Aguhont Story Record 5th Episode

『強襲作戦』 

作:ケンタ 

(3:2:1) ⏱40分 

 

【登場人物】

ライゼ ♂ 人体機械化改造マニア。短絡的ではあるが意外と思考はまわるタイプ

ヴェル ♂ マッドサイエンティスト、極度のめんどくさがり戦うと強い

アイシャ ♀ 脳筋エルフ。アンドロイドより人間兵器 (外部でやっていただける場合司令部、グリモア兼ね推奨、隊員のセリフがあります)

ティアン 不問 大陸の観測者、猫耳獣人(外部でやっていただく場合サリュー兼ね推奨、隊員のセリフもあります)

マズダー ♂ 大陸の観測者、おっさんアンドロイド(モノローグ担当、隊員のセリフもあります)

サリュー ♀ 鹿の獣人、普段はおっとりだが戦闘になるとスイッチが入る。(隊員のセリフがあります)

司令部 不問 司令部付きのオペレーター

グリモア 不問 タングリスニ魔法部隊の変態サディスト、今回は特別な任務で動いている。男性ならオネェ、女性ならお姉さんイメージ。




:軍部研究室前



ライゼ:よぉ博士!


ヴェル:んぁ?あぁライゼ君ですか~…どうしましたぁ?


ライゼ:今回の強襲作戦だけどよ!ちんたら進軍してたら強襲にならねーじゃん??だからさぁ、おもしれー事考えたんだけどさ…



:…



ヴェル:ふむ…あいかわず脳筋バカな意見ですがぁ…意外と理にかなってますねぇ…対空防御は比較的薄いしぃ…弾頭部を反魔法素材にすれば、魔法障壁も抜けるか…某大尉に怒られそうですが…おもしろいですねぇ


ライゼ:だろ!?派手だしよぉ!ロマンだろっ!


ヴェル:ロマンかどうかはよくわかりませんが~…作戦開始まで時間がたりませんねぇ。用意できるユニットの数にも限界がありますのでぇ、少数での作戦になりますが大丈夫ですかぁ?


ライゼ:かまわねぇよ!むしろ俺1人でもいいくれーだ


ヴェル:さすがに開戦直後にあなたに落ちられるわけにはいかないですよぉ?


ライゼ:おいおい博士よぉ?自分が散々いじったボディだろ?信頼しろよ


ヴェル:短絡的な脳みそはどうにも…あぁ…脳もイジらせてくれますかぁ?


ライゼ:俺のまま楽しめなきゃ意味ねんだよなぁ?


ヴェル:あなたの自我はぁ、完璧に消さないと言う事きかなそうですねぇ


ライゼ:つまんねーことになるなら俺ぁ抜けるぜ。施設の一個や二個潰してでもな


ヴェル:わかってますよぉ、貴方の武力がうちの軍には必要な事も、自由にさせとくのが一番の首輪になることもねぇ


ライゼ:わかってんじゃん。まぁ博士とやりあってもしゃーねぇ。とりあえず作戦の件頼んだぜ!!


ヴェル:えぇ…早急に。工場をフル稼働させても、5ユニットが限界ですかねぇ


ライゼ:うちの部隊から五人出撃すんなら一個大隊だって潰してやるよ!そんなことより俺の右腕出力アップなんだけどよ!…



:…



ティアン:ふむふむ…各地で動きありだね


マズダー:各国一斉にうごきだしたなぁ


ティアン:マリシはおっちゃんに任せていい?うちはタングリスニの偵察いってくるね


マズダー:おぅ。心配してないけど気ぃつけろな


ティアン:へぇー?やっさしぃー


マズダー:ばかなこといってねぇでさっさといけ!


ティアン:あははっ!じゃあいってくるよーー


マズダー:おう


マズダー:さて…やることやっちまうか



:…



ヴェル:え~以上がぁ作戦概要になりますねぇ


モブ隊員達:(マズダー、ティアン、アイシャ、サリュー)い、イエッサー


ライゼ:作戦参加者はミサイルに乗り込んで、迅速に制圧地点まで進軍!制圧!わかりやすいだろ!


マズダー:(モブ隊員A)あの…着地とかは…


ライゼ:耐衝撃用のクッションが入ってる!機械ベースのお前らなら平気だろ!


