『ガイアス・ブランド』
作:Oroるん
(6:0:8) ⏱80分
【登場人物】
ティアン 性別不問 獣人 猫耳 ちびっこ どこの国にも属さない戦いの見届け役
マズダー 男性 アンドロイド どこの国にも属さない戦いの見届け役
《タングリスニ》
ディーゴ 男性 人間 タングリスニ軍所属。腸内環境を操る異色の魔法使い
テオ・ダンクワース 男性 人間 世界中を渡り歩く画商の青年
ヴェル ギャギャギャリアン=ヴェルナヴァンド 男性 人間 様々な実験を行っている天才博士
ビリオン 性別不問 人間 ベリリの従者兼「通訳」
ベリリ 性別不問 人間 タングリスニの皇族
兵士1 性別不問 人間 ディーゴの部下
兵士2 性別不問 人間 ディーゴの部下
店主 性別不問 タングリスニで香水店を営む商人
バオジュン 性別不問 バオジュン化した兵士
衛兵 性別不問 ベリリ邸宅を警備する兵士
《バルナ》
モナカ 性別不問 人間 多重人格者
モナカ(男) 男性の人格 荒っぽい性格
モナカ(???) 謎に包まれた人格
《マリシ》
フーリ 性別不問 獣人 狐耳 薬師
タミア 性別不問 人間 マリシ軍第ニ歩兵師団第七分隊長
《リーベル》
テルエス:性別不問、ハーフエルフ リーベルの皇族
ナハト 男性 人間 要人の護衛を生業とする通称「戦争屋」
ゴーリオ 男性 獣人(ゴリラ) リーベル剛猿獣人部隊、通称「コングス」の隊長
ボノンボ 性別不問 獣人(ゴリラ) 「コングス」の副隊長
【本編】
0:マリシ領内 タングリスニ国境付近の秘密施設
モナカ:(男)よう、久しぶりだなあ、フーリ!
フーリ:モナカ・・・久しぶりだね。
モナカ:(男)急に悪かったな。
フーリ:別に良いけどさ。君、マリシまで来て大丈夫なの?
モナカ:(男)もーまんたい!
フーリ:君って、結局何者なの?あっさり国境も越えて来てさ。
モナカ:(男)ちょっと顔が広いだけさ。
フーリ:そうなのかなあ?
モナカ:(男)んなこたぁどうでも良いんだよ!マジで急用なんだ!
フーリ:何さ?
モナカ:(男)お前に見てもらいたいもんがある。ここの地下にな。
フーリ:地下?
モナカ:(男)おう、着いてきな。
0:少し歩いて
フーリ:この建物、一見廃墟に見えるけど、違うみたいだね。軍関係かな?
モナカ:(男)・・・
フーリ:そして、君が絡んでいるとなると・・・ひょっとしてバルナの秘密施設かい?
モナカ:(男)御名答!さすがフーリ「先生」だな!
フーリ:・・・その呼び方は辞めて。嫌いなんだ。
モナカ:(男)・・・そうか、悪い。
フーリ:・・・
モナカ:(男)ここだ。
フーリ:これは・・・
0:牢獄に囚われているタミア
タミア:これは一体どういうことだ!何故私を牢屋に閉じ込める?
モナカ:(男)悪いが、まだアンタを解放するわけにはいかねえな。
タミア:貴様は何者なんだ!?
フーリ:モ、モナカ?この人、だれ?
モナカ:こいつはな、マリシ軍所属のモブ兵士Aさんだ。
タミア:誰がモブ兵士だ!
フーリ:マリシの軍人?それが、私に何の関係があるの?
モナカ:すぐに分かる。頼んだもの、持ってきてくれたか?
フーリ:それは持ってきたけどさ。
タミア:何をゴチャゴチャ・・・うぅっ(苦しみ出す)
フーリ:?
タミア:(呼吸が荒くなる)
フーリ:おい、大丈夫?
タミア:(うめき声を上げる)
フーリ:モナカ、医者を呼んだほうが・・・(肌の色の変化に気付き)っ!
モナカ:(男)気付いたか。
フーリ:肌の色が・・・紫に。
タミア:ウガアッ!(鉄格子に飛び掛かる)
フーリ:っ!
タミア:(鉄格子に体当たりしながら)ギャァッ!ウギャッ!グアッ!(そのままフェードアウト)
0:間
0:タングリスニ ベリリ邸宅前
ディーゴ:さすがは皇族だなあ。すげえ屋敷だ。
テオ:ディーゴさん。
ディーゴ:テオ?
テオ:どうして、ベリリ殿下のお屋敷に?
ディーゴ:呼び出されたんだよ。ベリリ殿下から直々に任務を賜る(たまわる)んだと。
テオ:ベリリ殿下から?
ディーゴ:ああ。会うの初めてなんだよなあ。ちょっと緊張するわ。
テオ:行かないと、駄目なの?
ディーゴ:あん?当たり前だろ。
テオ:・・・
ディーゴ:何だよ?
テオ:ディーゴさんだから言うけど、ベリリ殿下は危険なんだ。
ディーゴ:分かってるよ。まーたコキ使われんだろうな。
テオ:そういう事じゃなくて!
ディーゴ:?
テオ:テルエス様がタングリスニを去られて以来、ベリリ殿下への支持が集まってる。
ディーゴ:あの時の混乱を収めたのは、ベリリ殿下と側近のビリオン様だしな。
テオ:いまタングリスニで事実上の最高権力者は、ベリリ殿下であると言っても過言じゃない。
ディーゴ:だからこそ、そのベリリ殿下からの呼び出しを、無視することなんてできねえだろ。
テオ:それはそうだけど・・・
テオ:ディーゴさん、この国には大きな闇があるように思うんだ。
ディーゴ:闇?
テオ:その闇の中心にいるのは、ベリリ殿下。
ディーゴ:何でそんなこと・・・
テオ:まだ調べている途中だけど、何かあるのは間違いないんだ。
ディーゴ:調べてる?ちょっと待て、お前おかしなことはしてないよな?
テオ:それは・・・
ディーゴ:せっかく商売も軌道に乗り出したんだろ?危ない真似は辞めるんだ。
テオ:だけど・・・
ディーゴ:俺なら大丈夫、ヤバそうならトンズラするからさ。
テオ:・・・
ディーゴ:だから、心配すんな。じゃ、ちょっくら行ってくるわ。今度また飯でも食おうぜ。
テオ:うん・・・
0:間
テオ:大丈夫かな、ディーゴさん。
ヴェル:うーむ、実に心配ですねえ。
テオ:っ!貴方は?
ヴェル:私ですか?私は・・・
テオ:(被せて)ギャギャギャリアン・ヴェルナヴァンド博士?
ヴェル:おんやあ?何故わたしの名前を?
テオ:だって貴方は、有名人ですから。
ヴェル:それはごく一部の界隈(かいわい)の話で、世間一般的には私なぞまったくの「無名人」のはずですがねえ。どうやら、私の見込み通りのようです。
テオ:僕に何か御用ですか、博士?
ヴェル:博士などという堅苦しい呼び名はおやめなさい。親しみを込めて「ヴェルちゃん」と・・・
テオ:ひょっとして、ディーゴさんに関係することですか!?博士。
ヴェル:だからヴェルちゃ・・・ま、良いでしょう。
ヴェル:貴方の言う通り、そのディーゴさんに関係のある話ですよぉ。このままだとディーゴさん、大変な目に遭うかもしれません。
テオ:そんな!
ヴェル:ご友人を救う為にも、是非とも力をお貸し頂きたいのです。
テオ:僕に何をしろと?
ヴェル:それはもう盛りだくさんですよお。さあ、私と共に参りましょう!
ヴェル:タングリスニの、闇を晴らしに。
0:ベリリ邸宅内
ディーゴ:この部屋か。ここにベリリ殿下が・・・
ディーゴ:(ノックする)
ビリオン:誰です?
ディーゴ:ディーゴです、ビリオン様。
ビリオン:入りなさい。
ディーゴ:失礼します。(部屋に入る)
ビリオン:ご苦労様。
ディーゴ:(あれが、ベリリ様か。遠くて顔はよく見えないけど)
ビリオン:ディーゴさん、ベリリ殿下にご挨拶を。
ディーゴ:し、失礼致しました!(跪き)お初にお目にかかります、ベリリ殿下。タングリスニ軍所属、ディーゴと申します。
ベリリ:・・・(ビリオンに耳元でささやく)
ビリオン:(ベリリの言葉を聞きながら)はい・・・はい・・・
ビリオン:ベリリ殿下のお言葉です。「よく来てくれました」
ディーゴ:ははっ!
ディーゴ:(M)(毎回こうやって会話すんのか?極度の人見知りとは聞いていたけど、度を超えてるだろ)
ベリリ:・・・(ビリオンの耳元でささやく)
ビリオン:(ベリリの言葉を聞きながら)はい・・・はい・・・
ビリオン:ベリリ殿下のお言葉です。「今日来て頂いたのは他でもありません。貴方に重要な任務があるからです」
ディーゴ:重要な任務?
ベリリ:・・・(ビリオンの耳元でささやく)
ビリオン:(ベリリの言葉を聞きながら)はい・・・はい・・・
ディーゴ:(M)(これ面倒だな。話が全然進まねえよ)
ビリオン:ベリリ殿下のお言葉です。「詳細はビリオンから説明させます」
ディーゴ:はっ!
ベリリ:・・・(ビリオンの耳元でささやく)
ビリオン:(ベリリの言葉を聞きながら)はい・・・はい・・・
ディーゴ:(M)(もう良いって、このくだり)
ビリオン:はい・・・はっ、えっ?
ディーゴ:?
ビリオン:はい・・・はい・・・はい・・・
ディーゴ:(M)(今回長いな)
ビリオン:ベリリ殿下のお言葉です。「下がって良い」
ディーゴ:(M)(短っ!あれ?もっと長く喋ってたよねえ!?)
ビリオン:(ベリリの言葉を聞きながら)えっ?・・・ああ、はい。そうですね。
ディーゴ:?
