Aguhont Story Record 22nd Episode

『vs首領RAGON』 

作:野菜 

(2:0:3) ⏱30分 

 

・イタロ 男声 自称錬金術師。好奇心旺盛で何に対してもとりあえずやってみるという考えを持つ。弓使いだが腕前はイマイチ。

・モナカ 女声 多重人格者。今回出てくるのは、おっとりまったりな何も知らない人格(モナカ表記)と、バルナとつながりを持つ戦闘大好きな人格(もなか表記)。

・マロン 女声 金髪ショートボブ、童顔低身長、頭にひよこ(本体)!期待の新星アンドロイドアイドル!まだまだファンは少ないけど元気いっぱい活動中!

・ティアン(ナレーション・戦闘処理) 不問 物語の観測者。今回は馬車の御者に扮している。

・パギュール 不問 カールのかかったシルバーヘアーに、色が変わるエプロンを着用した人間。普段は寡黙な宿屋の主だが、今回は裏の仕事…斡旋屋として登場。

・ノア 女声 「心」を再現された純真無垢なアンドロイド。元は戦闘用だったが、心優しく好奇心旺盛な、よく食べよく寝る元気な子。

・ドン・ラゴン 声無し 大陸から売られたドラゴン。ラゴンと言うマフィアのドンの名前と、真偽の不確かなすごい伝説付きでバルナの市場に売られてきた。バルナで競りに上がったものの、暴走&逃亡してマリシ国境近くまで飛行中。パギュールだけが名前を正しく呼んでいる。


ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

【戦闘について】

サイコロを使い、その場で展開を決めます。

サイコロがない場合、ティアン役の方が選択肢から選んで描写してください。

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー



イタロ:ちくしょうめ。錬金術師から素材盗むとか、いい度胸してやがる。よくも滅茶苦茶にしていきやがったなあ、素人め。……軽くトラップ仕掛けておいてよかったぜ。すぐに追いついてやろうじゃないの。


ティアン(N):それから一か月後。馬車に乗り、草原を進むノアとパギュール。ふたりは気が付いていないが、馬を走らせる御者に扮しているのはティアンだ。やがて森の中へ、馬車は進む。


ノア:ドラゴン?

パギュール:ドン・ラゴンです。

ノア:ドラゴンじゃん。

パギュール:大陸のだらしない商人どもが言うにはですね。かの大陸にかつていた・ら・し・い、マフィーアの一族の首領(ドン)。つまりボスですね。ボスのラゴンさんが、ドラゴンとしてよみがえった伝説の生き物、「首領RAGON(ドン・ラゴン)」なんだそうですよ。おとなしく、威厳があり、優秀、三まで数えられる、などなど。

ノア:うそだあ。

パギュール:嘘でしょうね。あんなに胡散臭い売り手の顔面では説得力もダダ下がりというもの。

ノア:今聞いただけの僕でも分かるよ…なんで変なうそつくんだろ?

パギュール:ドラマティックで稀有な背景を持つ商品の方が、心が惹かれてしまう方は多いのですよ。見世物にしたいなら、相応のドラマが必要というのは、商人のはしくれとしてはおおいに理解できます。ただ……センスはなかったようですね。

ノア:ふふ、大陸の人って大袈裟!

パギュール:そうかもしれません。さて、ノア。先程話した手筈は覚えていますね?

ノア:ドラゴンと、捕まってる民間人の生け捕り!他に人がいたらパギュールさんが、なんとかする。僕はドラゴンを!この目で見て、そして戦うんだ!

パギュール:楽しみですね。本物かはさておき、珍しい生き物であることは確かです。

ノア:強いのかな?かっこいいといいなあ!本当にドラゴンでなくても、どんな生き物なのか知りたいんだ。上手に空を飛ぶヒントになるかも!

パギュール:勝利を、期待していますからね。あなたと組むのは初めてではありますが……ふふ。わたくしども、仲良くやれそうではありませんか?

ノア:戦闘……戦闘かあ。そういうのはちょっとなあ。

パギュール:被害が出る前に、です。必要でしょう?