ティアン:(モブ隊員B)えぇ…


ヴェル:ミサイルの戦時使用は条約で禁止されていますぅ。…で・す・が!これは起爆装置は外してあり、爆薬もぬいてあります!つまりある種の飛行機!なのでこれは飛行手段の実験!実験に失敗はつきもの!発射角の調整ミスで着地目標から大きくズレちゃったぁー!からの現地で敵部隊と遭遇したため即時戦闘状態!…ってことでぇ


ライゼ:都合よすぎだろ


ヴェル:戦時行動なんて、都合さえ合わせとけばいいもんなんですよぉ


ティアン:(モブ隊員B)ッ!?


マズダー:(M)突然つぶされたセミのような声をあげて、一番端にいたモーヴが体をくの字…いやむしろ折りたたまって一直線になったまま、皆の前をすごい勢いで通過していく


アイシャ:どけアル。私もつれてけアル。


ライゼ:はぁ…お前なぁ


ヴェル:アイシャ君…君生身でしょう


アイシャ:機械っころが耐えられるくらいの衝撃なら余裕アル。実戦なんてなかなかないアル。暇アル。つれてくヨロシ


ライゼ:口で言やいいだろうが!この脳筋バカ!!


アイシャ:バカにバカって言われたくないアル。


ヴェル:まぁ…アイシャくんなら大丈夫か…


ライゼ:はぁ?まじでいってんのかよ博士ぇ。ぜってぇ言う事きかねぇぞこいつ


ヴェル:他のメンバーでうまくフォローしてください、制圧作戦の火力としては申し分ないでしょう。


ライゼ:…そりゃそうだけどよ…。つーかそれ言うなら博士も現場でていいんだぜ?


ヴェル:いやですよぉそんな疲れること…


ライゼ:だろーな…本気だしゃエース級なのに


アイシャ:私、博士の本気みたことないアル。相手しろアル。むしろウォーミングアップがてら今からでいいアル


ヴェル:もっといやですよあなたの相手なんて


ライゼ:やめろばぁか。おまえらが軽くでもやりあったら、隊舎なくなっちまうだろが


アイシャ:…つまらんアル


ライゼ:作戦中に嫌でも暴れんだろうが!


ヴェル:いつまでもじゃれてないで準備してくださいねぇ?1100(ひとひとまるまる)に作戦開始ですよ〜


ライゼ:あいよ!いくぞおめーら



:……



ヴェル:各員乗り込みましたかぁ?着地10秒前にアラートがなりますのでぇ各自耐衝撃体勢をとってください。そこそこの衝撃にはなりますがエアクッションがはいってるのでギリ怪我はしない設計ですぅ。


ライゼ:いつでもいーぜぇ!


アイシャ:はやくするアル


ヴェル:目標地点はぁタングリス二領ゴルモア地方ターキーズ山脈麓にある前哨基地。ではぁ…気をつけてぇ。直すの大変なのでぇ無傷で帰ってきてくださいね~


アイシャ:私は直んねーアル


ライゼ:おめーはそもそもケガなんかしねーだろ。カウントダウンはじまんぞーー


司令部:作戦を開始します。発射まで10、9、8、7、6、

ヴェル:(小声)…気をつけて…ね

司令部:5、4、3、2、1、ミッションスタート

マズダー:(Ꮇ)爆炎をあげながらライゼ達を乗せたミサイルが射出される。

ライゼ:ギャハハ!すっげー加速!!

アイシャ:なんだ、たいしたことないアル


:…


ライゼ:すぐつくぞー。着地後即時行動開始な!


隊員達:(マズダー、ティアン、サリュー)イエッサー


アイシャ:規模はどんくらいアルカ?


ライゼ:お前全然話きいてねーのかよ。基地は小規模で、おそらく敵兵30人程度


アイシャ:立ちながら寝てたアル。どうせ現地でやることはかわんねーアル


ライゼ:せめて聞いとけばぁか。


ヴェル:WARNINGぅ!WARNINGぅ!高度が下がっています〜。激突まで10、9、(8、7、)


ライゼ:ぜってぇ遊んでんだろ博士…各員耐衝撃態勢!……ぐぅっ!!

ライゼ:ふぅっ……おーい皆生きてっかー?