ビリオン:いやそれは・・・わたしの口からはとても・・・
ディーゴ:(M)(な、何だ?)
ビリオン:だから言えないですって!ご自分で言ったら良いじゃないですか、バカ!
ディーゴ:(M)(バカ!?皇族にそんな口効いて良いの!?)
ビリオン:もう!(ビリオンの言葉を聞きながら)・・・え?・・・ああ、はい・・・うん・・・だよねー
ディーゴ:(M)(友達と話してる感じになってんじゃん!)
ビリオン:(ビリオンの言葉を聞きながら)はい・・・え?・・・言われてみれば・・・(吹き出す)
ディーゴ:(M)(何でこっち見て笑ったの!?)
ビリオン:(ベリリの言葉を聞きながら)だってほら、本人は気付いてないかもしれないですし・・・確かにちょっと出てますけど。
ディーゴ:(M)(何が!?何が出てるの!?)
ビリオン:(ベリリの言葉を聞きながら)はい・・・はい・・・
ディーゴ:・・・
ビリオン:ベリリ殿下のお言葉です。「ご苦労様でした」
ディーゴ:違うよねえ!?絶対悪口言ってたよねえ!?容姿に関する悪口を、言っていたよねえ!?
ビリオン:・・・やっぱり出てる。
ディーゴ:だから何がだよ!?
0:間
ビリオン:ディーゴさん、外で待っていてもらえますか?ベリリ殿下と極秘のお話がありますので。
ディーゴ:わ、分かりました。ベリリ殿下、失礼致します。(部屋を出る)
0:少し間
ビリオン:さて、仕込みを始めますか。
0:香水瓶を取り出し、蓋を開ける
ビリオン:『泡沫(うたかた)の夢・・・慟哭(どうこく)の波・・・浸れ(ひたれ)、狂え、衝動』
ビリオン:これで良し、と。
ビリオン:フフフ・・・もうすぐですよ、ベリリ殿下。(ベリリの頬を撫でる)とーっても、楽しみですねえ。
0:間 ベリリ私室 外
ディーゴ:ふぅっ、緊張したあ。
ディーゴ:ベリリ殿下、最後まで肉声を聞けなかったな。噂通り。直接コミュニケーションが取れるのはビリオン様だけか。
ビリオン:(部屋から出てくる)お待たせしました、ディーゴさん。
ディーゴ:い、いえ!それで、任務というのは?
ビリオン:ええ。他でもありません、テルエス様・・・いえ、逆賊テルエスの事です。
ディーゴ:テルエス・・・
ビリオン:貴方、上層部に訴えているそうですね。リーベルに渡ったテルエスを放置すべきではない、と。
ディーゴ:は、はい!情報漏洩(ろうえい)の恐れもありますし、何より皇族が他国に亡命したなど、タングリスニにとってこれ以上の屈辱はありません!
ビリオン:ベリリ殿下も同じお考えです。
ディーゴ:ベリリ殿下が?
ビリオン:はい。そして貴方に、タングリスニが受けた屈辱を晴らす大任務を任せたいと仰っています。
ディーゴ:っ!
ビリオン:やってくれますね?
ディーゴ:もちろんです!
ビリオン:素晴らしい。ベリリ殿下もさぞお喜びになることでしょう。
ディーゴ:しかし、一体どうやって?
ビリオン:それは後ほど、その前にこれを。
ディーゴ:その香水瓶、この前の魔道具?
ビリオン:今回の任務は危険ですから、ちゃんと備えておかないと。
ディーゴ:その魔道具、確か魔法耐性を高めるものですよね?それが今回の任務と関係が・・・
ビリオン:細かいことは良いじゃ無いですか(強引に香水を嗅がせる)
ディーゴ:うっ!
ビリオン:さあ、香りで満たされなさい。そして、己の務めを果たすのです。
ディーゴ:・・・
ビリオン:良いですね?
ディーゴ:・・・仰せのままに。
0:間
➖リーベル・マリシ 国境付近
ゴーリオ:(N)『「ガイアス・ブランド」それはリーベルとマリシが定期的に行う合同軍事演習の通称である』
ボノンボ:(N)『この演習の目的は、両国軍部の戦闘基礎力向上である。その為、リーベル側は魔法を使えず、マリシ軍は銃火器等の使用が禁止される』
ゴーリオ:(N)『合同訓練の名目ながら、いま各国間で水面下の鍔迫り合い(つばぜりあい)が続くアグホントにおいて、このイベントは相手国の軍事力や内情を探るのが、裏の目的になっていた』
ボノンボ:(N)『更に今回は、リーベルから珍しい賓客(ひんきゃく)が参加していた』
0:間
ゴーリオ:全隊、キャベンディッシュフォーメーション!
ボノンボ:展開完了!
テルエス:よし・・・全軍突撃!
ゴーリオ:(同時に)ウホー!
ボノンボ:(同時に)ウホー!
テルエス:ゆけい!敵軍を蹴散らすのだ!
ゴーリオ:っ!ボノンボ、危ない!・・・ぐああ!
ボノンボ:隊長!
テルエス:どうした!?
ボノンボ:隊長が・・・私をかばって・・・
ゴーリオ:ボノンボ、無事か・・・良かった。
テルエス:くっ!衛生兵!衛生兵ー!
ボノンボ:しっかりして下さい隊長!家族の所に帰るんでしょう!?
ゴーリオ:ああ・・・ルイジ・・・エイン・・・もうすぐ、帰るからね・・・(死んだフリ)
ボノンボ:隊長?・・・隊長ーーー!!!
テルエス:くそおおおおお!!!
0:間
ナハト:・・・何やってんの?
ゴーリオ:ナハト殿!今のは合同軍事演習のシミュレーションであります!
ナハト:シミュレーション?今のが?
ボノンボ:イエッサー!
ナハト:遊んでただけだろ?
ゴーリオ:イエッサー!
ナハト:「イエッサー」じゃねえよ。大体、テルエスは皇族として演習を視察しにきただけで、実際に参加するわけじゃねえだろうが。
テルエス:ナハトも一緒にやる?戦争ごっこ。
ナハト:「ごっこ」って言ってんじゃん。はっきり言ってんじゃん。
ナハト:ゴーリオ、ボノンボ。お前ら仮にも剛猿獣人部隊、通称「コングス」の隊長と副隊長なんだろ。こんな「暇つぶしについてきただけ」の皇族に振り回されてどうすんだ?
テルエス:ナハトくーん、言うねえ。たかが傭兵の分際で。
ゴーリオ:ナハト殿!エリス殿下の兄君であり、今や我がリーベルの皇族たるテルエス殿下に、その様な不遜(ふそん)な態度は許されませんぞ!
テルエス:そうだそうだ!僕は皇族なんだぞ!偉いんだぞ!
ナハト:こんな奴を皇族として迎えて、リーベルは大丈夫なのかねえ。
0:間
ボノンボ:テルエス様!マリシ軍のタミア隊長がお見えになりました!
テルエス:あっそ。
タミア:お初にお目にかかります、テルエス殿下。マリシ軍第二歩兵師団第七分隊長のタミアと申します。
テルエス:どうも、リーベルで一番偉い皇族のテルエスでーっす。いえーい。
ナハト:こいつ、こんなキャラだったか?
タミア:貴方は・・・げっ!
ナハト:ん?
タミア:ああ、いや(咳払い)失礼致しました、初対面の方!
ナハト:俺のことか?
タミア:ええ!そうですとも!貴方と私は、今日、この場所で、初めて出会ったのです!
テルエス:・・・?
タミア:お名前をお伺いしても?
ナハト:あ、ああ。俺はナハトだ。正確にはリーベル軍所属じゃないが、今回はアドバイザーとして参加している。
タミア:ほう!貴方があの「戦争屋」の異名を持つナハト殿ですか?
ナハト:そう呼ぶ奴もいる。
タミア:いや知らんけど。
ナハト:どっちだよ。
ゴーリオ:タミア隊長、しばらくですな。
タミア:貴方は!えーっと・・・そう!ゴーリオ隊長だ!
ゴーリオ:は、はい、そうです。
タミア:リーベル軍剛猿獣人部隊、通称「コングス」のゴーリオ隊長ですな?
ゴーリオ:何故そんな説明口調で?
タミア:剛猿・・・つまりゴリラの獣人のみで構成された部隊。いやあ、ゴリラの獣人は初めて見ましたが・・・遠目に見ると毛深いおっさんの集団にしか見えませんなあ。アーハッハッハッ!
ゴーリオ:これは・・・ケンカかな?
ボノンボ:タミア隊長、今日は宜しくお願いします。
タミア:そして貴方は・・・んー、えっと・・・
ボノンボ:ボノンボです。
タミア:そう!ボナンザ殿!
ボノンボ:あの、ボノンボです。
タミア:失礼、ボノンボ殿ですな!お久しぶりです!
ボノンボ:初対面かと思いますが?
タミア:もちろん!貴方と私は初対面!分かっておりましたとも!ハーハッハッハッ!ナイストゥーミーチュー!
ボノンボ:・・・はあ。
ナハト:アンタ、大丈夫か?何か変だぞ?
タミア:へ、変?一体私のどこが変なのですか?
テルエス:全部。
タミア:なっ!・・・・・・(小声で)このっ!裏切り者の分際で!
テルエス:何か言った?
タミア:い、いえ、何も?
ボノンボ:タミア隊長、演習の打ち合わせをしたいのですが、宜しいでしょうか?
タミア:も、もちろん!では、テルエス殿下、失礼致します。
テルエス:・・・
ナハト:変な奴だな?
テルエス:ゴーリオは会ったことがあるんだよね?
ゴーリオ:はい。前回の「ガイアスブランド」の折に。
テルエス:その時も、あんなペンダントしてた?
ゴーリオ:ペンダント?
ナハト:ああ、そういえば黒水晶のペンダントをしてたな。全然似合ってなかったけど。軍服には合わねえよ。
ゴーリオ:そうでしたか。前に会った時は、どうだったかな?覚えておりません。
テルエス:観察力が足りないなあ。
ゴーリオ:も、申し訳ございません!