ノア:そうかも……しれないけど。

ティアン:お客さん、そろそろ見えてくるかと思います。

パギュール:ほう、もうですか。馬車は疲れず、そして早い。いいものですね。

ティアン:ども。

パギュール:プロにしては少々揺れが気になりますが……この程度でお疲れですか?

ティアン:ははっ、自分下っ端なもんで、さーせんね。次までに成長してますんで!ごひいきに!

パギュール:帰りは安全運転だと嬉しいものです。

ノア:見て!パギュール!!ドラゴン、やっぱりこっちに飛んできてる!

パギュール:このあたりは水場が少ない。そしてバルナからの情報では海と逆方向に飛んだ、と。……この先の湖に、のどを潤しに来るという読みは当たったようですね。

ノア:民間人、無事だといいなあ。女の子って言ってたよね?

ティアン(N)::空飛ぶドンラゴン周辺。ドンラゴンの牙に服がひっかかりぶらさがるモナカ。背中に必死にしがみついているマロンの姿がある。


マロン:おねがーーーい!止まってーーー!

モナカ:どうして……いつもこんな目に……こわ…

マロン:女の子が食べられちゃうってつい飛びついちゃったけど!なんも!考えて、なかっ……あっぶな落ちる!

モナカ:マリシにいたはず……ここは……お空のうえ……。

マロン:今助けるからねおねえさん!ドラゴンさーん!止まって!降りてーーー!

モナカ:そろそろマリシとバルナの境目……マリシ……りたーんず……ん?湖?

マロン:止まっ……え?落ち、る……?


0:小さな湖のほとりにて。イタロが周囲を警戒している。ぼこぼこにされたモブのコソ泥がイタロの足元に転がっている。


イタロ:バルナまで逃げたと思ったら、Uターンしてこんなところまで……随分と逃げてくれたなぁ……。あー、先に盗んだもんの隠し場所聞いておくべきだったか。

パギュール:(ゆっくりと拍手をして出てくる)手際が良いですね。お疲れ様です。

ノア:お兄さんこんなところで何してるの?

イタロ:そりゃこっちの台詞よ。あんたら、なにもんだ?このコソ泥の仲間だって言うんなら……

パギュール:とんでもない。まったくもって、不愉快な冗談です。

イタロ:私は錬金術師だ。戦闘職じゃないと油断してるんなら、致命的な勘違いになるが?

パギュール:そこに転がっているゴミと同列にされて腹立たしいだけですよ。わたくしは仕事中の商人だと思ってくだされば。信用ならないというのなら、お買い物されていきますか?出先ですので種類は劣りますが……品質を保証いたします。


0:間、にらみ合い


イタロ:……はあ、私だって喧嘩したい盛りのガキじゃねぇ。悪かったよ。

パギュール:でしょうね。貴方は賢いお方、そうでしょう?ちなみにコソ泥……ということは、なにかそのゴミ屑に盗まれたのですか?道中似たような輩(やから)はいませんでしたが。

イタロ:商人やってんならこういった素材も知ってるか…?なくなった素材リストだ。ほれ。

パギュール:…………聞いたことのあるものもありますが、なんというか、種類に節操がないですね。価値も知らないコソ泥風情に荒らされたのは、さぞ業腹(ごうはら)でしょう。

イタロ:分かってくれるか……!コソ泥野郎はとっちめたんだが、盗ったものについては「もうない」、「知らない」しか言わねえ。最悪だ。

パギュール:バルナに戻れば……こちらと、こちら、ああ、この二種もですね。いくつかそろえているお店や闇商人をご紹介できますよ。

イタロ:ふうん、なるほどねえ、そういう商売かい。お高く取るんだろ?

パギュール:このあと、わたくしと一緒にいた子が……あれ、いませんね。とにかくあの子が大きな戦闘をする予定なので、回復薬を融通していただけるなら、今回はそれで十分としますよ。質が良い物であれば……今後もお付き合いをお願いする可能性はあります。

イタロ:うさんくせえなあ。なに、怪我確定の戦闘って、穏やかじゃないねえ。

ティアン:相手が……相手ですからね。

パギュール:御者さん?