隊員達:(マズダー、ティアン、サリュー)イ、イエッサー


アイシャ:余裕アル


ライゼ:よし態勢整えられる前に動くぞ!アイシャは正面で派手に暴れろ、バインはアイシャのカバー!邪魔すっと殴られっから、大人しく周囲警戒と援護射撃だけしとけ、アールとカーは俺についてこい!行動開始!!


アイシャ:腕に自信があるやつだけ前にでろアル!ザコは帰ってかーちゃんに耳かきASMRでもしてもらうヨロシ!


マズダー:(Ꮇ)すぐに正面入口の方から、徒手空拳によるものとは思えない破壊音が響く。ライゼ達は基地の裏手にまわる


ライゼ:わけわかんねーこと言ってやがんなあいつ…2階にある見張り台から内部へ侵入する!…鉄条網は俺がぶった切る!ビーム出力10%!いくぞっっ


マズダー:(Ꮇ)跳びながら鉄条網を破壊。アールとカーが上がりやすいように蹴り広げる


ライゼ:先行はアール!カーは後方警戒!GO!


マズダー:(M)先に入ったアールのあとを追って、ライゼが内部に入ろうとした瞬間、短いうめき声が響く。

マズダー:(M)警戒しつつ中にはいると、アールが立ち尽くしている。アールの肩の上にいるそれは、強烈な殺気を放ちながらこちらをみている。それが口を開く


サリュー:退く気は?


ライゼ:ねぇな。勝てる戦から退く理由なんかねぇだろ?


サリュー:そ。死んでも恨まないでね


マズダー:(Ꮇ)大型の肉食獣かとも思ったそれは、鹿の角を生やしたスラリとした獣人だった。アールの頸部(けいぶ)動力コントロールケーブルを掻き切ったであろう、ぬらりと光る短剣を逆手に。もう片方の手でピタリとライゼの額に向けてクロスボウを構えている


ライゼ:草食獣らしからぬ殺気だしやがって。


サリュー:命の危険が迫ってるんですもの、草食でも本気だすわ


ライゼ:狩る気マンマンの殺気だしながら何言ってんだ


マズダー:(Ꮇ)ライゼは少しずつ体をズラすが、射線はピタリと額の中心に貼り付いている。


サリュー:この距離なら百中で外さないわよ


ライゼ:だろーな…狭い場所ですばしっこい獣人とか、相性わりぃんだよなぁ


マズダー:(Ꮇ)ゆらりと体を振ってから一気に姿勢を下げ、サリューとの距離を詰める。ボウガンの矢なら腕ではじけると踏んだライゼは、距離を詰めながら射線の間に左手を滑り込ませる。サリューの構えたクロスボウから躊躇なく額めがけて矢が放たれた。

マズダー:(Ꮇ)腕の表面で弾かれる予定の矢は、すんなりと合金製の腕を貫通した。体を捻りながら頭を右に逸らす。まだ生体のままの左のこめかみを抉りながら、矢が通り過ぎる。勢いを殺さず右手で構えた大剣を横薙ぎに振る。…が、スルリと後方に宙返りして、それをかわされる。


ライゼ:どーなってんだそれ?普通の矢なら通らねぇ硬度のはずなんだけどな。


サリュー:特別製なの。初見で殺せなかったのは痛いなぁ。高いからあまり使いたくないのよね


マズダー:(Ꮇ)ギリギリまで出力を絞ってあるが、それでもかなり巨大なビーム製の大剣。大振りにならないようになるべくコンパクトに打ち込むがサリューの動体視力、身体能力が相手では簡単に躱されてしまう。


ライゼ:(小声)チッ…加粒子砲で基地丸ごとふっ飛ばしちまうか…


アイシャ:下にどけ改造バカ


ライゼ:早すぎねーか脳筋バカ


マズダー:(Ꮇ)しゃがんだライゼの上をありえないスピードで柱が通りすぎていく。いきなり眼前にせまる石の柱に、さすがのサリューも対処できず、ガードしながら後ろに跳ぶのがやっとだった。そのまま通路の奥の壁に叩きつけられる。


サリュー:ぐぅっ!


ライゼ:下は終わったのかよ!


アイシャ:おもしろソーな気配がしたから残りのザコはバインに任せたアル。かわるヨロシ


ライゼ:バインは援護用の装備しか持ってきてねーだろうが!鬼かてめーは!