ナハト:あのペンダントがどうしたんだよ?
テルエス:あの黒水晶から魔力を感じた。
ナハト:魔道具か?マリシの軍人が、何でそんなもん・・・
テルエス:・・・(笑う)
ゴーリオ:テルエス殿下?何を笑っておいでなのですか?
テルエス:だって・・・面白くなりそうじゃないか。
0:間
0:マリシ陣営近くの森
タミア:やっぱり俺には無理だって・・・
ビリオン:随分と弱気ですね。
タミア:ビリオン様!どうしてここに?
ビリオン:様子を見に来たんですよ。あなたがちゃんと任務を果たせるかどうかをね。
ディーゴ:(ペンダントを外し)ビリオン様、本当に大丈夫なんでしょうか?俺、自信無いです。
ビリオン:おやおや、ペンダントを外してはなりませんよ。誰が聞いているか分からないんですからね。
ディーゴ:しかし!
ビリオン:ご自分の果たすべき務めを理解していますか?その為に、貴方にその姿と声を与えたのですよ。
0:間
0:数日前
ビリオン:さあ、鏡を見てご覧なさい。
ディーゴ:こ、これは!
ビリオン:どうです?
ディーゴ:これが・・・俺の顔?
ビリオン:ええ、完全に別人でしょう?
ディーゴ:(顔を触り)これ、この皮膚の感触、本物みたいです。
ビリオン:すごいでしょう?マリシは人工皮膚の技術が発展していましてね。
ディーゴ:アンドロイド用にですか?
ビリオン:ええ。その顔は、その技術を応用して製作したものです。
ディーゴ:・・・
ビリオン:さあ、仕上げです。このペンダントを。
ディーゴ:はい・・・
タミア:あの・・・っ!声が!?
ビリオン:ペンダントを外すと戻ってしまうので、気をつけて下さい。
ディーゴ:(ペンダントを外し)本当だ。
ビリオン:貴方には、マリシ軍のタミア隊長になりすまして頂きます。
ディーゴ:その、タミアって人は・・・
ビリオン:もちろん、実在するマリシ軍人です。顔も声も、その方と同じにしてありますよ。
ディーゴ:ではなく、その、本物のタミア隊長は今?
ビリオン:それは、知らない方が良いと思いますよ?
ディーゴ:・・・
ビリオン:さあ、貴方にはタミア隊長になりきってもらわなければなりませんからね。これから大変ですよ。
ディーゴ:は、はい。
0:間
0:現在
ビリオン:そうやって、貴方はタミア隊長になったんでしょう?その顔も、声も、簡単に作れるものではないんです。失敗は許されませんよ?
ディーゴ:しかし、マリシの軍人になりすまして皇族を誘拐(ゆうかい)するなんて、バレたら大変なことになりますよ?
ビリオン:誘拐?貴方は何か勘違いしていませんか?
ディーゴ:えっ?だって俺の任務は、テルエスをタングリスニに連れ帰り、裁きを受けさせることでしょう?
ビリオン:ハッ・・・ハーハッハッハッ!連れ帰る?そんなわけないでしょう!
ビリオン:あ・な・た・の任務は!テルエスを!殺すことですよ!
ディーゴ:・・・は?
ビリオン:あの裏切り者を、生かしておくわけないじゃないですか!
ディーゴ:ちょっと待ってください!仮にもテルエスはリーベルの皇族ですよ?それを暗殺するって言うんですか?
ビリオン:そうですが、何か?
ディーゴ:そんなことしたら、国家間の一大事になるじゃないですか!
ビリオン:貴方、バカですか?だから、マリシの仕業に見せかけるんでしょうが。
ディーゴ:そんなの、余計に悪いですよ!まるでテロリストの所業だ!ベリリ殿下はアグホントを大混乱に陥れるつもりなんですか?
ビリオン:・・・やれやれ、少し効き目が落ちてきましたか。
ディーゴ:効き目?
ビリオン:さあ、この香水を嗅ぎなさい。
ディーゴ:ビリオン様、その魔道具は・・・
ビリオン:つべこべ言うな!(強引に嗅がせる)
ディーゴ:う!・・・うぅ・・・
ビリオン:駒は駒らしく、プレイヤーに身を任せていれば良いんですよ。
ビリオン:そう・・・駒は、ただ使い捨てられるだけの存在なのだから・・・
0:間
0:タングリスニ市街
テオ:ここです。ここが、博士が探していた店のはずです。
ヴェル:さすがテオさん、この短期間でよく見つけて下さいました。では、早速入ってみましょう。
店主:いらっしゃい、どんな香水をお探しかな?
テオ:あの・・・
ヴェル:ここでは様々な香水を取り扱っているんですよねえ。
店主:ええ、まあ。
ヴェル:例えば、魔力を込めた香水なんかも?
店主:何の話ですかな?
ヴェル:その香水の香りを嗅ぐと、ひどく怒りっぽくなったり、暴力的になったりするとか?
店主:失礼ですが、店を間違えていませんか?
ヴェル:覚えていますか?あの皇族同士の一騎討ちのあった日、一部市民が暴徒化して街中大混乱に陥り(おちいり)ました。
店主:え、ええ・・・あの日は流石に店を閉めて、中に引きこもってましたよ。
ヴェル:おんやあ、見に行かなかったのですかあ、世紀の一大イベントを?
店主:人混みが苦手なもんで。
テオ:または・・・暴動が起きて危険になることを知っていたから。
店主:そんなまさか・・・
テオ:貴方が、密かに香水に模した魔道具を作り、密売していることは調べがついています。
店主:か、帰ってもらえますか?商売の邪魔なんで。
ヴェル:あんな騒ぎを起こしておいて、よく呑気(のんき)に商売なんかできますよねえ?民衆を扇動(せんどう)して、街を大混乱に陥れて。
店主:扇動したなんて人聞きの悪い!私はただ頼まれた通りに作って渡しただけで・・・あ。
テオ:誰に頼まれたんですか?
ヴェル:当ててみせましょうか?皇族のベリリ、又はその側近であるビリオン。
店主:・・・言えない。言ったら、どんな目に遭うか。
ヴェル:今のままでも充分危険ですよう、口封じの為に殺されるかもしれませんしねえ。
店主:そんな!
ヴェル:大丈夫、貴方の身の安全は、保障しますよ。こう見えて、顔は広いんです。
テオ:その代わり教えて下さい。貴方が作った魔道具のことや、貴方にそれを作らせた人のことを。
店主:・・・わかった。
0:間
タミア:(目覚める)
フーリ:気がついた!大丈夫?
タミア:・・・私は一体?
モナカ:(男)良かったな、バケモンにならずに済んで。
フーリ:解毒剤、持ってきて良かったよ。
フーリ:しかし、これは一体どういうことだ?この人の症状、明らかに・・・
モナカ:(男)ああ、バオジュンだ。
タミア:バオジュン?
モナカ:(男)バルナとマリシの国境付近で、バオジュン化したらしい人間の目撃情報があってな、調べに行ったら、このモブ兵士Aさんの部隊に出くわしたんだ。
タミア:だから誰がモブ兵士だ!私にはタミアという名前がある!マリシ軍第二歩兵師団第七分隊長という肩書きもある!
モナカ:(男)そうか、アンタ隊長さんだったのか。
タミア:私たちはどうなったんだ?確か私の部隊は森で訓練をしていて・・・気付いたら、この牢屋に入れられていた。なあ、私の部下は?みんな無事なのか?
モナカ:(男)残念ながら、助かったのはアンタだけだ。
タミア:っ!
フーリ:みんな、バオジュンになってしまったの?
モナカ:(男)ああ。そして皆、死んじまった・・・俺も仲間を守らなきゃならなかったからな。イディアとの約束、破っちまったよ。
フーリ:そう・・・
タミア:どうしてこんなことに・・・
モナカ:(男)そういや、このモブ(咳払い)タミア隊長さんだけ、発症の仕方が違ってな。バオジュン化したと思ったら、10分くらいで元に戻る。ずっとそれを繰り返していたんだ。おかげでコイツだけは助けられたんだが、何でか分かるか?
フーリ:・・・もしかしたら、この人にはバオジュンZ(ズィー)にある程度耐性があるのかもしれない。前に話したでしょ?ごく稀(まれ)に天然の抗体を持つ者がいるって。
モナカ:(男)そういうことか。
フーリ:ねえタミアさん、森で訓練をしていた時のこと、詳しく教えてくれないかな?みんなで同じものを食べたり飲んだりしなかった?または、動物に襲われて、怪我をしたとか?
タミア:そう言えば、あの日ずいぶん霧が濃かった気がするなあ。
モナカ:(男)霧?
タミア:霧のせいで視界が悪くて、これじゃあ訓練にならないなあとか考えてたら、頭がボーっとしてきて・・・
フーリ:霧・・・つまり、気体。まさか・・・バオジュンZを改造したのか?
モナカ:(男)どう言うことだ?
フーリ:このタミア隊長が見た霧、それがバオジュンZだったんじゃないかな。それを吸い込んだから、みんな感染した。
モナカ:(男)マジか。そんなことしたら・・・
フーリ:より多くの人間に感染させやすくなる。大変だ・・・
モナカ:(男)いま、バオジュンZを持ってるのは・・・
フーリ:ベリリ、だね。きっと改造したのも、ベリリの指示に違いない。
モナカ:(男)それからもう一つ。タミア、アンタの部隊、確かマリシ軍の第二歩兵師団第七分隊って言ったよな?
タミア:ああ。
モナカ:(男)不思議なことに、その第七分隊が、バルナとの合同軍事演習に参加するって言う情報がある。
タミア:馬鹿な。こんな状況では、「ガイアスブランド」は中止になるはずだ!
モナカ:(男)そうだよな、全滅した部隊が演習に参加できるわけがない。
モナカ:(男)と言うわけで、これから、それを調べに行く所なんだが・・・
フーリ:私も行くよ!もしまだ、あの薬が使われているのだとしたら、放ってはおけない!