ティアン:おっと失礼。

ノア:パギュール!いたよ!ドラゴン!

パギュール:ドン・ラゴンいましたか。

イタロ:なんて?

パギュール:貴方も見に来ますか?

ノア:ドラゴンと遊ぶの!

パギュール:生・け・捕・り。リピートアフターミー。「生け捕り」。

ノア:いけどり。

イタロ:ドラゴン!?あんなの老人共のおとぎ話だろ?

パギュール:そう、わたくしも信じているわけではありません。大陸産のドラゴンもどきです。引き渡す前に調査をして、情報として売るんです。

ティアン:あくどい。

ノア:あっちだよ!


0:林に隠れた湖の端。水浴びをするマロンとドンラゴン。落下の衝撃で「もなか」に人格交代したモナカ。


マロン:ドラゴンさん、お水飲みたかったんだねえ。えへへ。

もなか:さすがにドラゴンは乗りこなせなかったか……。いや、まず無理だったな。うん。ドラゴン使いの戦い方はもうやめ。

マロン:おねえちゃんもこっちで服乾かす?いい場所あったよー。

もなか:(無視)武器で使えないんなら、殺すか。ドラゴン殺し……悪くない。たまには人外もいいかも。

マロン:あ、お団子食べる?えへへ、カバンに入れっぱなしだった!ここに来る前にスタッフさんが差し入れでくれたんだ。ほら!

もなか:…………はあ。私にかまうな。関係ないでしょ。

マロン:あるよ!私、おねえちゃんを助けなきゃって、つい、ドラゴンに飛びついてついてきちゃったんだもん!

もなか:ええ……?

マロン:私マロン!アイドルやってるんだ。きらーん!おねえさんはなんて呼んだらいいかな?

もなか:あー…もなか、だよ。もなか。団子はもらう。

マロン:いいよ!どうぞ!……わお、五本全部かあ。

もなか:ありがと、そしてばいばい。やることあるから。

マロン:待って待って!こんな大自然で着の身着のままなんて、危ないよ!あと私も心細い!ね?一緒にいよ?

もなか:知ったことじゃない……。いや、待てよ。(ドンラゴンの方を見やる)

マロン:んぅ?

もなか:あのドラゴン、まさか話を聞いてる……?あんた、こっち来て。

マロン:……んー??

もなか:(小声)あんた、戦える?

マロン:(小声)今はマイクないけど、アイドルビームなら出せるよ。

もなか:ビームなら出せるよ??

マロン:しーっ!

もなか:(小声)ビーム出すの?あんた。

マロン:(小声)指から。

もなか:指から!?

マロン:しーっ!

もなか:(小声)いけないいけない。……あのドラゴンに、ビーム、効くと思う?

マロン:(小声)わかんない。やってみる?

もなか:(小声)そうこなくちゃ。

マロン:(小声)あとね、もなかちゃん。耳、そこじゃない。

もなか:えっ

マロン:私は、こっち。そう、今目が合っているひよこの方。

もなか:えっ。……えっ?!


0:イタロ・ノア・パギュール・ティアンはモナカ・マロン・ドンラゴンと湖を挟んで反対側に位置している。


ノア:こっちの、湖の向こうに水浴びをしてるドラゴンが、え、うわあ。

イタロ:…………あんたらの、知り合いか?

パギュール:断じて。決して。

ノア:わあ、どうしよ、急がなきゃ被害者がでちゃうよ!!(ドンラゴンの方へ)

パギュール:待ちなさいノア!生け捕りですからね、生け捕り!!

ティアン:ドラゴンがチクチク魔法でつつかれてチカチカ光ってる。あ、いや、魔法じゃないなあれ。なにあれ。

イタロ:知り合いに似てる気もするが、あんな好戦的じゃなかったような……分からん。おまえにも双眼鏡貸すから見てみろ。

ティアン:おお、気が利く。

パギュール:さすがイタロさん、紳士ですね。

イタロ:……俺のこと、知ってたのか?

パギュール:こうしてお話しするのは、初めてですよ?