アイシャ:男なら素手でいくアル。心配ならお前いけアル。


ライゼ:肉体凶器のおまえと一緒にすんな!…ここにいても置き物にしかならねぇな…カーは下のバインを援護!制圧したら二人で入口の確保!


マズダー:(Ꮇ)ライゼが言い終える前にすでに動きはじめる二人。サリューは短剣を脇に構え、這うような体勢でアイシャにツッコむ。そこに上から叩き斬るようなローキックで合わせるアイシャ。ギャリィッ!と金属と生身の足刀(そくとう)で出るはずのない接触音が響く。


ライゼ:まじでどうなってんだあいつの体。


マズダー:(Ꮇ)激しい斬り合いをはじめた二人を横目に、ライゼは階段を登り上階の司令部に突入する



:……



ライゼ:制圧完了。下も終わったみてーだな。…あっけねぇ…獣人のねーちゃん以外は、平和ボケした田舎の兵隊さんばっかりじゃねーか。ここ制圧する意味ほんとにあるんか?なぁ博士よぉ


ヴェル:(通信)必要と上が判断したからそこにいるんですよぉ


ライゼ:なんだか最近変な動きが多いよな。つまんねー臭いがすんぜ


ヴェル:(通信)うまく立ち回ってください〜。ってあなたに言っても無理なのは知ってますがぁ


ライゼ:つまんなくなったらオレぁ抜けるぜ。何度も言ってるけどな


アイシャ:おまえ兵隊以外の仕事できないだろアル。そのゴテゴテ金属ボディでいらっしゃいませーするアルカ?


ライゼ:お前に言われたくねーんだよ脳筋バカ!


マズダー:(Ꮇ)適当に縛ったのだろう。マンガのようなグルグル巻きにされたサリューと、動けなくなったアールを担いでアイシャが登ってきた。


サリュー:…もう少し丁寧に扱ってもらえるかしら?あちこち痛いの


アイシャ:ツノねーちゃんなかなかいい動きだったアルヨ。鍛えてまたやるヨロシ


サリュー:いい当たりがあってもダメージになってる気がしないの…ほんとに悪夢ね


アイシャ:気の使い方くらいなら教えてやるアル。…んー?虫達が騒いでるアルな、どしたアルか?


ヴェル:(通信)始めましてぇ獣人さん。お名前お伺いしてもぉ?


サリュー:馴れ合うつもりはないわ。サリューよ。以後お見知らなくて結構


ライゼ:脳筋バカとやりあって今口きけてるってことぁつえぇって事だ。誇れよ


サリュー:軍人が負けて誇ることなんてなにもないわ


ライゼ:こえぇ顔すんなって。


ヴェル:(通信)サリューさんね…データベースにも登録されてるネームドさんだぁ


ライゼ:だろーなぁ。狭いところでタイマンは勝てる気しなかったぜ…ま、やりようはあったけどな!


サリュー:…そのままあなたが相手ならよかったのに…


司令部:すぐ隣に村があります。確認してください


ライゼ:あぁ?あったなちっちぇえ村


サリュー:…ルイズの村ね…なにもないところよ。まさか戦時法破ってそんな事しないと思うけど…略奪するつもりなら絶対に許さないわ


ヴェル:(通信)略奪なんてしませんよぉ…殲滅です


サリュー:なっ!??


ライゼ:は?何言ってんだ?


司令部:”命令です”サリュー以外の基地生存者、ルイズの村人全員の抹殺指令。


マズダー:(Ꮇ)スッとバイン、カー、アイシャが動き出す。バインが持っていた銃を構え、拘束していたタングリスニ兵に向かっ(て撃つ


ライゼ:(被せて)なにしてんだてめぇ!!!


マズダー:(Ꮇ)ライゼに殴られ吹き飛ばされながら、空中にむけて銃を撃つバイン。倒れたバインの銃を蹴り飛ばし、別の兵士を撃とうとするカーに向かって走る


ライゼ:な…んだってんだ!修理代だしてやる!許せよ!!


マズダー:(Ꮇ)大剣の一閃でカーの両脚を切断。返す刀で銃を両断する。切り返し、歩みを進めるアイシャに向かって走る


ライゼ:てめーもかよ!…半端で止められる自信がねぇ!殺す気でいくから恨むなよ!