モナカ:(男)アンタなら、そう言うと思ったよ。
0:間
ヴェル:ご無沙汰しておりますー。
マズダー:ああ、アンタも元気そうで何よりだ・・・ってお前!
テオ:お久しぶりです!貴方は確か・・・存在感無しゴロウさん?
マズダー:マズダーだ、マ・ズ・ダー!誰が存在感無しゴロウだ!
ヴェル:おや、お二人はお知り合いでしたか。
マズダー:ああ、まあな・・・
テオ:これが自動車ですかあ!初めて見た!
ヴェル:ずっと使い続けてくれてたんですねえ。嬉しいです!
マズダー:へ?・・・あ、ああ!まあな!
マズダー:(M)(本当は似せて作らせた別の車なんだよなあ。本物はどこかにぶっ飛んでいっちまった・・・なんて言えねえよなあ)
ヴェル:マズダーさん?どうかしました?
マズダー:べ、別にぃ?(咳払い)コイツはよく出来た車だ。アンタは乗り捨てても良いなんて言ってたが、そんな勿体ないことできるか。重宝してるよ。
ヴェル:私も、またこれに乗れて嬉しいです。
テオ:これに乗って行くんですか?
ヴェル:ええ、目的地は遠いですからね。
テオ:本当に、ディーゴさんを助けられるんでしょうか?
ヴェル:それはやってみないと分かりません!しかーし、やらない後悔よりやる後悔というやつですよ!
テオ:・・・はい!
ヴェル:例のものはちゃんと持ってますね?
テオ:ここに・・・
ヴェル:おーっと、取り出さなくて結構!とても危険なものですからね、大切にしまっておいて下さい。
テオ:そうですね、分かりました。
ヴェル:ではマズダーさん、出発進行と参りましょう!
マズダー:OK!どうやらお急ぎのようだからな、飛ばして行くぜ!
0:間
ボノンボ:間もなく、演習開始時刻です。
ゴーリオ:前回は苦杯をなめさせられたからな。今回は勝つ!
ナハト:配置は問題無いな?
ボノンボ:イエッサー!
ナハト:テルエスは?
ゴーリオ:あの丘の上でご覧になっておられます。
ナハト:そうか。んじゃあ、ぼちぼち行くか。
ボノンボ:へ?
ナハト:「エコーロケーション!」
ゴーリオ:ナハト殿!何をやっているんです!?「ガイアスブランド」では魔法は禁止なんですよ!
ナハト:あれ、そうなの?シラナカッター。
ボノンボ:嘘だ!知っててやりましたよね!?大体、演習はまだ始まってないんですよ!
ナハト:うるせえなあ。こうでもしなきゃ、相手の裏をかけないだろ?
ゴーリオ:裏をかく?
ナハト:テルエスが言ってた通り、今回はただの演習で終わらない可能性が高い。だからこうやって、敵陣営の動きを魔法で探ってんだよ。ルール違反でもな。実戦ではお行儀良くなんかしてられねえんだ。
ボノンボ:じ、実戦?
ナハト:そのつもりでいろ。でないと・・・死んじまうぞ?
ゴーリオ:・・・
ナハト:どれどれ・・・ほーれ見ろ、奴らおかしな動きをして・・・ん?
ゴーリオ:ナハト殿?
ナハト:・・・伏せろ!
ボノンボ:は?
0:リーベル陣営で爆発が起きる
0:間
0:テルエスが待機している丘の上
兵士1:隊長、リーベル陣営で爆発を確認しました。予定通りです。
タミア:そうか。
兵士2:敵陣営の生存者は確認できません。
タミア:生きていたとしても、大混乱に陥ってるだろう。今のうちだ。
兵士1:隊長、あれがテルエスが待機しているテントです。
タミア:あそこに、テルエスが・・・よし、素早く片付けるぞ。
兵士2:はっ!
ディーゴ:(M)(ついに、逆賊テルエスに正義の鉄槌(てっつい)を下す時が来た!俺がこの手でテルエスの息の根を止める)
ディーゴ:(M)(殺せ、殺せ、殺せ、殺せ、殺せ・・・)
0:テルエス、ディーゴの背後に現れる。
テルエス:何してんの?
タミア:っ!
兵士1:(M)(いつの間に背後に?)
テルエス:演習始まるんでしょ?君たち、何でこんな所にいるのかなあ?
タミア:その・・・どうやら道を間違えてしまったようで・・・
テルエス:ふーん。それにしては・・・随分殺気立っているねえ。
タミア:・・・気のせいでしょう。
テルエス:そうかなあ?
兵士1:テルエス殿下、私たちと一緒に来て頂けませんか?
テルエス:何で?
兵士2:演習の様子がもっとよく観察できる場所へご案内致します。
テルエス:別にここで良いけど?
タミア:そう仰らずに。
テルエス:嫌だって言ったら・・・
ナハト:力づくで連れてくのか?
タミア:っ!何故ここに!?
ボノンボ:何を驚いてるんです?さっきの爆発で、我々が死んだはずだからですか?
ゴーリオ:「ガイアスブランド」では、銃器や爆発物の使用は禁止されているはずですが?
兵士1:くっ!
テルエス:他の者は?
ボノンボ:怪我人はおりますが、全員無事です。ここには、動ける者を連れて参りました。
ゴーリオ:タミア隊長、ご説明頂けますか?
タミア:私たちは何も知りません。そういえば、先ほど爆発があったようですな。死者が出なかったとは、不幸中の幸いでした。
ナハト:もう良いよ。いつまで三文芝居を続けるつもりだ?
ナハト:・・・ディーゴ?
タミア:っ!!!
タミア:ディーゴ?それは一体誰のことですかな?
ナハト:さっき、「エコーロケーション」を使ってお前らの部隊の動きを探ってな・・・ちなみにそのおかげで俺たちは助かったわけだが・・・
ナハト:エコーロケーションで察知したお前の動き、戦場でのお前の身のこなしが、覚えのあるものだったんだ。
タミア:何の話だか・・・
ナハト:それは、あの皇族同士の一騎打ちの日、つまりタングリスニで暴動が起きた日、俺が今日と同じようにエコーロケーションを使って察知した、お前の気配と同じだったんだよ。
タミア:・・・
ナハト:俺はな、軍人や戦闘能力の高い人間の動きは、覚えちまうんだよ。次に会った時に備えて。それが戦場で長く生き残る、秘訣ってやつだ。
兵士2:そ、そんな話、何の根拠も・・・
ナハト:無いな。だが俺は、確信している。だからお前を拘束する。間違ってたら、まあ、後で謝るよ。
兵士1:横暴な・・・
タミア:・・・もう良い。
兵士2:隊長?
タミア:もう誤魔化しきれねえよ。それに、良い加減他人のフリすんのが面倒になってきたところだ。
0:タミア、ペンダントを外す
ディーゴ:流石だな、ナハトの旦那。
テルエス:ペンダントを外すと声が戻るのか。そう言う魔道具なんだね。
ディーゴ:(マスクを外しながら)ああ、そうだよ。
テルエス:おおっと!顔の方はマスクを被ってたのか。凄いな、作り物には見えなかったよ。アンドロイド用の人工皮膚を応用してるのかな?ということはマリシの技術か・・・
ディーゴ:答える義理はねえな。ナハト、退いて(どいて)もらおうか。俺はそこのテルエスに裁きを下さなきゃならねえ。
ナハト:どうするつもりだ?
ディーゴ:決まっている。この手でテルエスを殺す!
テルエス:わーお。
ナハト:他国の皇族を他国の領土で暗殺しようって?お前、自分が何言ってるのか、分かってんのか?
ディーゴ:うるさい!テルエスはタングリスニを裏切った反逆者だ!許すわけにはいかない!
テルエス:反逆者、ねえ。
ナハト:やれやれ、何でそんなに正気を失ってんのか知らんが(剣を抜く)とりあえずやり合うしかないみたいだな。
ディーゴ:邪魔する者は排除する(ナイフを抜く)
兵士1:(剣を抜き)テルエス、覚悟。
兵士2:(剣を抜き)生かしては帰さんぞ。
ナハト:ゴーリオ、ボノンボ、テルエスを頼む。気をつけろ。他の奴も、恐らくタングリスニの隠密部隊の連中だ。
ボノンボ:イエッサー!
ゴーリオ:全隊、戦闘体制!これは演習ではない!繰り返す!これは演習ではない!
ナハト:「フィジカルライズ」・・・来な、ディーゴ。
ディーゴ:うぉぉぉ!
0:間
0:演習場付近
モナカ:(男)あそこの森の辺りだな。リーベルとマリシの合同軍事演習、「ガイアスブランド」ってやつが行われてる場所は。
フーリ:さっき爆発みたいな音したよね?
モナカ:(男)ああ、煙も上がってる。やはり何か起きてるみたいだな。解毒剤持ってきたか?
フーリ:うん。これの出番は、無い方が良いけどね。
モナカ:(男)だな。
ティアン:フーリ?モナカ?
モナカ:(男)ティアン?お前、ティアンか?
フーリ:なんでここに?
ティアン:こっちの台詞だよ!・・・もしかして君たちも「バオジュンZ」を追ってきたの?
モナカ:(男)ということは、お前も?
ティアン:うん!マリシ軍のとある部隊が、バオジュンZを保持しているという情報があってね。
フーリ:恐らくタミア隊長の部隊のことだね。
ティアン:「レストポープ事件」は本当に悲惨だった。あの場にいた者として、2度とあの悲劇を繰り返したくないと思って・・・だから調査に来たんだ。
モナカ:(男)俺たちも同じだ。
フーリ:そう、2度とあの薬が使われることは、あってはならないんだ!
ティアン:私も同行させてもらって良いかな?
フーリ:もちろん!
モナカ:(男)行くぞ。こっからは何があるか分かんねえ。油断すんなよ。
ティアン:うん!
