。

〜〜〜〜〜〜

*TIPS②

⭐︎ナキオ技集

・本気の拳『怒天壊命』(どってんかいめい)

 力任せの一撃。天の怒りをもって、命を壊す。

 そんなイメージで練り上げた気をぶつける暴力。

・痺れる拳『羽雷主』(うらぬす)

 気を電気に変換しつつ、拳に載せて打ち出す。

 体を痺れさせ、無理やり動きを止める。

・重い拳『重飛多』(じゅぴたぁ)

 気を練り、重い一撃を喰らわせる。

 ヒット後、相手に纏わりつく重量のある気で、相手を地に落とす。

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*TIPS③

⭐︎ネコ技集

・『兵装:雷荷』(へいそう:フルメン・オヌス)

 義体の一部へ高圧電流を纏わせるという、シンプルかつ凶悪な兵装。

・『防御機構:衝撃吸収』(ぼうぎょきこう:ショックアブソーブ)

 受けた衝撃を瞬時に受け流す防御機構。

 衝撃を受けられる上限値が定められており、上手く使用するには高性能な演算処理装置が必要。

・『霊子駆動』(エーテルドライブ)

 某施設で研究されていた技術を汲み上げ、試験的に運用している兵装。

 アンドロイド義体に流動性の疑似血液『霊子』(エーテル)を回路として組み込み、

 心臓代わりの高出力なポンプを採用することで、非常に高い機動力を得ることができる。

・『霊子駆動-凶暴』(エーテルドライブ‐ブルータル)

 戦闘における単純な機動力を優先したモード。

・『霊子駆動-熱線剣装』(エーテルドライブ-ビームサーベル)

 ビーム兵装とリンクさせ、ビームを剣の形に腕から出力させたモード。

・『霊子駆動-量子絆環』(エーテルドライブ-クォンタム・リンク)

 ※本項は機密事項Lv.5となり、閲覧は不可となります。

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自作の声劇台本まとめ

https://note.com/gestalt_summer/n/n258ee3e888bb

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