『熱砂のタマゴ』
作:SuiさんかNa
(1:1:3) ⏱40分
【登場人物】
ティアン
大陸を旅する獣人。
各地の状況・人物に明るい。
自分の知識外のタマゴの話に興味を持ち、タマゴ探しに協力するも大変な目に…
双剣を使いであり、その腕前は確かなようだ。
ハンペン
背中に大きな卵の殻を背負ったエルフ
タマゴコレクターを自称し、その知識は確かなもの。
好きなもの(タマゴ)に目が無いため 先走ってしまう事もしばしば…
棍使いではあるが、今回バトル無しのため未出…
寝言でも「タマゴ」発言をする根っからのタマゴ好き。
ロイ
ちょっと暗く 無口なエルフの少年
その性格とは裏腹に 見た目は筋肉質でかなりゴツい。
人と関わることが苦手だが、繋がりを求めてタマゴ探しに参加。
正中洞観眼(せいちゅうどうかんがん)と言う相手の動きの先読みするスキルを駆使し、格闘で相手を制する。
基本、身を守るためにしか戦わないが…今回は…?
本人曰く「おねぇさん!大好き!」だそうです。
アイシャ
マリシ軍部の格闘脳筋エルフ
バトルマニアで事ある毎にバトルを申し込むが強すぎるがあまり拒否される事が多いようだ。
柱を投げ その上に乗って移動すると言う常識外れの移動方法と怪力を持つ。
ハルト曰く、アイシャが本気で人を殴ったら粉になり、地面を殴れば地形が変わるそうだ。
語尾に「アル」をつけるエセ中華娘。
ハルト
マリシ軍部の諜報部員
感知と速さと情報収集に優れた人物ではあるが、何かにつけて巻き込まれる事が多い。
心や記憶を読み、また盗むことも可能だが その能力は他人には言っていない。
常識人であり生物学にも詳しいが、周りに常識外の人物が多すぎる事が悩みの種…
戦闘は格闘戦を主にしているが、できれば戦いたくはない。
本人曰く「俺はバトルには向いていない」らしい。
【本編】
砂漠に彷徨う影一つ。
ティアン:
「ちくしょう…なんでこうなったかなぁ…人二人を引いて…」
ティアン:(N)
砂漠で道に迷い、一人は脱水症状、一人は足を槍で貫かれ負傷中…
ティアン:
「はは…笑えない… 空から槍が降ってきたって事は…マリシ軍か?
確かに結果からみればマリシへの不法入国をしたわけだけど…
夜に紛れて見失ったか? 追っ手の気配は…無しか…」
ティアン空を見上げる
ティアン:
「俺が何したってんだ! ふざけんな! 出てこい! ぶちのめしてやる!
…虚空に響くは我が言葉のみ…ってか…
はは…怒りをぶつける相手もいない…笑えない…」
ティアン:(N)
マリシの攻撃だと思っている事が勘違いだったと言う事を この時の私は知らない。
そして、どことも分からず無意識に放った殺気が 自分たちを救った事も…
この状況と、この後の展開を話すには、昨日 彼らとの出会いから語らねばならないだろう。
時は遡り昨日の昼過ぎ。
バルナの街中広場にて…
ハンペン:
「さぁさぁ、寄ってらっしゃい見てらっしゃい!
陸に海に山に空! ありとあらゆるタマゴを見てきた この俺が!
最高のタマゴってやつを教えてやるぜ!」
ティアン:(N)
なんだ? 物売りか?
ハンペン:「単なるタマゴも もちろん美味い。
だが世の中は広い! 珍しいタマゴの数々を見せてやるから、目ん玉かっ開いて見てやがれ!
こいつは深海の水晶エビのタマゴだ青く輝くさまは まるで宝石だ。
赤く輝く大粒魚卵は海神鮭(かいじんじゃけ)のタマゴ、見てみろ 魚卵なのに鶏卵ほどもある迫力を!
海燕(うみつばめ)のほんのり青いタマゴは爽やかだし、海峡(かいきょう)トカゲの少し透けたタマゴも魅力的!
森の賢人カトラリーオウムのタマゴは黄色く輝く。
まだまだ食べていないタマゴもあるけれどよ! タマゴがあれば西へ東へ!
タマゴコレクター、ハンペンとは俺の事だ!」
ティアン タマゴに手を伸ばす
ティアン:
「へー、タマゴにもいろいろあるんだ…で、これいくらで買えるの?」
ハンペン手を払いのけながら
ハンペン:
「バッキャロゥ! 勝手に触んじゃねぇ!」
ティアン:
「えぇ!? 何で!? 売ってるんだろ!?」
ハンペン:
「ちっちっち…こんな貴重品売る訳が無ねぇだろ!」
ティアン:
「じゃぁ、何でこんな所にタマゴ広げてんだよ!?」
ハンペン:
「よくぞ聞いてくれた!
そもそもタマゴは自らの力で手に入れてこそだ!
だが次に狙うタマゴは、俺一人の力で入手するには骨が折れそうなんだ。
だからこそ! 俺と一緒にタマゴ捜索のお願いをするためにここに居るんだ。
報酬は最高のタマゴ、これを逃せば二度と食べられないかもしれないぜ?
さぁ! 我こそはと言う者は 俺の下へ集うのだ!」
間
ハンペン:
「…で、残ったの二人だけかぁ…なんでだよ!」
ティアン:(N)
そりゃ報酬がタマゴだけで あんな所に行かないって…
まぁ私は面白そうだから行くけどさ…
…その後、簡単な自己紹介を済ませ…
ハンペン:
「お前たちは なんでタマゴを求めるんだ?」
ロイ:
「…僕は…繋がりの中で 求める物が…」
ハンペン:
「タマゴだな!?」
ロイ:
「…チガウ… それは丸くて揺れる…」
ハンペン:
「タマゴだろ!」
ロイ:
「チガウ… 生きとし生ける者の希望…」
ハンペン:
「もうタマゴで良いだろ、決定!」
ロイ:
「…いや…ちが…」
ハンペン:
「タマゴ探してりゃ 暗そうなにーちゃんの探してる物も見つかるってもんよ!」
ロイ:
「そう…かな…」
ハンペン:
「そうだよ!