0:間
ナハト:おらあっ!(剣で斬りつける)
ディーゴ:ふっ!(避ける)魔法で身体能力を強化したって、当たらなきゃ意味ねえなあ!
ナハト:相変わらず、上手くかわすな。これならどうだ!(剣で突く)
ディーゴ:喰らうか!(避ける)
ナハト:まだまだ!(更に斬りつける)
ディーゴ:くっ!(ギリギリ避ける)
ナハト:もう一丁!(更に斬りつける)
ディーゴ:ううっ!(避けるが体制を崩す)
ナハト:でりゃあ!(更に斬りつける)
ディーゴ:うわっ!(斬撃をナイフで受け止め、仰向けに倒れる)
ナハト:(息を切らせながら)ようやく捉えたぞ。
ディーゴ:(息を切らせている)
ナハト:(息を切らせながら)お前、避けながら反撃の隙をうかがってただろ?避けるのが得意でも、攻撃も考えながらだとどうしても意識のリソースが分散する。だから今回はかわせなかったんだ。
ディーゴ:(息を切らせながらだが、段々と笑いが込み上げてくる)
ナハト:何笑ってんだ?
ディーゴ:お見事・・・と言いたいところだけどよ、足元がお留守だぜ。
0:ディーゴ、ナハトの足首をつかんでいる。
ナハト:っ!俺の足を掴んで・・・なるほど、押されてると見せかけて、これを狙ってたのか。
ディーゴ:俺の魔法の発動条件、覚えてるか?
ナハト:相手に直接触ること、だったか?(舌打ち)下手打っちまったな。
ディーゴ:そういうことだ!(魔法を発動する)
ナハト:ぐっ!(ナハト、うずくまって動けなくなる)
ディーゴ:(立ち上がり)今回は下痢じゃすまないぜ。そこで悶えて(もだえて)るんだな。
ナハト:(苦しみながら)クソが!
ディーゴ:さてと。
テルエス:今度は、僕の番かな?
ゴーリオ:ゴリラリアーット!
兵士1:ぐはっ!
ゴーリオ:くっ!敵が多すぎる!ボノンボ!テルエス様をお守りしろ!
ボノンボ:モンキーック!
兵士2:がはっ!
ボノンボ:倒しても倒しても・・・ダメです!私も動けません!
ゴーリオ:くそお!誰でも良い!テルエス様の元へ!
0:少し間
ディーゴ:覚悟しろ、逆賊テルエス!
テルエス:果たして、本当の「逆賊」は誰なのかなあ?
ディーゴ:黙れ!タングリスニを裏切った罪、その命を持って償え!
テルエス:うん、わかった。
ディーゴ:は?
ナハト:(苦しみながら)お前、何言ってんだ?
テルエス:僕を殺すんでしょ?はい、どうぞ。
ディーゴ:貴様、ふざけているのか?そうか、俺が皇族を殺せないと思っているんだな?
テルエス:別に。だって君のことよく知らないし。
ディーゴ:良いだろう、お望み通りにしてやろう!
ゴーリオ:(同時に)テルエス様!
ボノンボ:(同時に)テルエス様!
ディーゴ:死ねえええええ!(ナイフで突き刺そうとする)
ナハト:っ!
0:少し間
0:ディーゴのナイフはテルエスの眉間の寸前で止まっている。
ディーゴ:(荒い呼吸)
テルエス:どうしたの?
ディーゴ:何故だ、何故かわそうとしない?命が惜しくは無いのか?
テルエス:僕はこんなところでは死なないよ。
ディーゴ:戯言(ざれごと)を!俺がこの刃を押し込めば、貴様は終わりだ!
テルエス:そう?ならやってみなよ。
ディーゴ:ああ、やってやる。やってやるとも!
テルエス:やるが良い。自分が正しいと思うなら。
ディーゴ:正しい!俺は正しい!すべてはタングリスニの為に!
テルエス:本当に?これがタングリスニの為になるか?これがお前自身の為になるか?
ディーゴ:うっ・・・くっ・・・
テルエス:お前のその正義感は、本当にお前自身のものか?誰かに植え付けられたものではなく?
テルエス:わかっているはずだ、自分が間違っていることを。
ディーゴ:だ、黙れ・・・
テルエス:それでも僕を殺せるかい?
ディーゴ:殺す、貴様を殺す!
テルエス:じゃあさっさとやりなよ。
ディーゴ:・・・
テルエス:どうしたの?やりなよ。
ディーゴ:う・・うぅ・・・
テルエス:やれ。
ディーゴ:俺は・・・
テルエス:やれえええええ!!!
ディーゴ:っ!(ナイフを落とす)
テルエス:武器を手放して・・・どうするんだ!(殴る)
ディーゴ:がっ!
テルエス:ふぅっ、これで正気に・・・
ディーゴ:(うめきながら)・・・テルエスを・・・殺さねば・・・ベリリ様の為に・・・
テルエス:・・・戻んないか。
兵士1:(うめきながら)テルエス・・・コロスコロスコロス・・・
兵士2:(うめきながら)タングリスニの為に・・・コロスコロスコロス・・・
ナハト:(苦しみながら)これは、暗示か・・・それとも催眠術?
テルエス:魔道具さ。
ナハト:(苦しみながら)お前、何か知ってるのか?
テルエス:まあね。で、この件で助っ人を頼んでおいたんだけど・・・
ヴェル:お待たせ致しました〜
ナハト:は?ヴェル博士?
テルエス:やっと来たか。
テオ:僕たちに任せてください。
ボノンボ:誰だ?どうして民間人がこんな所へ?
ディーゴ:(苦しみながら)テルエス、テルエス、テルエス、テルエス・・・
テオ:ディーゴさん、待ってて、いま助けてあげるから。
ヴェル:テオさん、あれを!
テオ:はい!
0:テオ、香水の瓶を掲げる。
テルエス:あの香水瓶が例のやつ?
ヴェル:そう!あれこそ、この暗示魔法を無効化する魔道具!
テオ:やあ!
0:テオ、香水瓶を地面に叩きつける。
ボノンボ:瓶が割れてしまいましたが・・・?
ヴェル:あの香水の香りが広がり、それを嗅いだ(かいだ)者の暗示を解くのです!
ディーゴ:う、うぅ・・・
テオ:ディーゴさん!
ディーゴ:・・・あれ、テオ?お前なんでこんな所に?
テオ:ディーゴさん!良かった!
兵士1:私たちは、何をしていたんだ?
兵士2:何故武器を構えている?
ボノンボ:みんな正気に戻ったようです!
テオ:ディーゴさん達はね、暗示に(かかっていたんだ)
ディーゴ:(被せて)って、なんか臭っ!!
テオ:へ?
ディーゴ:いや、めっちゃ臭いんだけど?何これ!?
テオ:ああ、これは魔道具の・・・ホントだ臭っ!!
ゴーリオ:お二人とも、今は臭いなど気にしている場合では・・・ウボッ!これヤバ!くっせえ!!
ヴェル:そう!この魔道具には暗示を解くだけではなく、強烈な臭いを発するという特性があるのです!香水なので。
テルエス:(咳き込みながら)博士はなんで平気なの?
ヴェル:わたし鼻栓してますから。
テオ:ずるい!何で教えてくれなかったんですか!?
ナハト:(苦しみながら)ディーゴの魔法だけでもつらいのに、この臭いは・・・
ティアン:おおっと、なんか取り込んでるね。
モナカ:(男)こりゃ一体どういう状況だ?
ボノンボ:また民間人ですか?一体どうなってるんです?
フーリ:私たちは・・・って臭っ!
ナハト:もうええわ!
0:間
ディーゴ:(鼻をつまみながら)これで魔法は解けたはずだ。
ナハト:(鼻をつまみながら)やっと楽になったぜ。
ボノンボ:良かったですね、ナハト殿。
テオ:(鼻をつまみながら)博士はテルエス様と連絡を取り合っていたんですね?今回の件もテルエス様の依頼だったんでしょ?
ヴェル:それもありますが、個人的興味の方が強いですかねえ。
ボノンボ:お二人には助けられました。感謝申し上げます。
テルエス:(鼻をつまみながら)まさか、こんな所で会うなんてね、フーリ。
フーリ:(鼻をつまみながら)こっちのセリフだよ。また何か悪だくみをしてるんじゃないだろうね?
ボノンボ:フーリ殿、でしたかな?テルエス様への不遜(ふそん)な発言は許しませんぞ。
モナカ:(男)(鼻をつまみながら)まだバオジュン化してるやつはいないみてえだな。
ティアン:(鼻をつまみながら)うん、そうだね。
ボノンボ:テオ殿と博士は、テルエス殿下の頼みでここに来たのだと分かりましたが、お三方(おさんかた)は何故このような場所へ?
ゴーリオ:(鼻をつまみながら)あのさ、ボノンボ。
ボノンボ:何でしょうか、隊長?
ゴーリオ:(鼻をつまみながら)何でお前はさ、鼻をつままなくて平気なの?
ボノンボ:ああ。(深呼吸する)わたし、この臭い、結構好きなんですよね。
ゴーリオ:(鼻をつまみながら)お前あれか、ドリアンとか好きなタイプだ。
0:少し間
ナハト:ようやく臭いも和らいできたな。
モナカ:(男)多分、慣れてきただけだと思うぜ。
兵士1:ディーゴ隊長、私たちはこれからどうします?
ディーゴ:分かんねえ。ただ、もうベリリやビリオンの命令を聞くつもりは無い。
兵士2:そんなことをしたら、反逆者として罰せられますよ!
ディーゴ:テオの話を聞いたろ?あの一騎打ちの日、軍や民衆を操って、暴動を起こしたのはベリリの仕業だったんだぞ。いくら皇族でも、そんな奴に従えるかよ。
ヴェル:とは言え、いまタングリスニで最も権力を持つのはベリリ様。タングリスニはあの方の思うがままです。
ティアン:このままじゃタングリスニはめちゃくちゃになっちゃうよ!何とかしないと!
テオ:まずはこのことを、タングリスニの皆に知らせよう!