マズダー:(Ꮇ)上からの振り下ろしの斬撃を、両拳の白刃取りで止めるアイシャ


ライゼ:なにしてんだてめぇまで!命令とはいえ、はいわかりましたってタイプじゃねーだろ!!


アイシャ:………


マズダー:(Ꮇ)無言のまま右のハイキックを繰り出すアイシャ。左手でガードしつつ上にかちあげ、踏ん張りがきかなくなった体に蹴りをいれ、基地の壁に叩きつける


ライゼ:なんだってんだ…どういう事だぁ!!!市民の抹殺なんてどう考えても戦時法アウトだろうが!それ以前に俺が許さねぇよ!!


司令部:軍司令部より。ここの地を完全に無人で確保するのが絶対命令です。博士。アンドロイド兵及び作戦参加者は全員処理済みとの報告ですが


ヴェル:(通信)してありますよぉ?おかしいなぁ?バグかなぁ??


マズダー:(Ꮇ)ライゼがサリューを縛っている縄を切りおとす


ライゼ:よぉ鹿のねーちゃん…まだ動けるか?


サリュー:どういう…つもりですか


ライゼ:アイシャをタイマンでなんとかすんのは骨が折れる。手伝え


サリュー:逃げるとは思わないの?


ライゼ:さっき市民に手を出したら許さねぇって言ってたからな。あんたの正義に期待してみるわ


サリュー:ずるい言い方するわね。とはいえ2人掛かりでもなんとかできる気がしないわ


ライゼ:理由はわかんねぇがいつもより動きのキレはねぇ。いつもあんだけうるせぇのに一言もしゃべんねぇのも気になるしな。とはいえ体力バカ相手に長期戦は分がわりぃ一気に決める。合図したら目ぇ閉じろ!いくぞ!


サリュー:ちょ!ちゃんと説明しなさいよ!…もう!!


マズダー:(Ꮇ)起き上がったアイシャは、ライゼに向かってくることなく近くに倒れている兵士に拳をふり上げる。急いで距離を詰め中段に蹴りをいれるが、後方に跳びながら威力を殺される。追い打ちで大剣を振り下ろす。


ライゼ:寝てんなら目ぇ覚ませ脳筋バカ!鹿のねーちゃん!!


マズダー:(Ꮇ)サリューに合図を出しながら、柄のグリップを回し、仕込まれていた閃光弾を炸裂させる。


ライゼ:今だ!!!


マズダー:(Ꮇ)アイシャは至近距離で強烈なフラッシュをくらい、距離をとろうと後方に跳ぶ。そこにサリューが背後に回り込み、後頭部に全力でハイキックを叩き込む。さすがのアイシャも無防備な後頭部に蹴りをくらいダウンする。さっきまで自分を縛っていた縄で手際よく拘束するサリュー。


サリュー:説明もしないでなんなのよ!


ライゼ:うまくいったじゃねぇか。


サリュー:もう…!…


グリモア:昏き縄…悦楽の棘…搦め(からめ)縛れ縛縄(ばくじょう)


マズダー:(Ꮇ)突然、足元から黒い蔓のようなものが伸び体に巻きついてくる。蔓には薔薇のような鋭利な棘がついていて、からみつきながら皮膚を傷つけ食い込んでくる。いつの間にか、どこから湧いたのか黒いフードを被った集団が立っていた。


サリュー:痛っ!な…によこれ!動けない!


グリモア:フフフ、無理に動くと傷が増えるわよ。こちらとしてはそっちの方が嬉しいけど。


ライゼ:チッ、まじで動かねぇ。なんだてめーは


サリュー:あんたは!?


グリモア:命令違反に裏切り者?碌な人間がいないわね。


サリュー:ッ!!別に裏切りなんて!


グリモア:敵兵に助けられ、いいなりになるなんて。作戦に協力するなら生かして帰せって命令だったけど、いらなそうね


サリュー:貴様!!


ライゼ:んだてめぇは!いきなり現れてふざけた真似してんじゃねぇぞ


司令部:彼らはタングリスニの協力者です。協力し作戦を継続してください。


ライゼ:本格的になんだってんだよ。タングリスニと協力ってどういう事だよ!ここはタングリスニの基地だろ!?意味がわかんねぇよ!!