ティアン:うーん、分かんないな。これは近くに行くしか……。

パギュール:わたくしはここで待機しております。回復薬や武器の購入など、希望でしたらお戻りください。

イタロ:あんた見てるだけかよ。

パギュール:しがない商人、「斡旋」を担うものですから。

ティアン:戦ってるの、女の子ふたりだね。ヤバいかも。

イタロ:なんでそんなことになってんだよ。……あーもう、しかたねえなあ!その2人逃がすとこまでだからな!


ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

【戦闘】

攻撃が当たるかどうか、本番中に、サイコロで決定する。ティアン役の人が代表で六面サイコロを振る。出た数字によって読む文章を選ぶこと。

マロン:えへへへっ!ドラゴンのお客さんははじめて!ファンになってくれると嬉しいなっ。び・び・び・びーぃむ!!

ティアン:(サイコロを振るか、以下からひとつ選択)

(1)

ティアン:「きらきらした光がドラゴンのおでこに直撃する。目くらましにもなったのか、ふらついているようにも見える。」

マロン:「ばっちり命中!いえい!」

(2・3・4)

ティアン:「ドラゴンの体にビームがあたる。ウロコが装甲になっているのか、気にも留めていないようだ。」

マロン:「あれ?当たったはずだけど……うーん、この子強いかも!」

(5)

ティアン:「近くをキラキラと光線が舞い、ドンラゴンが、完璧で究極のアイドルのように輝いている。」

もなか「……ドラゴンがアイドルみたいになってるんだけど?」

マロン:「ちょ、ちょっと外しちゃっただけだもん!」

(6)

ティアン:「もなかに誤射した。もなかがちょっと焦げている。もなかの瞳から無言の怒りが伝わってくる。」

もなか:「まーろーんー??」

マロン:「ごごごごごめんね!?大丈夫!?」

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー


もなか:近寄って切りつける……いや、危険か。それなら、邪道あるのみ。

マロン:あっ!それ、さっきの団子の串!

もなか:ドラゴンだろうが目は弱点のはず、えいっ(投げる)

ティアン:ドラゴンにしては小柄とはいえ、ドンラゴンの力強い羽ばたきで串は宙を舞う。

マロン:あちゃー。

もなか:ジャンプで飛び移るか……こっちも飛べればマシなのに!


ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

ティアン:イタロがドンラゴンの背後から弓をかまえる。今ならもなかとマロンがドンラゴンの注意を引いている。

イタロ:隙だらけだな。

ティアン:(サイコロを振るか、以下からひとつ選択)

(1)

ティアン「クリティカルヒット!もなかとマロンめがけてふりかぶったドンラゴンの腕をイタロの矢が射貫く。」

イタロ:「くそっ、なんでこんなことに……。大丈夫か姉ちゃんたち!」

(2・3)

ティアン:「頭部に矢は命中する。ドンラゴンはこちらを振り向く。もなかとマロンが逃げるチャンスを作るだろう。」

イタロ:「今だ!二人とも足元から離れな!」

(4・5)

ティアン:「矢は外してしまった。しかしイタロの攻撃に気が付いたドンラゴンはもなかとマロンに背を向ける。」

イタロ:「チッ、私をターゲットに変えたか……。次こそ当てる。」

(6)

ティアン:「見当違いの方向に飛んでしまった矢が、マロンの頭をかすめ、後ろの木にささる。マロンは顔面蒼白だ。」

マロン:「ぴゃあああああ!!」

イタロ:「あ、すまない。大丈夫か?」

もなか:「大丈夫だ、刺さってはいない。」

マロン:「はわわわ、びっくりです!!」

イタロ:「手助けはしてやる!逃げられるか?」

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー


マロン:良かったねもなかちゃん、助けだよ!

もなか:チッ、余計なことを……。

マロン:もなかちゃん?

イタロ:私だけではさすがに討伐は無理だ!時間を稼ぐからそのうちに……。あれ、やっぱりモナカ?雰囲気違いすぎないか?