そう信じてるやつにしか探し物は見つからないものなんだって!
…で…そっちの獣のにーちゃんは?」
ティアン:
「面白そうだから…かな。」
ハンペン:
「ならば最高のエンタメを見せてやるぜ! 向かうはマリシの砂漠! 目標は砂漠の輝く黒タマゴ、通称『オニキスエッグ』!」
ティアン:
「え…ちょっと!? 砂漠に行くんなら準備とかは どーすんだよ!?」
ハンペン:
「最低限の水と食料は常に一定数持ち歩いているからな、このまま向かって問題なしだ!
大丈夫、砂漠の入り口でのタマゴ探しだ、危険はねーって!」
ロイ:
「…うん…大丈夫… 何かあったら僕が守る!」
ハンペン:
「…つー事で! 行くぞ暗そうなにーちゃん!」
ティアン:
「何という無策! 水だけでも買い足して追いかけるか…」
ティアン:(N)
…てなことがあってマリシの砂漠までやってきた私たち…
だが当の本人ハンペンはすぐに後悔することになる。
昼の砂漠
ハンペン:
「暑い…迷った…ここどこだ…?」
ロイ:
「…ここ…キツい…」
ティアン:
「水は大切に飲んでよ? 無くなったら死ぬから。
それまでに目的云々は別として 砂漠から抜け出さないとなんだよね…」
ティアン:(N)
昼の暑さ、そして夜の極寒
夜の砂漠
ハンペン:
「夜は寒ぃなぁ… んで…なんで獣のにーちゃんは平気そうな顔してんだよ?」
ティアン:
「まぁ…慣れと言うか何というか…色んな所を旅してきたからかなぁ…
そんな事よりも今は星の向きからでも方角を割り出して帰る事を最優先に考えないとだよ。
今は目的のタマゴを見つけるよりも 無事に戻る事を目指さないとだからねぇ。」
ロイ:
「…ごめん…空が…何かおかしい…」
ハンペン:
「おかしいって何が?」
ロイ:
「あんな位置に赤い星は集中しない。
雲もない…と言う事は…空に…何かいる!」
ティアン:(N)
次の瞬間 一本の槍が空から落ちてくる。
ハンペン:
「おわぁ! 何だ!? 槍!? どうってんだ!?」
ティアン:(N)
空から迫る槍は一本ではなく…その後無数に降り注いだ。
ロイ:
「…これ…何かの攻撃…かも!」
ティアン:(N)
確かに ここはマリシの国内、自分たちは不法入国者と言う扱いになるのかも知れない。
だからって、いきなり攻撃してくるってのはどうなんだよ!
ハンペン:
「水のボトルが!」
ロイ:
「…ここから逃げないと…」
ロイの足に槍が刺さる
ロイ:
「…ぐっ…ッ!」
ハンペン:
「お前、足に刺さってんじゃねぇかよ!」
ロイ:
「…大丈夫…これくらい…っ!」
ハンペン:
「暗そうなにーちゃん…!」
ティアン:
「ロイは私が運ぶから! この場からの退避を最優先だ!」
ティアン:(N)
私達は水を失い、そして朝が来た。
ロイは傷つき倒れ ハンペンは暑さにやられ…
現在に至ると言う訳だ。
そして我々を助けたのは…
アイシャ:
「お前…強いアルね? 勝負するアル!」
ティアン:(N)
柱に乗って ぶっ飛んできた規格外の脳筋エルフだった。
間
場所は変わりマリシ軍部内。
アイシャ:
「あーもう暇アル暇アル! 強いヤツと戦いたいアル!」
ハルト:
「うるさいぞアイシャ、平和ってのは良いもんなんだよ、すべからく国が良い方向に向かっている、それが平和なんだぞ。
そのおかげで、砂漠のド真ん中の都市であるにも関わらず食べ物に困らない、いい国だろ?」
アイシャ:
「そんな事分かってるアル 馬鹿ハルト。
私は平和に殴り合いたいだけアル。」
ハルト:
「バカはお前だよ、何だよ平和な殴り合いって。」
アイシャ:
「ああ言えばこう言う、ハルトのくせに生意気アル、お前でいいから殴らせるヨロシ!」
ハルト:
「どんなムチャ言ってんだよ! お前に殴られたら粉になるわ!」
アイシャ:
「大丈夫ヨ、ちゃんと手加減するから大丈夫アル!
じゃないと何度も殴れないアルからね…へへへ…
と言う訳で始めるネ!」
アイシャのパンチを避けるハルト
ハルト:
「うぉっ! 危っぶねぇ! アイシャてめぇ何すんだよ!
今のパンチ 避けなかったら骨の何本かイってたぞ!」
アイシャ:
「大丈夫大丈夫、我らがヴェル博士開発の再生薬のサンプルを貰ってるアル…ワンチャンすぐ治るアルよ。」
ハルト:
「お前に殴られた上に あのマッドサイエンティストの実験体になれってか!? ふざけんな!」
アイシャ:
「別にハルトも攻撃して良いアルよ? 殴れるならって話ヨ?」
ハルト:
「なめやがって…」
ハルト、高速移動でアイシャの後ろの回り込む。
ハルト:
「こうやって殴られたら満足か?」
アイシャ:
「いつの間に!?」
ハルト、アイシャの頭を軽く叩いて
ハルト:
「せいっ…っと。 はい終わり終わり、少しでも戦えたんだから満足しろよな?」
アイシャ:
「くぅ…何か知らんが負けた気分アル!