司令部:司令部からの命令です。これ以上は軍事裁判(いきになりますよ


ヴェル:(被せて、通信)あーーあーーテステス聴こえますかぁ?


ライゼ:は?


ヴェル:(通信)一帯にジャミングをかけましたので、音声、映像は司令部に届かなくなりました〜。オープンチャンネルと別に、ジャミングを受けない直通回線でチャンネルを繋いでいます〜。


ライゼ:(小声)なんだってんだ


ヴェル:(通信)なかなか大変な状況だと思うのでざっくり説明しますねぇ。今回の発端は資源の乏しいタングリスニの片田舎、小さな炭鉱村であるここ、ルイズの炭鉱で魔晶石の欠片が出た事。ご存知のとおり魔晶石は大結晶以外に魔法を司る力はないですが、それでも欠片一つでも膨大なエネルギー源になります。タングリスニはもちろん、他の三国でも貴重な資源です


ライゼ:(小声)詳しくはねぇけど、欠片で屋敷が買えるとかそんなんだよな


ヴェル:(通信)各国に入り込んで魔晶石を独占したいと考えている組織が勢力を伸ばしてるみたいなんですよねぇ。マリシ軍の戦争推進派もかなり密接に関わっています


ライゼ:は!?まじかよ!


グリモア:なんだ?マリシの兵隊?


ライゼ:なんでもねぇよ!うるせぇ陰キャフード


グリモア:しめつけ足りないみたいね機械人形。口のきき方に気をつけなさい…もっとよ縛縄(ばくじょう)


ライゼ:ぐぅ……いってぇな!クソが!


グリモア:もっと虐めてほしいみたいねっ!!


ライゼ:アグッ!


ヴェル:(通信)静かにといったでしょう…。その組織はタングリスニにも入り込んでいます。ルイズで魔晶石が出た情報が表にでないのも、彼等が握りつぶしているからです。秘密裏に情報を持っている者を消し自分の組織で採掘を進めたい。さすがに自軍を使って基地一つ、村一つの虐殺は不可能。なのでマリシ軍がここを攻める事になったんですよ


ライゼ:(小声)くっだらねぇ…で?博士はそっち側って事か?


ヴェル:(通信)そんなところに入ったら好きな研究もできないじゃないですかぁ…と言いたいところですが、研究施設を抑えられちゃっているのでぇ表向きは従っています。フリだけですがねぇ。ちなみに機械ベースの隊員は、全員命令に逆らえないようにチップが埋め込まれています。


ライゼ:(小声)そういう事か…あ?俺はどうなってんだ


ヴェル:(通信)あなたは全部私オリジナルパーツです。そんな美しくない物つけさせるわけないじゃないですか。ちなみにアイシャさんは、作戦参加させるなら命令遵守させるようにって事だったので、コインぶら下げて催眠かけたら引くぐらいがっつりかかりました。


ライゼ:(小声)単純バカがよ


ヴェル:(通信)ここで起こしちゃうと収拾つかなくなるからそのままにしときましょう。ここで暴れても次の部隊が投入されます。納得はいかないでしょうが指令は完遂しなければいけません。


ライゼ:(小声)虐殺なんてぜってぇやらねぇぞ俺は


ヴェル:(通信)わかってますよぉあなたの性格くらい。ここの基地の軍人と村人は私の秘密研究所で一度引き受けます。基地と村は吹き飛ばしちゃってください。カーさん、バインさんは作戦完了したってイジっときますので。


ライゼ:(小声)そりゃいいんだけどよ…今、動けねぇんだけど


ヴェル:(通信)背中の無駄なビーム砲はなんのためについてるんですかぁ?丁度銃身の先に目標がいるじゃないですか


ライゼ:(小声)やっちまっていいのかよ?一応協力者なんじゃねーの?


ヴェル:(通信)お使いもまともにできないってレッテル貼ってあげたほうがぁ、高慢な態度もマシになるかとぉ


ライゼ:OK!細かい処理はまかせるぜ博士!!エネルギー残量80%!出力20!いっけぇ!!


マズダー:(Ꮇ)一条の光が黒フードの半身を焼く。ついでに後ろの取り巻きも半分くらい一緒に焼ける


グリモア:な…ん!ぎゃぁあああああ!あづいぃ…あづいい!!