もなか:来るぞ!口からなにか……


ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

ティアン:(サイコロを振るか、以下からひとつ選択)

(1・2)

ティアン:「イタロに牙で噛みつこうとドンラゴンが迫る。イタロは俊敏に避け、直撃は防いだものの、弓を取り落としてしまった。」

イタロ:「うわっ……!く、弓が!」

マロン:「お兄さん!」

イタロ:「ダメージはくらってない、だが……。」

(3・4)

ティアン:「マロンに強く咆哮するドンラゴン。怯えたマロンは逃げながらおひざをすりむいてしまった。」

マロン:「ひゃああああ!!あびゃっ!!……いててて、転んじゃいました……。」

もなか:「マロン、手を!」

マロン:「はい!」

(5・6)

ティアン:「もなかに火炎放射が放たれる。ドンラゴンの様子に気が付いていたため、ギリギリのところで回避に成功した。」

イタロ:「マジか、マジかよ!火ぃ吹いたぞ!!」

もなか:「毎回避けるのは厳しい。それなら……よし。」

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー


イタロ:おいヤバいぞあれ、想像よりガチじゃねえか!

マロン:強いです、怖いです!

イタロ:私の後ろへ、一撃くらいならかばってやれる!

もなか:おまえ!伏せろ!!

イタロ:えっ、なに、……ぐはっ!!!


ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

ティアン:(サイコロを振るか、以下からひとつ選択)

(1)

ティアン:「イタロの肩に足をかけ、ドンラゴンの頭まで跳びついた。団子の串を突き立てることができるが、串が抜けなくなった。」

イタロ:「おまえ……やるなあ。」

もなか:「さすがに団子の串じゃ強度が足りないか!」

(2・3・4)

ティアン:「イタロを踏み台にドラゴンの体に跳びつく。団子の串を片手に、頭までよじ登ろうとする。」

イタロ:「人を踏んづけて行きやがって……。おい、落とされるなよ!」

マロン:「がんばって、もなかちゃん!あともうちょっとで頭ですよ!」

(5)

ティアン:「イタロとマロンをワンツーとステップで踏み台にし、ドラゴンの背中にジャンプ。振り落とされないようゆっくりと頭に進む。」

マロン:「わた、わたしも踏まれました……。」

イタロ:「いっつつつ……。くそ、私を踏み台にしたからには振り落とされるんじゃないぞ!」

(6)

ティアン:「イタロに激突したもなか。ふたりはごろごろ転がり、気にぶつかり停止した。団子串は宙に飛んでいく。」

もなか:「ぐふっ……。しくじったか……。」

マロン:「お兄さん?お兄さんだいじょぶですか……?お兄さーーん!!?」

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー


もなか:くそっ、あと少しで…!

ノア:みんな、よく頑張ったね。

マロン:誰……?

ティアン:上空から、ドンラゴンに向けて降ってくる、ノア。モーニングスターをかかげた幼い姿を三人は目にする。

ノア:飛んでるところも、戦ってるところも見れた。お礼に、せめて、一撃で気絶させてあげないとね。

もなか:……ん?あれ、頭に団子の串、刺さったままになってる?

ティアン:勝負は決した。ノアの思惑とは、違う形で。


0:間 疲れた顔で立っているイタロ。腕組みをしているパギュール、その前に座るマロン、マロンに膝枕をされうたた寝をしているノア。パギュールの後ろでドンラゴンをつついているもなか。 


パギュール:まずは、お疲れさまでした。心配していたんですよ。

イタロ:うそつけ。

パギュール:信頼もしていましたが?

イタロ:うそだ。

パギュール:(咳払い)ノア。そろそろ起きなさい。

ノア:う……ううん。おはよう。あはは、ちょっと高く飛んだから眠くなっちゃってた。もうだいじょぶ。

パギュール:それはよかった。ノア。わたくし、再三、あれだけ、「生け捕り」と、言い含めませんでしたか?

ノア:うっ……生きてたはずだもん。手加減してたもん。

パギュール:ピクリともしない上に頭部血まみれですけど?

ノア:だって、だってえ。

マロン:いいんです!私は助けてもらいました!命の恩人です。ノアちゃんを怒らないで……?