アイシャ:
「次は耐久勝負アル! 一発ずつ殴り合って最後まで立っていた方の勝ちアル! 避けちゃダメアル!」
ハルト:
「そんな勝負 誰がやるかよ脳筋バカ!」
アイシャ:
「そんなバカとか言うから…」
アイシャとハルト、殺気に反応
アイシャ:
「ハルト…気付いたか?」
ハルト:
「ああ、八時の方向から強い殺気を感じたが…かなり遠い…
不法入国か? 砂漠のど真ん中からだぞ?」
アイシャ:
「この殺気…絶対に強いヤツネ! ハルト距離は?」
ハルト:
「正確には分からんが10~15キロと言った所か…」
アイシャ:
「それだけ分かれば十分ヨ! 行ってくるアルね!」
ハルト:
「あ、ちょっと待て! …相変わらず話を聞かないバカだ…
…しかしこれは…
心の気配は三人分…遭難者か?
アイシャだけを向かわせるのは得策ではないか…
俺も…行かないとな。」
マリシ出発口
アイシャ:
「よし、今日はこのエンタシス君を使って飛んで行くアル!
八時の方角よし、距離は15キロを予測して…ぶん投げる!
せいっ!
そして飛び乗るアル!」
ハルト:
「アイツ相変わらず無茶苦茶だな…自分で投げた柱に飛び乗るなんて…
さて…俺はこのビーグルで向かうかな…八時の方向一直線に!」
砂漠にて ティアンとアイシャが向かい合う
アイシャ:
「お前強いアルね? 勝負するアル!」
ティアン:
「強いかどうかは置いといて要救助者がいるんだ! 助けてくれ!」
アイシャ:
「不法入国しておいて助けてくれって? そんな奴を助ける義理なんて一欠片も無いアル!」
ティアン:
「ぐうの音も出ないが…そこに勝負する理由はあるのかな?
救助と保護をした後に、不法入国の追及をしてもらうという方法もあると思うんだけど…どうかな?」
アイシャ:
「却下アル!」
ティアン:
「何で!?」
アイシャ:
「お前が強い雰囲気を持っているからネ、そして私が戦いたいと思っているからアルよ!」
ティアン:
「なら、保護してもらって回復してからの方が 万全な状態で戦えると思わない?」
アイシャ:
「なるほど…でも…うーん…
ちょっと考えるから、少し待つアル。」
ティアン:(N)
アイツ マリシの脳筋エルフじゃないか。 こんな状態で戦うなんて考えたくない。
出来れば引いてくれ、もっと出来れば保護してくれ!
アイシャ:
「よし決めたアル!」
ティアン:
「じゃぁ!」
アイシャ:
「私に勝ったら保護してやるネ、だから全力を出すアル!」
ティアン:
「マジかよ!?」
アイシャ:
「マジアル! さぁ行くアル! エモノがあるなら構えるヨロシ!」
ティアン:
「くっそ…勝つしかない!」
アイシャ:
「双剣とは…良い武器アルね。 じゃぁ…戦闘開始アル!」
ティアン、アイシャの拳を双剣で受ける
ティアン:
「早っ! …っくぅ…しかも思っていた以上に重い!」
アイシャ:(双剣の上から殴りながら)
「こんな程度で倒せるとは思ってないけど…いい反応アル! 楽しめそうネ!」
ティアン:(拳を受けて)
「この人 何で素手で剣を叩いて無事なんだよ!? おかしいだろ!?」
アイシャ:(殴りながら)
「そんな特殊な事は してないアルよ?
刃筋(はすじ)に到達する前に少し角度をつけて真正面からではなく少し横から叩いているだけアル。」
ティアン:(拳を避けて)
「そんなの完全に見切ってないと出来ない芸当じゃないか!」
アイシャ:(殴りながら)
「その通り!
さぁ私が簡単に見切れないくらいの技を見せるヨロシ!
お前にはその力を持ってる匂いがするアル!」
ティアン:(再度剣で受けて)
「はは…あったとしても…こんな体力では見せられるわけないぢゃん!」
アイシャ:
「どうしてアル? 本当の強者は いついかなる時でも強者ネ!」
ティアン:
「砂漠に迷い込んだ奴に言う言葉かな…それ?」
アイシャ:
「出せなきゃ お前が終わるだけアル!」
ティアン:(N)
力が出ない…もう…ダメか…
ハルト、ビーグルにて到着
ハルト:
「アイシャ、そこまでだ!」
アイシャ:
「ハルト…!
もう少しで この不法入国者共に正義の鉄槌を下せるアル!
もう少し待つネ!」
ハルト:
「そうか、ならその前に教えなきゃならん事がある。」
アイシャ:
「何アル?」
ハルト:
「いいから、ちょっとこっち来い。」
アイシャ:(ティアンに)
「ちょっとの間、首洗って待ってるヨロシ!」
ティアン:
「ふぅ…何だってんだよ…でも助かった…」
アイシャ、ハルトの所へ
アイシャ:
「…で、何アルか? 下らない事だったらブッ飛ばす…」
ハルト:(台詞の途中でアイシャを殴る)
「この馬鹿!」
アイシャ:
「痛い! なにするアルか!?」
ハルト:
「脳筋バカだとは思っていたが、ここまでのバカだとは思わなかったよ!