ゴーリオ:しかし、それではタングリスニは大混乱に陥るのでは?
ナハト:だが、他に道はない。
テルエス:それにしても、僕の命を狙ってくるなんて。ベリリの奴、ずいぶん過激になったねえ。
ボノンボ:ところで、さっきの質問ですが・・・フーリ殿たちは何故ここへ?
フーリ:ああ、私たちは・・・
ビリオン:(被せて)ディーゴさん、任務を途中放棄するとは、いけませんねえ。
ディーゴ:ビリオン様!
ビリオン:貴方には相応の処罰を・・・なんか臭っ!
テオ:そのくだりもう良いよ!
0:少し間
ティアン:ビリオンって、ベリリ殿下の側近の?
ヴェル:そうですねえ。盛り上がってきました!
テルエス:ビリオン、久しぶり。僕の首を狙ったんだって?なかなか愉快なことをするじゃないか。
ビリオン:(咳込みながら)逆賊には当然の処罰です。
テオ:何を言ってる!真の逆賊は、ベリリ殿下と貴方じゃないか!あの一騎打ちの日、魔道具を使って何をしたのか、調べはついているんだ!
ビリオン:貴方は誰です?私にそんな口を利いて良い身分なのですか?
モナカ:(男)この期に及んで身分なんか関係ねえぞ。それともう一つ、テメェには聞きたいことがあるんだよ。
ビリオン:どんな質問であれ、答える義理はないと思いますが?
フーリ:そうはいかない、絶対に答えてもらうよ!
ディーゴ:ビリオン様、悪いがアンタを捕まえさせてもらう。
兵士2:・・・これが本当に正しいのか分かりませんが、今はディーゴ隊長に従います。
兵士1:ビリオン様、申し訳ありません。拘束させ頂きます(ビリオンに近づく)
ビリオン:お断りします。いま捕まるわけにはいかないんでね。
ティアン:逃げられると思うの?多勢に無勢って言う言葉、知らないのかな?
フーリ:えっ?
ヴェル:どうかしましたか?
フーリ:・・・ううん、何でもない。
ビリオン:ご心配には及びません。私には、(爆弾を取り出し)これがありますから。
ゴーリオ:あれは!?
ボノンボ:爆弾だ!
ビリオン:そら(爆弾を投げる)
ゴーリオ:伏せろ!
0:爆弾から大量の煙が噴き出される。
ディーゴ:これは、煙幕?
ナハト:爆弾じゃなくて、スモークグレネードだな。にしては煙が薄いようだが。
兵士1:(咳込む)
フーリ:煙・・・
タミア:(回想)そう言えば、あの日はずいぶん霧が濃かった気がするなあ。
フーリ:っ!みんな!この煙を吸っちゃダメだ!!!
ゴーリオ:え?
兵士1:(段々と咳がひどくなり)
兵士2:おい、大丈夫か?
兵士1:ウ・・・ウグ・・・
ディーゴ:お前、肌の色が紫に?
兵士1:ウガアッ!(ディーゴに襲い掛かる)
ディーゴ:うおっ!(よけながら)お前、どうしちまったんだ?
テルエス:この症状、まさか「バオジュンZ666」?
フーリ:発症するまでが早い!
兵士1:ガアッ!(兵士2に噛み付く)
兵士2:(噛みつかれ)ううっ!か、噛まれた?
モナカ:(男)まずい。
兵士2:ウ・・・ウウウ・・・
テオ:この人も紫色に!
ティアン:間違いない!バオジュンZだ!
ヴェル:なるほど。煙を吸うか、感染した人に噛まれると、紫色の化け物になってしまうわけですか。
テオ:何てヒトだ・・・その人たちはタングリスニの兵士でしょう?どうして味方にそんな真似ができるんですか!?
ビリオン:彼らはただの駒ですから。
ディーゴ:貴様!
ビリオン:おっと!こちらにはまだ煙が充満しています。来ない方が賢明ですよ?バオジュンになりたくはないでしょう?
ディーゴ:くっ!
ビリオン:では、私はこの辺りで失礼致します。皆さんは最後まで楽しんで行ってください。
モナカ:(男)待ちやがれ!
フーリ:モナカ待って!まずは感染者に解毒剤を打たないと!
モナカ:(男)そうだな、クソ!
ヴェル:ほう?解毒剤があるのですか?
フーリ:うん!早い段階で投与すれば感染者は回復するし、事前に打っておけば抗体ができて、予防にもなるんだ!
ディーゴ:早いとこ頼む!こいつらを元に戻さねえと!
フーリ:分かっている!
ティアン:それは私がやるよ!解毒剤の注射なら前にも打ったしね。
フーリ:え?
ティアン:二人はビリオンを追って!
モナカ:(男)確かに、ティアンになら任せられるな。
ティアン:急がないと!
フーリ:わ、わかった!(ティアンに解毒剤を渡す)念の為10本渡しておく。早めに投与してあげて。
ティアン:うん!
モナカ:(男)フーリ、急ぐぞ!ビリオンを逃がしちまう!
フーリ:ああ、行こう!
0:モナカ、フーリ、ビリオンを追って煙の中に消える。
ナハト:あの二人、煙の中に突っ込んで行ったが大丈夫なのか?
ティアン:大丈夫だよ。二人には抗体があるからね。
兵士1:(同時に)グアアッ!
兵士2:(同時に)グルアッ!
ディーゴ:(兵士を抑えながら)おい!よく分からんが、その薬でこいつらを治せるんだろ?早いとこ頼むぜ!
ティアン:ちょっと待って。まだフーリとモナカの気配がする。
ナハト:は?
ゴーリオ:ティアン殿、何を仰っているのです?
ティアン:・・・うん、もう大丈夫。二人は充分に離れた。
テオ:早く薬を!
ティアン:うん、そうだね。早く解毒剤を打たないと(自分に注射を打つ)
ヴェル:おやあ?
ディーゴ:まず自分から打つのかよ!
ティアン:化け物になりたくはないからね。
ゴーリオ:と、とにかく、早く感染者にも薬を!
兵士1:(同時にうなる)
兵士2:(同時にうなる)
ティアン:・・・
テルエス:なーんか、嫌な予感がするよね。
ヴェル:貴方、以前にもその注射打ったご経験があるんですよね?
ティアン:うん、そうだよ。
ヴェル:その時、ご自分にはその解毒剤を打たなかったんですか?
ティアン:ううん、打った・・・らしいよ。
ボノンボ:らしい?・・・まるで他人事のような・・・
ナハト:はあっ!(ティアンに斬りかかる)
ティアン:おっと(斬撃をかわす)
ゴーリオ:ナハト殿!?
ティアン:危ないなあ。急に斬りかかってこないでよ。当たらなかったから良いけど。
テオ:ナハトさん、一体どうして?
ヴェル:そういうことですか・・・猫耳さんの胸元をよく見てごらんなさい。
ボノンボ:胸元・・・っ!
ティアン:おっと。なるほど、さっきの攻撃は服を斬るのが目的だったのか。
ディーゴ:黒水晶のペンダント。声を変える魔道具か!
テルエス:こいつはティアンじゃない、偽物だ!
ティアン:ピンポーン。
ディーゴ:くそっ!解毒剤をよこしやがれ!(ティアンに襲い掛かる)
ティアン:あげないよん。(かわす)
ディーゴ:ちっ!
ナハト:ディーゴ、よせ。それ以上奴に近づくな!
ディーゴ:何で・・・っ!
ティアン:どうしたの?こっちに来ないの?
ゴーリオ:煙のある方へ逃げられたか。
ボノンボ:卑怯な!
ティアン:さてと、私も失礼するよ。この解毒剤、ビリオン様に届けなきゃいけないんでね。
ヴェル:貴方、最初からそれが目的だったんですね。
ティアン:そゆこと。じゃあね!(煙の中へ消える)
兵士1:ウガアッ!
ゴーリオ:くっ!
兵士2:ガアッ!
ボノンボ:っ!これからどうしますか?
テルエス:どうすることもできないよ。風向きが変わらない内に、ここを離れるんだ。
ディーゴ:待てよ!コイツらはどうすんだ!?
ナハト:はあっ!(兵士を斬る)
兵士1:ギャハッ!(絶命)
ディーゴ:ナハト!?
ナハト:せやあ!(兵士を斬る)
兵士2:ゲフッ!(絶命)
ディーゴ:てめえ!何しやがる!
ナハト:・・・他に方法があるか?
ヴェル:残念ながら、これが最善と思われます。
テオ:そんな・・・
ナハト:他に煙を吸ったやつは?
ボノンボ:・・・いないようです。
ナハト:よし。さっさと移動するぞ。
ゴーリオ:イエッサー・・・
ナハト:ぐずぐずするな!
ディーゴ:・・・
ナハト:ディーゴ!
ディーゴ:ちくしょう!分かったよ!
0:間
0:森の中 ビリオンを追うモナカとフーリ
ビリオン:ふふふ、やはりあの二人が追ってきましたね。「ティアン」君、首尾よくお願いしますよ。
モナカ:(男)(走りながら)くそ!あいつ、足早えな!
フーリ:(走りながら)それだけじゃない。息も全然切れてないよ。
モナカ:(男)(走りながら)何でだ?あいつ、アンドロイドなのか?
フーリ:(走りながら)それは、分からないけど・・・
ビリオン:さて、この辺りですね。(草むらに突っ込む)
モナカ:(男)(走りながら)っ!アイツ、草むらに突っ込んだぞ?
フーリ:(走りながら)見失わないで!
0:少し間
モナカ:(男)(息を整えながら)どこ行きやがった!?
フーリ:(息を整えながら)確かにこっちにきたと思ったけど。
モナカ:(男)・・・何の音だ?
フーリ:え?
ビリオン:(バイクで飛び出しながら)イィィヤッホーーー!!!
モナカ:(男)うおっ!なんだありゃあ!?
フーリ:確か、マリシ製の「バイク」って言う機械仕掛けの乗り物だよ!
ビリオン:さあ、これに追いつけますか!?