ノア:そ、そうそう、他の子が、危なかったから!ちょっと強めに攻撃したから、みんなケガしなかったんだし…!殺すつもりじゃなかったけど、不可抗力……ううう。ごめんねドラゴンちゃんんん。

イタロ:ケガしてない……ああ、うん。あー……そうね。(全員を交互に見比べている)

パギュール:はあ。被害が大きく出なかったのは御の字、でしょうね。確かにわたくしの計画にも甘さがあったのかもしれません。

もなか:ドラゴン、見てきた。

パギュール:もなかさん。ドン・ラゴンの状態、分かりましたか?

もなか:ほぼあんたの見立て通り。モーニングスターの攻撃はたぶん、強く頭を打って気絶するだけの手加減がされてたようだ。頭蓋骨はおおむねキレイだったからな。

ノア:ほらね!

もなか:のうみそを貫通した団子の串が決定打だった。

マロン:五本セットワンコインのお団子……その串が……?

もなか:多少私も狙って動いてはいたけど……まさかだな。

イタロ:あー……んー……?この匂い……。

もなか:なんだよ。血なまぐさいって?

マロン:お兄さんムズカシイ顔してますね。

イタロ:ちょっと待っていなさい。

ティアン:イタロは荷物から札を取り出し、薬品をかけると、ドンラゴンの額の血にひたす。

イタロ:はあ……私の素材、こいつに使われたのか。

マロン:お兄さん、お医者さん?

イタロ:錬金術師ってやつだ。パギュール、自白剤の材料がこいつから出てきたぞ。

パギュール:盗品リストに載っていたうちの、その中の三種のどれかですかね?

イタロ:もうちょっと精密に実験しなきゃ確実じゃあないが。少なくともひとつは確定だ。自制心を失わせ、本能のままにしゃべらせる、大陸渡来の高級素材。ドラゴンはこいつを飲まされて暴走したんだ。

もなか:あんたそんなもん研究してんの……?

イタロ:北にお住みの上司から、取り上げて保管してたんだがね。コソ泥……誰かに入れ知恵でもされてたんだな。

パギュール:なるほど。ドン・ラゴンはおとなしく威厳があるというのは、本当だったかもしれませんね。バルナに渡ってきてから何かされたのか……。

マロン:確かに、ステージに上がった最初はおとなしかったかも。

イタロ:ステージ?

マロン:バルナの、競りっていうのかな?いろんな商品を実演と販売をするイベントに出てたの。私も、ドラゴンも。最後の休憩の後、苦しそうに大暴れして、モナカちゃんと何人かスタッフさんをくわえたまま飛んじゃって……。

もなか:え、私以外もいたの?

マロン:いたよお。おじさん二人は途中で服が破けて、落ちちゃったけど。

パギュール:……なるほど。分かりました。生け捕りに失敗したことは置いておきましょう。……イタロさん、実は予定が変わりまして、。

イタロ:言ってみろ、もう、いろいろ起きすぎて何にも驚く気がしない。

パギュール:皆さんがドン・ラゴンと戦っている間にですね。……後ろで転がってる、もはや肉の、つまりドン・ラゴンの所有者権限を買い付けることに成功しました。

イタロ:ほう。あんなのペットにしたかったのか。転売か?

パギュール:最終的にそれもありでした。本当は、貴方を呼び寄せるために、今後、使う予定のおとりだったんです。

イタロ:は?

パギュール:最近バルナの有名皇族の方にごひいきいただいておりましてね。誘拐&お届けラッピングプランに、色をつけてもらいまして。こちら……見覚えが、いいえ、身に覚えが、御有りなのでは?

イタロ:クソでか白レースリボン!私を……かつてミイラ巻きにしやがったのは……!

パギュール:ラッピングと配送部分をアドバイスしたのはわたくしでした。お似合いでしたよ?

イタロ:許さねえ!!!

パギュール:あ、今回は「私がプレゼント」ラッピングではなく、「適当にシール」ラッピングを承っております。お嬢さん、シール貼るの、やりますか?

マロン:私のこと……?あっ、かわいい。どこかで見たことあるシールだ!