あいつの恰好見たか?」
アイシャ:
「見たアル。 …で、それが何アル?」
ハルト:
「明らかに砂漠を旅する服装じゃないだろ!」
アイシャ:
「…確かに。」
ハルト:
「それに、後ろに負傷者と熱中症で倒れている者がいるだろ!」
アイシャ:
「え!?」
ハルト:
「気付いてなかったのかよ…」
アイシャ:
「じゃぁ、要救助者って言ってたのは…」
ハルト:
「その二人の事だろうな…懸命に助けを求めていたのに…お前と言うやつは…」
ティアン:
「分かってもらえたみたいで良かったよ。」
ハルト:
「申し訳ない、ウチの脳筋バカが…ホントに!」
ティアン:(握手を求めて)
「いや…不法入国してしまった事は間違いないから…」
ハルト:(握手に応じて)
「しかしまた何でマリシに来たんんだ?」
ティアン:
「それは…タマゴを探しに…」
ハルト:
「…まぁ…話は後で詳しく聞かせてもらうとして、とりあえずは応急処置だ、二人の容態は…
この傷は…ちょっと見るぞ?
アイシャ、そっちのヤツはビーグルに乗せて水を飲ませてやれ。
ティアン、お前もビーグルで少し水分を摂取しておけ。」
ティアン:
「あぁ…ありがたい…え…?」
ハルト:
「このままマリシに向かうのも良いが、少し寄り道をする。
アイシャもビーグルに乗ってくれ。」
ビーグル内にて
ハルト:
「しかし災難だったなぁ…」
ティアン:
「あのアイシャとか言う人の事? それとも昨夜 槍の雨を降らせた事ですかね?」
ハルト:
「槍の雨の事だ、ホント災難だったよ。」
ティアン:
「アレはマリシ軍の攻撃だったんだろ? それを災難って!」
ハルト:
「ロイ…だっけか? …の傷を見て原因はすぐに分かったよ、それは半分 自然現象みたいなものでな…」
ティアン:
「ロイの傷…」
ハルト:
「応急処置はしておいた、まずは その原因の場所に向かっているのだが…」
アイシャ:
「ハルト、そこには何があるアル?」
ハルト:
「行ってみてのお楽しみさ。
そこの二人も もうじき目を覚ますだろうからな、おそらく目的の物の場所だ。」
ハンペン:(寝言)
「う~ん…タマゴぉ~…」
ティアン:
「はは…筋金入りのタマゴ好きだよねぇ…」
オアシスに到着
ハルト:
「はい目的地に到着…っと。」
ティアン:
「こんな所にオアシスがあってなんて…」
ハルト:
「いや、昨日まで無かったが できたんだ。」
アイシャ:
「どういう事アル?」
ハルト:
「ロイをケガさせた槍って言うのはな…ラテガラス(螺転烏)と言う鳥の…その…」
ハンペン:
「ラテガラス!? そいつのタマゴは美味いのか!?」
ハルト:
「ああ、美味いんだが…」
ロイ:
「…ラテガラス…その鳥のせいで…僕は足を…」
ハルト:
「ああそうだ、そのラテガラスのフンが原因でお前の足は…」
ティアン:
「え?」
ロイ:
「僕…大丈夫なんでしょうか…?」
ハルト:
「大丈夫、フンそのものは滅菌状態だから、ちゃんと処置すれば化膿もしない。」
ロイ:
「…なら良かったけど…」
ハンペン:
「鳥のフンに当たるとは運が悪いと言うか何と言うか。」
ロイ:
「…」
ティアン:
「ハンペンさん…それを言うか迷ったからハルトさんは濁して言っんじゃ…」
ハンペン:
「あ…」
アイシャ:
「ハンペン、バカアル。」
ハルト:
「アイシャ、そう言うのも良くない。」
アイシャ:
「はいアル。」
ハルト:
「でだ、お前たちは砂漠のタマゴを探してるんだよな?」
ハンペン:
「そう、黒く輝く砂漠のタマゴ『オニキスエッグ』を!
赤マントの にーちゃん、卵はラテガラスとかいう鳥のタマゴだってんだな!?」
ハルト:
「ビンゴだ。」
ハンペン:
「よっしゃぁ!」
ティアン:
「でもおかしい…マリシの砂漠化は割と近年に起こった事。
その時にはラテガラスなんて鳥は存在しなかったはず…」
ハルト:
「その通り、つまりラテガラスと言う鳥は近年から存在し始めた新種の鳥…と言う事になるな。」
ロイ:
「そんな鳥のタマゴ…捕って…食べても大丈夫なの?」
ハルト:
「黒く小型化したロックバード種がラテガラスの正体なのだが…
生命力は強いし繁殖力もある、今の所 生息域を拡大しまくっている鳥類だな。」
アイシャ:
「ロックバードと言えば大きくて強い空の王者ネ、結構強かった記憶あるアル。」
ティアン:
「あんなのと戦えるんだ…この人…」
ハルト:
「ロックバードの卵そのものは螺旋状の形をしていて 産み落とした落下衝撃で岩の間の卵を挟む。
孵化したヒナは、その卵の殻を巣として成長する…という仕組みだ。」
ハンペン:
「って事は、そのラテガラスも螺旋形状の卵を産むって事か?」
ハルト:
「その通り。
ラテガラスは螺旋状であること そして落下衝撃を利用して砂の中に産卵する。
鳥類は総排泄口と言う排出する仕組みを持っていて…」
ロイ:
「卵もフンも同じく螺旋形状をしていると…」
ハルト:「そう。
そしてラテガラスは体色を黒くする為と卵を頑丈に作るために、砂漠で砂鉄を摂取する。」
ティアン:
「だとすると、フンもタマゴも鉄の成分を持つ。
そして鉄を分解するための器官も持っていて…」
ハルト:
「体内に炉を持っているんだ。
夜に見ると ほんのりと赤く光っているそうだぞ。」
ロイ:
「じゃあ僕が見た赤い光は…」
ハルト:
「それこそがラテガラスだったと言う訳で…
体内に炉があるが故に滅菌状態と言った訳だ。」
アイシャ:
「火を吹きそうアル! 戦ってみたいアル!」
ハルト:
「火は吹かないんだ、残念。」
アイシャ:
「残念アル…」
ティアン:
「と言う事は、こんな砂漠でまとめてフンをする理由は…?」
ハルト:
「下に敵がいないことを確認した、若しくは威嚇し追い払った上で卵を地中に産み落とすためだ。
そして、その副産物と言うのが このオアシス。
かつて自然豊かだったマリシの自然が砂の下に眠ってる…ラテガラスのフンはそこに刺激を与えてオアシスを作る。」
ロイ:
「そのラテガラスというのは…今繁殖期なの…?」
ハルト:
「いや、繁殖期ではない。」
ハンペン:
「って事は、このオアシス周辺に無精卵が埋まってるって事か!?」
ハルト:
「そうだ、地中なら温度もそんなに変わらないし 蓄熱するために卵の殻は真っ黒になっている。
それが、ハンペン お前の言う『オニキスエッグ』の正体だ。」
ハンペン:
「そうと決まりゃ掘り起こすのみ! うおぉぉぉぉ、やってやるぜぇ!」
アイシャ:
「あらら…行っちゃったアル。」
ハルト:
「アイシャ、手伝ってやったらどうだ?」
アイシャ:
「全く…仕方ないアル。」
砂漠の砂を掘る二人
ハンペン:
「おりゃおりゃおりゃ! …これかぁ!」
ハルト:
「残念、その長いのはフンだ。」
アイシャ:
「じゃぁコレアルか?」
ハルト:
「それもフンだ。」
ハンペン:
「獣のにーちゃんも 暗そうなにーちゃんも手伝えよ! そういう約束だろ!」
ロイ:
「いや…歩けるようになるまで もうちょい掛かるから…。」
ティアン:
「ロイは もうちょっと休んでおきな~。
…はいはい、すぐ行きますよーっと。」
ティアン タマゴ堀に参加
ハルト:
「砂の上に小さい凹みが出来ているのがフンで、少し幅の大きめのが卵だ。
卵はもっと丸っこい形をしてるから それを目安に探すと良いぞー。」
ハンペン:
「掘っても掘ってもフンしか出て来ず…俺は何やってんだ、フンを探しに来たわけじゃ…
何だよこれ、黒くてデカい巻きグソじゃないか…またハズレだな…」
ハルト:
「ハンペン! それだ! 大当たりだぞ!」
ハンペン:
「なぬ!?」
ティアン:
「へぇ…一ヵ所に集中してるんだねぇ」
ハンペン:
「おい! そのタマゴは俺んだぞ!」
アイシャ:
「場所さえわかれば次々と獲れるアルね。」
ハンペン:
「だから、俺の!」
ロイ:
「何とか来れたけど…これが卵か。」
ハンペン:
「なんで お前まで来てんだよぉぉぉぉぉぉ!」
夜、オアシス周辺
ハルト:
「さて…すっかり日も暮れてしまったが…焚火でもしながら夜を過ごそうか。」
ハンペン:
「タマゴも沢山獲れたしな!」
ティアン:
「これ、どうやって食べるだよ カッチカチだし割れそうな感じがしないんだけど?」
アイシャ:
「なら私が力づくで…」
ハルト:
「やめろ! 食べ物を粗末にするな! ちゃんと調理法もあるから!」
アイシャ:
「じゃぁ任せるアルけど…美味しい物作れなかったらブッ飛ばすアルよ…」
ハルト:
「はいはいご自由に…
このまま火にくべても ゆで卵みたいに食べられるが…おススメはだな…
尖ってるのと反対側の所が割れやすくなっているから、裏の平らな面の淵を叩いていくと…」
ハンペン:
「おお! フタが取れるみたいに割れた! これを…どうするんだ?」
ハルト:
「器状になった卵の中をスプーンで混ぜてから…殻ごと火の中に入れる。」
ハンペン:
「殻が燃えない事を利用して丸ごと卵焼きにするって事か! おもしれぇ調理法だ。」
ハルト:
「じゃあハンペン、後の調理は任せても構わないかな?」
ハンペン:
「がってん承知! この俺に任せとけぃ!」
ビーグル内
ハルト:
「そういえばアイシャ、今朝ヴェルの再生薬が~…とか何とか言ってたよな?」
アイシャ:
「言ってたアルけど…」
ハルト:
「出せ。」
アイシャ:
「他の国の人間に使う気アルか?」
ハルト:
「まぁ、アイツの事だ再生薬自体の性能は問題ないのだろうが…
変な副作用があるかも知れないから使わせたくて仕方ない…って所だろう。
ちなみにアイシャ…お前…これ使いたいか?」
アイシャ:
「私は嫌アル。」
ハルト:
「俺も嫌だ。 …って事で…」
ハルト:
「ロイ、ケガに効くいい薬があるんだが…使ってみるか?」
ロイ:
「…効果のほどは?」
ハルト:
「まぁ効くだろう、多少の副作用は覚悟してもらう事になるが…」
ロイ:
「死なないなら…いい。」
ハルト:
「なら…コレだ。 飲めば体の内側から怪我を治すように作用するはずだ。
アイシャ、しばらくロイの事を見といてやってくれ。」
アイシャ:
「了解アル。」
ハルト:
「ちょっと外の空気を吸ってくる。」
ビーグルの外
ハルト:
「んで…そこで聞き耳を立てているのは?」
ティアン:
「あれぇ…バレてた? 気配を消すのは得意なんだけどねぇ。」
ハルト:
「お前の本当の目的は何だ?