マズダー:(Ꮇ)黒フードがのたうち回ると同時に、体を縛っていた術が解ける


ライゼ:鹿のねーちゃん動けるかー?


サリュー:ええ。女の肌をなんだと思ってるのよこの変態


ライゼ:おら、大将連れて早く帰らねーと消し炭にすんぞ


グリモア:きさまぁ…!!覚えておけ!!!


ライゼ:うるせーな!さっさと帰ればぁか!


グリモア:くぅっ!!


マズダー:(Ꮇ)フード集団が悲鳴をあげながら、偉そうな黒フードと焦げた取り巻きを抱えて去っていく


サリュー:で?どうするの?村の人に手を出すなら助けてもらって悪いけど殺すわよ


ライゼ:しねーよばぁか!どうすんだ博士ぇ


ヴェル:(通信)ターキーズ山脈をマリシからタングリスニまでぶち抜いて、秘密の研究所作ってあるんですよねぇ。なのでそちらから入れる入口があるんですよぉ。サリューさんには先導してもらって村人達とそこに身を隠してもらいます。しばらく窮屈な生活になっちゃいますが、サリューさん含め生存がタングリスニに漏れれば追手がかかるのでちょっとだけ我慢してもらいましょう〜。あとはこちらでうまく調整しますのでぇ。


ライゼ:て、こった。納得いかねーだろうけど、村人達のためだ。飲み込んでくんねーか


サリュー:………はぁ。しばらく…ね


ライゼ:よし多分時間はあんまりねぇ!村人かき集めんぞ



:………



マズダー:(Ꮇ)村人達を説得してまわり、ポイントまでの先導をサリューに任せる。一緒にいまだに洗脳状態のアイシャに3人を抱えさせ、研究所ルートを使ってマリシまで帰投させる。

マズダー:(M)その後、出力全開のビーム砲で基地、村を瓦礫にかえた。


ヴェル:(通信)終わりましたかぁ?


ライゼ:あぁ。んで?どーすんだ


ヴェル:(通信)私はもう少し内部にいますよ…まだやらなきゃいけないこともあるので。あなたは…戻るつもりないでしょう?


ライゼ:あぁ…つまんねー事させられそうだしな


ヴェル:(通信)あなたには軍の外で色々調べてほしいんですよねぇ。気が乗れば…ですが


ライゼ:つまんねー事に巻き込まれんのはゴメンだ…が、つまんねー事をほっとくのも気持ちわりぃんだよな


ヴェル:(通信)えぇ…わかってて聞きました


ライゼ:ずりーやつ。難しい事はわかんねぇ…準備とか色々任せていいか?


ヴェル:(通信)任せてください〜、もうできてますからぁ


ライゼ:ったく(苦笑)


ヴェル:(通信)本拠地をぼかした傭兵部隊を準備しています。その傭兵部隊を指揮してください。情報は共有するので、それをどうするかはあなたの判断にお任せしますよ


ライゼ:博士の思い通りにいかないかもしれねーぜ?


ヴェル:(通信)期待してませんよ…むしろ私の思いもしないような動きを期待してますのでぇ。ガッチガチのつまらない世界よりおもしろければOKですよぉ


ライゼ:ぶれねーなぁあんたは…



:……



アイシャ:おい博士


ヴェル:なんですかぁ?アイシャくん


アイシャ:改造バカがいないアル。どこいったアルか


ヴェル:さぁねぇ


アイシャ:すっとぼけんなアル。寝てる間に全部終わって部屋にいたアル。寝てる間に改造バカ荷物まとめて消えたアル。吐かねぇと殴るアルよ


ヴェル:ライゼくんは外をみにいきました。わたしのお願いも含めて…ね


アイシャ:…ひとことくらい言ってけアル。サンドバッグが一個なくなったアル


ヴェル:人間をサンドバッグと言うのはやめましょうね。…アイシャくんも自分がいる国の事しっかりとみてみなさい。


アイシャ:私は戦えりゃいいアル。


ヴェル:(含み笑い)…まぁライゼくんもたまには顔だすでしょう


アイシャ:とりあえず10発殴るアル。


ヴェル:直すのわたしなんですからねぇ?生身のところだけ狙ってください


アイシャ:普通逆じゃないアルか?とりあえず博士トレーニング付き合えアル


ヴェル:ぜっっったいにいやですぅ。



:……続く

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