もなか:なんで「ハッピーバースデー」のシールなんだよ?

パギュール:レジに置いてあるシールなんですが、誤発注しまして。いっぱい余ってますので。

マロン:おでこでいいですか、お兄さん?

イタロ:胸元にしておいてくれるかな……(疲労)

パギュール:今日はドン・ラゴンの回収目的だったので、普通にイタロさんと商売できればと思っていたんですがね。落札がスムーズにいきまして。イタロさん、マロンさんふたりを買収(咳払い)、バルナに連れて帰ってしてしまおうと思います。

マロン:私も!?

イタロ:パギュール、やけくそになってないかい?

パギュール:ええ、やけくそですよ。ノア、グリルセットと斬馬刀を出してください。御者さん、二台目の馬車はもう到着していますね?その馬車に機材が乗っています。

ティアン:おっさんの御者が目印ですよ。さすがに追いついているかと!

ノア:ドラゴンの焼肉!……動いてるの見ちゃったあとだから、ちょっとかわいそうだけど。約束聞いてくれるんだね、パギュール。

マロン:焼肉の約束をしていたの?その……あなたもアンドロイドだと思ってた。

ノア:そうだよ、僕もアンドロイド!でも食べるの好きなんだ。あとは、パギュール頭いいから、食レポしてもらいたくって!ドラゴンのお肉ってどんな食材か、食べたいし、知りたいんだ。

パギュール:ええ、ええ。ドン・ラゴン生け捕りのお手伝いを頼んだ時の交換条件でしたね。倒しちゃってますけど。

ノア:ごめんって!いつか、ドラゴンなんてレアもの、食べることが会ったら教えてもらうだけのつもりだったんだよ。

パギュール:もういいですから焼肉始めますよ!食べたい者は働きなさい!早く!!(やけくそ)

イタロ:俺らももらっていいわけ?

パギュール:ドン・ラゴンはお披露目が済んでしまっています。大々的に売るのは世間的に厳しく、処理するにも裏ルート。ましてやこの状態では日持ちさせるのもコストが高い。(だんだん小声)……今回だけ、特別に、どうぞ。

ティアン:やった!!!

パギュール:他言無用ですからね!!

イタロ:はあ。そんなことで、私がおまえに大人しく付いていくとでも思ってんのか?他言無用をちゃんと守るほど、もう信頼してくれてるってか?

パギュール:信頼してますよ。貴方は賢い、ただでは済まさない方だと、ね。おとなしくしてくださるなら、保護を約束します。波風立てたいのでしたら……あなたが管理不十分で流通させた劇物、その被害について即刻逮捕状を要求するだけです。

イタロ:逮捕状?!

パギュール:ご存じですか……?「なんでも」斡旋・流通できるという能力の有用さ、そして恐ろしさを。

イタロ:あんたそうとうヤバい奴だったんだな。くそ、初手で殴っても良かったか。

パギュール:お畳み申し上げてもよいんですがね?おそらく戦闘狂のもなかさんが漁夫の利を持っていくだけですよ。

マロン:あの……

パギュール:なんですか。取り込み中です。

マロン:ノアちゃんはあっちでグリル組み立ててるんだけど……もなかちゃんが気が付いたらいなくて。


0:通信機を片手に誰かと連絡しているもなか。ひどく疲れているようだ。


もなか:遅い。私だ、おまえと話している方だ。ドラゴンは死んだ。さっさと迎えをよこせ……。ああ、いや、戦闘はできた。悪くないが、もっと強いのを次はよこせ。……ふあ。マズい、そろそろ表に出て、られなくなり、そうだ。ふあ。どの人格と交代しても、あいつらじゃ……。そうだよ!だーかーら!むかえ急いでって言ってんの。

もなか:…………ふあ。

もなか:もう、無理。切るぞ。またこちらからかけるまで連絡してくんな。

もなか:…………。


0:穏やかな【モナカ】の人格に戻る。


モナカ:…………あれえ。おそら、とんでない……。

モナカ:……ねむい。ここ、どこぉ……?



.

0コメント

  • 1000 / 1000