卵を獲りに来るのが本当の目的と言う訳ではあるまい。」
ティアン:
「何で そう思うのかな?」
ハルト:
「コソコソと、ずっと こちらの動向を探っていたみたいなんでな…何か別の目的があるのでは…と思ってな。」
ティアン:
「目的かぁ…いや、これは私の勘なんだけどさ… ハルトさん、あなた既に知ってるんぢゃないかな? 私の目的…」
ハルト:
「ほう?」
ティアン:
「その上で、私がスパイじゃないかと疑っている…違う?」
ハルト:
「嫌な言い方をするじゃないか? なぜそう思う?」
ティアン:
「アナタ、私をビーグルに乗せる時に名前を呼んだよね「ティアン」…って。
アレが違和感だったんだよねぇ。」
ハルト:(握手を求めながら)
「カンの良いやつだな…お前とは仲良くなれそうだティアン。」
ティアン:(握手を受けて)
「アナタこそ…見事な気配察知と読心術…いや…本当に人の心そのものを読んでんでしょ?」
ハルト:
「さぁてな…何となく人の考えが分かる程度さ。」
ティアン:
「知ってますよぉ… この大陸に人の心と記憶を盗む愉快犯がいるって事も…。」
ハルト:
「ほう…初耳だ。」
ティアン:
「あなたの事でしょう? 怪盗ハルト・フェルト。」
ハルト:
「知らん名だなぁ。」
ティアン:
「そう…なら…仕方ないよねぇ。」
ハルト:
「なんだ握る手の力が なかなか強いじゃないか。」
ティアン:
「あなたこそ!」
ハルトとティアンと同時に含み笑いを浮かべて
ハルト:(同時に)
「くっくっくっく…」
ティアン:(同時に)
「にっしっしっし…」
アイシャ ビーグルから出てくる。
アイシャ:
「あれ…手なんか握っちゃって…?」
ハルト:
「いや、アイシャこれは…何と言うか違うんだ!」
ティアン:
「もしかしたら もしかするかも知れない…といったら?」
ハルト:
「ばっ…! ティアン黙っとけ!」
アイシャ:
「私に隠そうとしても無駄アルよ… もう分かっているアル。」
ティアン:
「何を分かったのかなぁ? ねぇ…ハルトさん?」
アイシャ:
「そんな風に握手して…握力の力比べアルな!」
ティアン:
「へ?」
アイシャ:
「私も混ぜるアル!」
ハルト:
「やめっ…!」
アイシャ:
「じゃ、せーので始めるアル! せーの!」
強めに二人の手を握るアイシャ
ハルト:(同時に)
「いたたたったたた痛い痛いって!」
ティアン:(同時に)
「ちょぉぉぉぉおつったい痛い痛たたたたたた!」
小さい間
アイシャ:
「なんだ…楽しそうだったから混ざってみたけど ハルトもティアンも大したことないネ。
興覚めアル。」
間
ハルト:
「アイシャ…行ったか…」
ティアン:
「行ったみたいだけど…こう言う事だったんだ…」
ハルト:
「あぁ…すぐにバトルしたがる部分があるからな、アイツ…」
ティアン:
「不用意出な発言を…申し訳ない…
…で…私の記憶を盗まなかった事は信頼してくれた証と捉えても構わないのかな?」
ハルト:
「好きに考察するがいい。
だが…」
ティアン:
「だが…何ですか?」
ハルト:
「いや、何か言う気も する気も無いんだろう?」
ティアン:
「さぁてね。」
ハルト:
「くっくっく… 嫌な返事だ… しかしまぁ、そう言う事さ。」
ハンペン:(遠くで)
「おおい、みんな! タマゴが焼きあがったぞ! 焦げちまう前に来いよ!
来ないんなら俺がみんな食っちまうぞ!」
ハルト:
「おお、良い匂いだ!」
アイシャ:
「ごっはん、ごっはん!」
ティアン:
「これが噂の…」
ロイ:
「…やたらとお腹がすく…薬の副作用かな…」
ハルト:
「薬は効いたようだな、もう歩けるか ロイ?」
ロイ:
「変な感じはするけど…大丈夫…かな…」
ハンペン:
「それじゃぁ、貴重な命のタマゴに感謝して…」
全員:
「いただきます!」
焚火を囲んで タマゴを食べる。
ハンペン:
「うんめぇぇぇぇ! まったりとして最高の味わいに ほんのりと甘みのある香りが鼻の裏から抜けて行きやがる!」
アイシャ:
「ホント美味いアル! ハルト…こんな美味い物を隠していたなんて ずるいアル!」
ハルト:
「そうは言ってもだ、俺だって数えるほどしか食べた事無いんだからな?」
ティアン:
「確かにタマゴにこんなに感動したのは初めてだ。
それに大きいからお腹いっぱいになりそう。」
ロイ:
「確かに美味しいし…お腹もいっぱいになった…けど…足りない…」
ティアン:
「ロイさん…どうかしたんですか?」
ロイ:
「おねぇさん…強いよね?
僕と勝負してもらうよ?」
アイシャ:「私と戦いたいアルか?
なら 今から放つこの一撃を躱せる事が最低条件アル、弱者に興味は無いアル…よっ!」
アイシャの鋭い攻撃を躱すロイ
ロイ:
「おねぇさん…その程度の攻撃…当たんないよ?」
ハルト:
「ほう…あいつやるなぁ…だが…何かがおかしい…」
ティアン:
「何がおかしいんです?」
ハルト:
「心と言動が一致しすぎてると言うか…
あぁ…これがあの薬の副作用か…」
アイシャ:
「ロイ…あんたいい動きするアルね… で、どんな勝負するネ?」
ロイ:
「相手の身体に触れたら勝ち…それだけの勝負だよ。」
アイシャ:
「なるほど、死なない程度に殴ればいいアルね!」
ハルト:
「アイシャー、本気出すなよー?」
アイシャ:
「当たり前アル、本気を出すまでも無く完封してやるアル!」
ロイ:
「それは無理だよ…おねぇさん。
正中洞観眼(せいちゅうどうかんがん)…僕の目は相手の正中線の動きから全てを見切るからさ…」
アイシャ:(連続で殴りかかりる…が…)
「コイツ何アル! 攻撃が当たらないアル!」
ロイ、全て見切り避けて…
ロイ:
「そして、その隙を見つけて…心臓に一撃を加えれば…」
アイシャ:
「はっ…!」
ロイ:
「はい、僕の勝ち。」
アイシャ:
「ナットクいかないアル! リベンジするアル!」
ロイ:
「そんなに僕に負けたいの?