モナカ:(男)早すぎる。足で追い付くのは無理だな。
ビリオン:ハーハッハッハッ!
フーリ:どうしたら・・・
0:マズダー、車に乗って颯爽と登場
マズダー:お二人さん、困っているみたいだな。
モナカ:(男)アンタは?
フーリ:その乗り物、自動車だよね?
マズダー:知り合いを近くまで送って帰るところなんだ。良かったら乗っていくかい?急いでるんだろ?
モナカ:(男)ありがたいけど、なあ?
マズダー:俺が信用できない?なら辞めとくか?
フーリ:(車に乗り込む)
モナカ:(男)おい、フーリ?何乗ってんだよ?
フーリ:今は迷っている暇はないよ!それに、これは勘だけど、この人は信用できる気がする。
モナカ:(男)・・・選択肢は無しか。しゃーねえな。(車に乗り込む)
マズダー:俺はマズダーだ。
フーリ:私はフーリ。
モナカ:(男)モナカだ。
マズダー:ぶっ飛ばしていくからな!しっかり掴まってろよ!
0:間
ゴーリオ:間もなく「コングス」の駐留拠点です。そこまで行けば一安心です。
ディーゴ:何が一安心だ。何もかもめちゃくちゃじゃねえか。
テオ:ディーゴさん・・・
テルエス:ディーゴ、君は操られていたとはいえ僕の命を狙った。本来なら、極刑に処されても文句は言えない立場だ。
ディーゴ:・・・
テオ:テルエス殿下!今そんなことを言わなくても・・・
テルエス:まあ、僕の言うことを聞くなら見逃してやらんでもないけどね。
ディーゴ:何をすれば?
テルエス:今回の事件の真相を究明すること。
ディーゴ:・・・え?
テルエス:僕も力を貸す。できるかな?
テオ:テルエス殿下・・・
ディーゴ:感謝する。
ナハト:お優しい皇族様ですこと。
テルエス:本当に君は生意気だよねえ。
ボノンボ:あれです!あれが拠点です!ボノンボだ、テルエス殿下をお連れした!
ヴェル:返事がないようですが?
ボノンボ:でも扉が開きます。さあ皆さん・・・
バオジュン:(砦から飛び出し)ギャァッ!
ボノンボ:っ!
ゴーリオ:ボノンボ、危ない!・・・ぐああ!
ボノンボ:隊長!
ナハト:おらあっ!(バオジュンを斬りつける)
バオジュン:グギャア!(絶命)
テオ:なんでここにバオジュンが?
ヴェル:(砦の様子を確認し)どうやらこの砦には生きている人間はいないようです。バオジュンの巣窟(そうくつ)になってますね。
ディーゴ:クソッ!ビリオンの罠か!
ボノンボ:隊長!隊長!
ゴーリオ:ボノンボ、無事か・・・良かった。
ナハト:ゴーリオ、お前・・・噛まれたのか?
テオ:そんな!
ボノンボ:お願いします!隊長を助けてください!
ゴーリオ:グウウウ・・・
ヴェル:肌が紫色に・・・
ボノンボ:誰か・・・隊長を助けてよお!!!
ディーゴ:こうなったら、さっきの偽物とっ捕まえて解毒剤ぶんどってくるしか・・・
ナハト:間に合うわけないだろ・・・
テルエス:ナハト、剣を貸して。
ナハト:は?
ゴーリオ:グウ・・・ガア・・・お、俺を・・・
ディーゴ:どうするんだよ!
テルエス:っ!(ゴーリオの胸に剣を突き刺す)
ゴーリオ:ガハッ!
ボノンボ:っ!!!
ボノンボ:テ、テルエス殿下・・・何を・・・?
テルエス:やるべきことを、やったまでさ・・・
ナハト:ゴーリオがまだヒトである内に、終わらせてやったのか。
ゴーリオ:ボノンボ・・・
ボノンボ:隊長!
ゴーリオ:コングスのことは、頼んだぞ・・・
ボノンボ:そんなこと言わないで下さい!ご家族のところに帰るんでしょ!?
ゴーリオ:ああ・・・そうだな・・・
ゴーリオ:ルイジ・・・エイン・・・すまない・・・もう・・・帰れない・・・みたいだ・・・(絶命)
ボノンボ:隊長?・・・隊長ーーー!!!
テルエス:・・・
0:間
0:タングリスニ ベリリ邸宅前
テオ:本当に良いんだね、ディーゴさん?
ディーゴ:ああ。軍をクビになろうが、捕まって牢屋に入れられようが構わねえ。ベリリ殿下・・・ベリリの野郎をこのままにしておけるか。
テオ:うん、そうだね。
ディーゴ:お前まで着いてくることないんだぞ、テオ。
テオ:僕だって、タングリスニの国民として、皇族の暴挙は見過ごせないよ!それに・・・
ディーゴ:それに?
テオ:ディーゴさんには、僕が付いていないとダメだからね。
ディーゴ:ケッ、言ってろ。
テオ:(笑う)
フーリ:テオ、ディーゴ。
ディーゴ:っ!
モナカ:(男)久しぶり・・・でもねえか。
ディーゴ:フーリ、モナカ。お前ら、何でここに?
テオ:偶然、じゃないですよね。この建物が何か、ご存知でしょう?
フーリ:うん。ベリリの屋敷、だよね。
モナカ:(男)俺たちもベリリに用があってな。
ディーゴ:ビリオンはどうなった?
フーリ:・・・ダメだった。逃がしてしまったよ。
テオ:そうですか・・・
モナカ:(男)ティアンのこと聞いたぜ。すまなかったな、俺たちが偽物だと気づいていれば・・・
ディーゴ:・・・
フーリ:私たちが一緒でも、構わないかな?
ディーゴ:・・・好きにしろ。
テオ:行きましょう。
0:間
衛兵:し、侵入者!侵入者だー!
ディーゴ:うるせえ!
衛兵:ひっ!・・・って、お前、ディーゴか?
ディーゴ:そうだが?
衛兵:何考えてるんだ!?これは反逆行為だぞ?
ディーゴ:分かってるよ。
モナカ:(男)俺たちはどうしてもベリリに会わなきゃならないんだ。
衛兵:何だと?
ディーゴ:分かったら、てめえは寝てろ(当身を入れる)
衛兵:うっ!(気絶)
テオ:ベリリ様の居室は?
ディーゴ:その奥の扉だ。
フーリ:この中に、ベリリが。
モナカ:(男)良いか?扉を開けるぞ。
ディーゴ:ああ。
0:扉を開け中に入る
0:部屋の奥、椅子に座る一人の皇族
ベリリ:・・・
テオ:あの椅子に座っている人が、ベリリ様で間違い無い?
ディーゴ:多分。俺も顔を見たのは初めてなんだ。
ベリリ:・・・
モナカ:(男)おいサイコ野郎!
ベリリ:・・・
モナカ:(男)てっきり逃げ出してると思ったぜ。俺たちがここまで来るとは思わなかったか?ああっ!?
ベリリ:・・・
モナカ:(男)てめえ!何とか言いやがれ!
テオ:モナカさん、落ち着いてください。
ディーゴ:ベリリ!アンタのやったことは、到底許されることじゃねえ。皇族だろうが関係ねえ、罪は償ってもらうぜ!
ベリリ:・・・
テオ:あの、ベリリ殿下?聞こえていますか?
フーリ:ビリオンは・・・今どこにいるの?
ベリリ:・・・
モナカ:(男)コイツ、マジでふざけ(やがって)
ベリリ:(被せて、大声で)私は!!!
フーリ:っ!?
モナカ:(男)びっくりした。いきなりデカい声出すなよ。
ベリリ:タンッ、グリッ、スニッ、が皇族!ベリリ、で、あーる!!!
ディーゴ:・・・はあ?
モナカ:(男)んなことは分かってんだよ!
ベリリ:私は!!!タンッ、グリッ、スニッ、が皇族!ベリリ、で、あーる!!!
フーリ:・・・
テオ:え?え?
モナカ:(男)てめえ、舐めてんのか!(ベリリに掴みかかる)
ベリリ:であーる!であーる!であーる!であーる!であーる!・・・
モナカ:(男)お前・・・イ、イカれたふりして誤魔化そうってのか?
フーリ:待ってモナカ。多分、演技じゃないと思う。
ベリリ:あーる!あーる!あーる!あーる!あーる!・・・
フーリ:どいて、モナカ。
モナカ:(男)お、おう。
ベリリ:(弱々しく)あーる、あーる、あーる、あーゆ、あーゆ・・・
フーリ:瞳孔が開いて、脈拍も早い、・・・それにこの腕の傷、自分で掻きむしったのか?
テオ:病気なんですか?
フーリ:病気というよりも・・・麻薬中毒者みたいに見えるんだけど?
ディーゴ:はあ?タングリスニの皇族が、麻薬中毒だと?
ベリリ:(急に吹き出して笑い出す)
モナカ:(男)これが本当に皇族ベリリなのか?偽物じゃねえのか?
テルエス:いや、それは本物のベリリだよ。
ディーゴ:テルエス殿下!?どうしてここへ?タングリスニに来て平気なのか?
テルエス:来たくはなかったけどね、今回は仕方ないよ。
テルエス:そいつは確かに皇族ベリリだ。僕も数えるほどしか会ったことはないけど、間違い無い。もちろん、前は薬漬けじゃ無かったけどね。
モナカ:(男)一体何がどうなってんだ?コイツが悪の親玉なんだろ?
テルエス:フーリ、ベリリはどれくらい前からその状態だったの?
フーリ:はっきりとは分からないけど、かなり長期間に渡って大量の麻薬を接種してたみたいだ。正直、とっくに死んでてもおかしくない状態だよ。
テルエス:この様子じゃ、まともに知性が働いているとは思えない。指示を出すなんて無理だろう。バオジュンZに関する一連の事件、どうやら黒幕は別にいるね。
ディーゴ:一体誰が?