何なら僕の弟子にしてあげようか?
タップリ可愛がってあげるよ?」
アイシャ:
「ムッカー! 実力は認めてやるアルが 気に食わんアル!
次は本気で…」
ハルト:(アイシャの台詞に割り込んで)
「本気になった所悪いが、お前が本気で戦ったら この辺りの地形が変わってしまうからな…
ここはひとつ、この俺が…」
ロイ:
「やだ! 僕はおねぇさんと戦いたい!」
ハルト:
「…うん… ロイ…ちょっと向こうで話をしようか。」
間
ロイ:
「なんだよ…」
ハルト:
「端的に言うとだな…
お前…アイシャに触りたいだけだろ?」
ロイ:
「や…その…」
ハルト:
「分かるよ?
けど寂しくないか?
ドサクサに紛れて触るだけだぞ?」
ロイ:
「でも…僕は それしかやり方を知らなくて…」
ハルト:
「そんなロイ君に良い話があるんだ。」
ロイ:
「…ッ!? 聞こうじゃないか!」
ハルト:
「アイシャのヤツ ああ見えて面倒見のいい所があるんだ。
こと身内に対しては かなり甘い。
…バトルマニアではあるがな。」
ロイ:
「そうなんだ。」
ハルト:
「例えば俺に勝負で負ける。
そして俺が こう言う「本気を出したアイシャは俺なんかが勝てる相手じゃない。」…とな
それを聞いた お前は、すかさずアイシャに弟子入りをする。 …すると…」
ロイ:
「すると?」
ハルト:
「長年 弟子のいなかったアイシャは お前を抱きしめて喜ぶだろう。」
ロイ:
「ホントに?」
ハルト:
「もしもウソだったら「あ…やっぱいいです遠慮しときます。」って言えば泣いて悔しがる。
その時は お前の優しさを見せるチャンスだ!」
ロイ:
「おぉ!」
ハルト:
「「僕は弟子にはなれないけど おねぇさんの傍には居られるんだよ…」」
ロイ:
「おぉぉぉぉ!」
ハルト:
「感動のハグ! 一粒で二度おいしい!
どうだ俺に負けるメリットは?」
ロイ:
「やってみる!」
ハルト:
「さぁバトルしようか!
俺はお前に素早く振れる、それで決着だ。」
ロイ:
「うん! 僕向こうで構えて待ってる!」
ハルト:
「おう!」
ハルト:(独り言っぽく)
「アイツ本能に忠実な状態になってるとは言え チョロいなぁ…
まぁアイシャに弟子がいないのは事実だしな…
日々の鍛錬が厳しすぎて 誰もついて来られないってだけで…な…」
相対するハルトとロイ
ハルト:
「じゃあ…行くぞ! ロイ!」
ロイ:
「うん!」
バトルは割愛します。
ロイ:
「うわぁぁ…負けたぁ!」
アイシャ:
「ハルトの速さは認めるアルが… 出来レース感が…」
ハルト:(力押しで話を進める)
「よく頑張ったなロイ、だが本気を出したアイシャはもっと強いんだぞ!」
ロイ:(わざとらしく)
「ナ…ナンダッテー!」
ハルト:
「力を抑えねば生活もままならない中、決して緩める事のない自己鍛錬!」
ロイ:
「さすが!」
ハルト:
「強く凛々しく美しく、そうあり続ける強き心!」
ロイ:
「マジ パねーっす!」
ハルト:
「なのにアイツには弟子がいないんだ…フシギダナー。」
アイシャ:
「ハルト…お前ケンカ売ってるアルか?」
ハルト:
「ロイ…正直に聞くぞ? アイシャをどう思ってる?」
ロイ:
「最高の師匠に相応しい人!」
アイシャ:
「…ッ!」
ハルト:
「…だそうだ、どうするアイシャ?」
アイシャ:
「し…仕方ないアル。
ロイがそこまで言うなら弟子にしてやらない事も無いヨ。」
ロイ:(アイシャに抱き着いて)
「わーい! ありがとうおねぇさん!」
アイシャ:
「ちょ…もう…抱きつくなんて…仕方ない子アル…」
ロイ:
「ぐへへへ…おねぇさーん…へへへ…」
アイシャ:
「じゃ、明日から特訓アルよ、ロイ!
お姉さんが手取り足取り教えてやるネ!」
ロイ:
「やったー! 手取り足取り…へへへ…」
アイシャ:
「とりあえず明日から基礎訓練を始めるアルよ。
私が毎日やってる準備運動から始めてもらうアル。」
ロイ:
「わかった!」
アイシャ:
「ひとまずは、腕立て・腹筋・背筋・スクワット・正拳突き・左右の足刀(そくとう)蹴り・各30回づつ!」
ロイ:
「はい!」
アイシャ:
「これを毎日100セット!」
ロイ:
「…え?」
アイシャ:
「それが終わったら 私の気が済むまで組手と新技の開発、更なる厳しい修行の考案も良いアルね。」
ロイ:
「ちょ…」
アイシャ:
「大丈夫! 準備運動も最初は時間掛かるかも知れないけど、慣れたら1セット30秒で終わるアル!」
ロイ:
「あのっ!」
アイシャ:
「ん? どうしたアル?」
ロイ:
「あ…やっぱいいです遠慮しときます。」
アイシャ:
「…はぇ?」
間
ハルト:
「…アイシャ…ドンマイ。」
ハンペン:
「赤マントの にーちゃんひっでーな、カンフー姉ちゃんにトドメさしたぞ。」
ティアン:
「しっ! ハンペンさん、アイシャさんに聞こえたら可哀想でしょ!」
ハンペン:
「あっ…しまった…」
アイシャ:(泣きながら)
「そんなぁ…やっと弟子ができたと思ったのに…ひどいアル!