テオ:それを知ってる、又は、その黒幕本人かも知れないヒトは・・・
ディーゴ:・・・ビリオンか。
テルエス:どうやら、ビリオンを探し出す必要があるみたいだね。
フーリ:・・・
0:間
0:リーベル 軍人墓地
ボノンボ:・・・
ナハト:ボノンボ。
ボノンボ:ナハトさん。隊長の埋葬(まいそう)を手伝って下さり、ありがとうございました。すいません、色々あってお疲れのところ。
ナハト:何言ってんだ。お前こそロクに休んで無いだろ。
ボノンボ:良いんです。忙しくしてた方が、気が紛れますから。
ナハト:・・・
ボノンボ:これから、隊長の奥様に会ってきます。今後のこと、相談に乗ってあげないと。
ナハト:辛いな。
ボノンボ:隊長には、お世話になりましたから。
ナハト:俺にもっと力があればな。
ボノンボ:え?
ナハト:俺にもっと力があれば、俺がもっと上手くやっていれば、ゴーリオを死なせずに済んだ。
ナハト:お前、そう思ってるだろ?
ボノンボ:・・・
ナハト:俺は「戦争屋」なんて呼ばれてる。その二つ名に違わず(たがわず)、数多くの戦場を渡り歩いてきた。敵も味方も、たくさんの連中が死んでいくのを見てきた。
ボノンボ:ナハトさん・・・
ナハト:そして、生き残ってしまった奴、そいつらの背中も、何度も目にしてきた。みんな、何か重たいものを背負ってやがるんだ。今のお前みたいにな。
ボノンボ:・・・
ナハト:俺はな、そんな背中に、いつもかけてやる言葉があるんだ。月並みだけどよ。
ボノンボ:それは・・・
ナハト:「お前のせいじゃ無い」
ボノンボ:っ!!!
ナハト:お前の、せいじゃ無い。
0:少し間
ボノンボ:・・・私は・・・
ナハト:何も言うな。最後、ゴーリオに言われただろ、「コングスを頼む」って。
ナハト:受け継いでいけ、ゴーリオの意思を。
ボノンボ:・・・はい!
ナハト:それで良い。
ナハト:それからな、テルエスだが・・・
ボノンボ:分かっています。テルエス殿下を恨んでなどいません。殿下は、隊長のことを想って、あの時剣を手にされたのでしょう。
ナハト:分かっているなら良いんだ。
ボノンボ:テルエス殿下も辛かったでしょうね。
ナハト:あれがアイツなりの、「皇族としての務め」だったのかもな。
0:少し間
ナハト:実はな、しばらくタングリスニに拠点を移すことにしたんだ。
ボノンボ:タングリスニに?
ナハト:ああ。ディーゴのことを手伝ってやろうと思ってな。
ボノンボ:今回の事件の真相を明らかにする、ですか。
ナハト:ディーゴから連絡があってな、どうやらベリリは黒幕じゃなかったらしい。
ボノンボ:聞きました。一体どういうことなのか・・・
ボノンボ:私たちにできることがあれば、言ってください。何でも協力します!
ナハト:ああ。誰の仕業にせよ、きっちり落とし前はつけさせてやる!
0:間
0:タングリスニ、軍部会議室
ディーゴ:ナハト、来たか。
ナハト:しばらく世話になる。
ディーゴ:ああ。
フーリ:ナハト、無事に着いたみたいだね。
ナハト:フーリ、そういやアンタもタングリスニに越してきたんだって?
フーリ:うん。出戻りになるんだけどね。
ディーゴ:アンタがいてくれて心強いよ。
ナハト:やっぱりバオジュンZのことが気になるか。
フーリ:それも勿論ある。でももう一つ、私には確かめなくちゃならないことがあるんだ。
フーリ:(M)(そう、私は確かめなくちゃならない。あの時、アイツが・・・)
0:間
0:回想 ビリオンとのカーチェイス
モナカ:(男)おっさん、もっと飛ばせ!全然追いつけないじゃねえか!
マズダー:うるさい!これでも全速力なんだよ!
ビリオン:まさか自動車で追って来るとは思いませんでしたが、逃げ切れそうですね。
ビリオン:どうやら、おあつらえ向きのコースのようですし。
フーリ:見て!ビリオンが崖沿いの方に行くよ!
モナカ:(男)かなり道が細いな。おっさん、通れるか?
マズダー:くっ!・・・ギリギリだな。少しでもハンドル操作を誤ったら、崖から真っ逆さまだ。
モナカ:(男)おっさん、慎重にな。安全運転だぞ。
ビリオン:さあ、着いてこれますかね!
モナカ:(男)ビリオンのやつ、スピードを上げやがった!おっさん、飛ばせ!
マズダー:どっちだよ!
モナカ:(男)安全運転でぶっ飛ばせ!
マズダー:無茶言うな!
ビリオン:更に・・・これはどうですか!?
フーリ:なっ!
モナカ:(男)信じられねえ。アイツ、バイクで崖を降って(くだって)やがる。
フーリ:これじゃどうやっても追いつけないよ!
マズダー:・・・二人とも、シートベルトを。
モナカ:(男)・・・へ?
フーリ:あの、マズダー?おかしなこと考えてないよね?
マズダー:・・・
モナカ:(男)おっさん?無茶はしなくて良いからな?
フーリ:そ、そうだよ?最悪追いつけなくても良いからさ。ここは、安全(運転で)
マズダー:(被せて)成せばなる、成さねばならぬ、何事もお!(崖から落ちる)
フーリ:やっぱりいい!!?
マズダー:この程度の崖、走り抜いて見せる!
モナカ:(男)これは走ってんじゃねえ!落ちてるって言うんだよ、このバカ!
フーリ:助けてえええ!
0:少し間
ビリオン:何という無茶を。だが、無駄なことです。
マズダー:クソッ!ここまでやっても追いつけねえのか!
フーリ:どうしたら。
モナカ:(???)代われ。
フーリ:モナカ?
モナカ:(???)はっ!(車から飛び降りる)
フーリ:嘘っ!?
マズダー:アイツ、飛び降りやがった!
ビリオン:何だと!?
フーリ:すごいスピード!あれなら・・・
モナカ:(???)追いつく・・・ハアッ!(かぎ爪でビリオンを斬りつける)
ビリオン:グハァッ!(斬られた衝撃でバイクごと落下する)
マズダー:攻撃を当てやがった!すげえなアイツ!
フーリ:ビリオンの奴、バイクごと地面に激突した!
マズダー:こっちももうすぐ地上だ!踏ん張れ!
フーリ:(落下の衝撃が襲い)ぐうっ!
マズダー:う、うぅ・・・無事か?
フーリ:無事・・・では無いけど、生きてるみたい。
マズダー:そりゃ何よりだ。(舌打ち)車の方はエンジンがやられちまった。
フーリ:モナカは?
モナカ:(???)大丈夫だ。
マズダー:あの高さからダイブして何で平気なんだ?
ビリオン:(立ち上がりながら)グゥウウウ・・・
マズダー:アイツも生きてんのかよ!化け物だらけだな!
ビリオン:おのれ・・・
モナカ:(???)(M)(コイツ・・・あの負傷で何故血を流していない?それに、あの顔の傷・・・傷の下に、別の顔があるようだ)
フーリ:あの胸のところ、黒い水晶が埋め込まれている。あれは魔道具?
ビリオン:私の・・・
フーリ:モナカ!来るよ!
モナカ:(???)っ!
ビリオン:邪魔をするなあ!(モナカを殴り飛ばす)
モナカ:(???)ぐうっ!(壁に激突する)
マズダー:一撃で壁にめり込ませやがっただと!?何て怪力だ!
フーリ:モナカ、大丈夫?
モナカ:(男)いってええ!!!壁に激突する寸前に入れ替わんなよ!
ビリオン:っ!(走り去ろうとする)
フーリ:待って!(追いかける)
モナカ:(男)フーリ、おっさん!追ってくれ!俺はしばらく動けそうにねえ!
マズダー:わかった!
フーリ:(走っている息遣い※少し長め)
ビリオン:っ!ここは・・・
フーリ:(息を切らせながら)そこから先はまた崖みたいだね。下は海だけど、その高さから落ちたら助からないよ。
ビリオン:・・・
フーリ:君やベリリは、バオジュンZを改造してどうするつもりだ?あれがどれほど恐ろしい兵器か分からないのか?
ビリオン:・・・
フーリ:悪いことは言わない、バオジュンZを使うのは止めるんだ!
フーリ:このままじゃ、大きな悲劇を生むことになる!頼むから・・・
ビリオン:・・・でも、薬作りには、理論よりも実践が大事、でしょ?
フーリ:・・・えっ?
ビリオン:そうですよね・・・フーリ先生?
0:少し間
フーリ:「先生」?私は、君に「先生」なんて呼ばれる筋合いは無い!
フーリ:第一私は、「先生」と呼ばれるのが・・・?
マズダー:どうした?
0:少し間
フーリ:(M)『そういえば、いつからだろう。私が「先生」と呼ばれるのが嫌いになったのは』
マズダー:フーリ?
フーリ:(回想)『良い加減、その「先生」って言うの、辞めてくれないかな?』
0:少し間
フーリ:(回想)『君は私の可愛い一番弟子なんだから』
0:少し間
ビリオン:またお会いしましょう!(崖から飛び降りる)
マズダー:あっ!
マズダー:クソッ、飛び降りやがった!
フーリ:(M)『そうだ、思い出した。居たんだ。私のことを「先生」と呼ぶ奴が、一人だけ』
マズダー:(崖の下を確認し)消えやがった。ここから落ちて生きてるはずは無いが・・・
フーリ:嘘だ・・・そんなはずない。
マズダー:フーリ?
フーリ:だってアイツは・・・死んだんだ。
0:間
0:回想終わり タングリスニ会議室
フーリ:(M)(確かめなくちゃ、ビリオンの正体を)
0:少し間
0:テルエスが会議室に現れる
テルエス:みんな、揃っているようだね。
ディーゴ:・・・
ナハト:・・・
フーリ:・・・
テルエス:それじゃあ・・・始めようか。
完
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