みんな私の下を去っていくアル! 悲しいアル!」
ハルト:
「アイシャ…泣くなって…なあロイ お前も何か言ってやれ!」
ロイ:
「おねぇさん…僕は弟子にはなれないけど おねぇさんの傍には居られるんだよ…」
アイシャ:(スンスンしながら)
「…どう言う事ヨ?」
ロイ:
「僕は おねぇさんが大好きって事だよ!」
アイシャ:(再度号泣)
「ロイーーーー! おねぇちゃんもロイが大好きだからぁーーー!」
ロイ:
「そんなに抱きしめなくても…ぐへへ…僕は逃げないよ…うへへ…おねぇさんと…一緒にいるから…ぬはは…」
ハルト:
「何はともあれ、良かった良かった! はっはっは!」
ハルト:(小声で)
「しかしロイのヤツも上手くやったな…教えた方法を両方使うなんて…」
ティアン:
「…って事はロイさんはこのままマリシに行くと?」
ロイ:
「そうなるね。」
ティアン:
「そうなるとハンペンさんアナタはどうするんだい?」
ハンペン:
「うーん…どうすっかなぁ…どこ行っても俺は美味いタマゴ探すだけだし…
なぁ 赤マントのにーちゃん、マリシに とっておきのタマゴってのはあるかい?」
ハルト:
「そうだなぁ…俺の知ってる最高に珍しいタマゴは…」
ハンペン:
「タマゴは?」
ハルト:
「大海の大クラゲ クラリス・クラウンのタマゴの情報って所かな。」
ハンペン:
「なっ…なんだってー!」
ハルト:
「急に大声を出すなよ、ビックリするだろうが!」
ハンペン:
「これが大声を出さずにいられるかってんだよ! クラリス・クラウンだぞ!?
卵を産まないクラゲ種の 謎とされているタマゴの正体を知れるなんて…いちタマゴハンターとして放っとけねぇだろが!
俺もしばらくマリシに残るぜ!
赤マントのにーちゃん! しばらく世話になんぜ!」
ハルト:
「おう、俺の知ってるタマゴの話であれば教えてやるよ。」
ハンペン:
「ぃやったぜぃ!」
ティアン:
「…となると、残りは 私の身の振り方ですね…まぁ私は…」
ハルト:
「マリシを含めた色んな国や地方を回るんだろ?」
ティアン:
「おや…バレてましたか。」
ハルト:
「明日、みんなをマリシに送り届けたら 俺のビーグルで次の目的地の近くまで送ってやる。」
だからまぁ…何も言わずに行くなよな。」
ティアン:
「ハルトさん…あなたも たいがい不器用ですね。」
ハルト:
「…ほっとけ。」
次の日 ビーグル内にはハルトとティアン
ティアン:(N)
テ翌朝、ハルトのビーグルに乗って砂漠を走る走る
次の目的地に向かって一直線。
非常に快適である。
ハルト:
「なぁティアン。」
ティアン:
「ん?」
ハルト:
「今回はウチのアイシャが とんでもない事をしたな。
改めて謝罪させてくれ。」
ティアン:
「そんなのいいよ、なんだかんだで 面白い体験をさせてもらったしね。
危険も冒険の醍醐味ぢゃん?」
ハルト:
「そうか…そう言ってくれると助かる。」
ティアン:
「そうだよ。」
ハルト:
「話は変わるが…ティアン、お前はこの大陸を見て回っているんだよな?」
ティアン:
「おん、そうだよ~。」
ハルト:
「お前の私見で良い、この大陸は…どうなっていくと思う?」
ティアン:
「さぁてね…そんなの分からないよ。
未来視なんてできないしねぇ~。」
ハルト:
「そうだな、昨日の敵が今日の味方だったりするもんな。」
ティアン:
「だね。」
ハルト:
「でもな、人も国も立場なんかも変化しつつある…俺はそう思っている。」
ティアン:
「…と言いますと?」
ハルト:
「例えばエルフ族って森を愛していて…」
アイシャ:(なんか小ぎれいな感じで)
「私たちは争いを好みません、ですが森を汚すならば あなた方を許すことは出来ません!」
ハルト:
「…とか」
ハンペン:(なんか小ぎれいな感じで)
「森の資源を奪い取ろうとする愚かな人間よ…立ち去れ!」
ハルト:
「…とか。」
ロイ:(潔癖風に)
「…汚らわしい!」
ハルト:
「なんてことを言う種族だろ?」
ティアン:
「確かに。」
ハルト:
「それが、昨日のヤツらときたら…」
アイシャ:
「バトルアル バトルアル、殲滅するアル!」
ハンペン:
「タマゴうめぇ! みんなで食うタマゴは最高だな! お前も食え!」
ロイ:
「うへへ…へへへへ…おぱ…」
ティアン:
「ゴホンゴホン…!」
ハルト:
「まぁ…種族の在り方にさえ変化の兆しが見えるんだ、ラテガラスの生態変化だってそうだ。」
ティアン:
「国や国家間が変わる予兆である…と。」
ハルト:
「そういう事だ。
色々変わっていってるんだ…」
ティアン:(N)
確かに、これからこの大陸は変わっていく。
今現在この事実に どの程度の人が気付いているのだろうか?
変化の兆しを教えてくれたこの砂漠。
さながら、熱砂における卵のようで…
変化を続ける この大陸は…次にどんな姿を見せてくれるのか…
この先 希望と不安を見せてやろうかと ビーグルのエンジンは叫んでいるようで…
ただただ砂漠を一直線に進んで行くのだった。
熱砂のタマゴ 了
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