Aguhont Story Record 2nd Episode

『約束の音色』 

作:天びん。 

(1:3:1) ⏱30分  

 

【登場人物】

・シャトン:獣人の女性で弓の名手。口数が少ないが情に厚く親切。言葉が足りずよく勘違いされる。ティーナとは親友。

・ティーナ:エルフの女性、先頭にハープ(楽器)を用いる。性格は朗らかで爽やか、かなりの方向音痴。シャトンとは親友。

・マズダー:男性、人間のおっさんに見えるが実はアンドロイド。何処の国にも属さない戦いの見届け役。(人間と兼役)

・エリス:エルフの女性皇族、白銀の長髪を縛ってポニーテールにしている。常識的だがたまに何処か抜けている。

・コハク:性別不問 獣人、小柄で癖っ毛、幼い。親友のチッチは小鳥の姿をしているが、実はマリシ鉱山の炎の石で作られた呪具。

※シナリオ冒頭の人間パートはマズダー役の人が兼役してください。



人間:―素晴らしい!

人間:シャトン君、きみは本当に筋が良い。…どうだろう、君が良ければその力を我がタングリスニのために使ってみないかい?

シャトン:(私が故郷のリーベルを後にしたのは、この言葉がきっかけだった。)

シャトン:(その人間が言うには、タングリスニは軍事国家でしっかりと統制されているものの、資源や食料が乏しいため、小さい小競り合いからはたまた大きな戦まで争いが絶えず、自国の安寧のためにもこうして優秀な人材をスカウトし、国力の増強を図っているとのこと。)

シャトン:(元々弓の扱いには自信があったし、自分の技術を評価されることにも悪い気はしない。)

シャトン:(私は「自分で役に立てるなら。」と答え、タングリスニで国境警備や市民の護衛などをして過ごしていた。)


―市民護衛の依頼を受け、シャトンが待ち合わせ場所の酒場を訪れる。


ティーナ:シャトンちゃん!こっちだよ~。

シャトン:…!

シャトン:護衛の依頼主はティーナか。

ティーナ:うん!やっぱり護衛を頼むならシャトンちゃんが良いな~と思って!頼もしいし!

シャトン:…用件は?

ティーナ:実は今曲を作ろうとしてるんだけどね、なかなか上手くまとめられなくて困ってるの。

シャトン:曲…ハープの?

ティーナ:うん。

ティーナ:私のハープは戦闘補助や戦闘支援にも使えるから、曲のバリエーションを増やしたくて。

ティーナ:ただ、使いたいフレーズはいくつか浮かんでいるんだけど、理想のイメージとは違って何かしっくりこないの。

シャトン:根詰めすぎなんじゃない?気分転換でもしてみたら?

ティーナ:私もシャトンちゃんと同じこと考えたよ~、以心伝心?だねぇ。

シャトン:…それで?

ティーナ:リフレッシュも兼ねて曲作りのインスピレーションが沸くような場所に行ってみようかな?って!

シャトン:…。

ティーナ:…。

シャトン:…あんたの場合、護衛より案内人が必要でしょ。

ティーナ:えへへ…

シャトン:(溜息)

シャトン:…“作曲のためにリフレッシュできそうな場所”ってことは、もう候補があるのね。

ティーナ:リーベル国境の森の辺りに、『春の訪れ』って名前の花畑があるらしいの。規模は小さめなんだけど、その名の通りどんな時期でも春を感じられるような場所なんだって…!

シャトン:…なるほど。リーベル出身の私が護衛にも案内人としても適任ってことか。

ティーナ:…引き受けてもらえるかな?

シャトン:その場所なら知ってる。

シャトン:…いいよ、引き受ける。

ティーナ:本当?!国境警備のお仕事とかもあるだろうし、忙しくない時でいいからね。

シャトン:いや、最近人手は足りてきてるんだ。優秀なスカウトのおかげでね。

シャトン:多分明後日には行けると思う。

ティーナ:わあぁぁぁ…!念願のリーベル!楽しみだなぁ♪


シャトン:…ティーナ?

シャトン:そっちは東。リーベルは西。

ティーナ:あれ~?

シャトン:…これで18回目。

ティーナ:ワザとじゃないんだけどねぇ…。

シャトン:分かってるよ。

シャトン:流石にリーベル目指してタングリスニに着くだけのことはあるね。

ティーナ:やっぱりシャトンちゃんに付いて来てもらって本当に良かったなぁ…

シャトン:それは目的地に着いてから言って。

シャトン:私だって久しぶりで道うろ覚えなんだから。

ティーナ:はーい。

シャトン:…。

シャトン:ここを右に曲がれば見えてくるはず…。

ティーナ:わぁ…!

シャトン:左じゃなくて右ね、み・ぎ!


―右に曲がると、視界が開け、地には色とりどりの花が咲き誇り、その間を蝶が妖精のようにひらひら舞い踊る花畑が現れた。


ティーナ:…素敵。

シャトン:道を間違えずに来られて安心した。

シャトン:…どう?インスピレーションは沸きそう?

ティーナ:うん…うん!

ティーナ:イメージ通りだよ!シャトンちゃんありがとう~!早速スケッチしなくちゃ♪


―ティーナは近くの切り株に座ると、スケッチを描いたり、浮かんだフレーズをメモしていく。

―シャトンはその様子を大切なものを見るような目で眺めると、花畑の周囲や奥に広がる森に視線を移した。


シャトン:(ここは変わらないな…。)

シャトン:(国土は小さいけれど、自然に溢れていて…暖かい日差しや木漏れ日が懐かしい。)

シャトン:(タングリスニも悪い所じゃないけれど、一年の大半が雪で覆われてしまって、草木の緑を目にするのは稀だからな…)


シャトン:何だか、森全体から「おかえり」って言われてるみたいだ…。


―花畑から少し離れた場所でマズダーがその様子を伺っている。


マズダー:(リーベルの森周辺で見慣れない奴らがウロウロしてるから付いて来てみれば…。)

マズダー:(観光か?…にしたって獣人の方は見るからに何かありそうだぞ。)

マズダー:…面白いことになるかもしれねえし、しばらく様子を見てみるか。


―エリス、森の中を歩きながら、木々や動植物に異変などがないか見回りをしている。


エリス:ふぅ…。

エリス:今日も異常はなし…と。

コハク:あ!エリスお姉ちゃ~ん!

エリス:コハクか。いつも元気いっぱいだな。

エリス:…ん?その袋は何だ?

コハク:あ、これ?

コハク:石拾いに行くついでに、マリシで食材買ってきたんだ!

コハク:卵とか…お魚とか…小麦粉とか!

コハク:エリスお姉ちゃんはいつもの見回り?

エリス:あぁ。

エリス:最近どこの国も活気づいているのか、人の往来が激しいみたいでね。

エリス:活気があるのはいい事だけど、その分問題が起こる可能性も高くなる。

エリス:コハクも何かいつもと違う事に気付いたら一人で対処せず必ず誰かに声をかけるんだよ?

コハク:はーい!

コハク:…あ!そういえば帰ってくる時に、東側の端っこで2人の女の人が何か話してたよ。

エリス:女の人…

エリス:リーベルの国民ではなく?

コハク:よく見てなかったから分かんないけど、一人はエルフだったと思う。

コハク:もう一人は…フード付きの短いマントみたいなの着てた。多分人間だったんじゃないかな?

エリス:…。

エリス:コハク、帰ってきてそうそう悪いが、案内してもらえるかい?

エリス:何もないならいいが、不安は拭っておきたい。

コハク:うん、分かった!

コハク:―チッチ!


―コハクがそう呼ぶとどこからともなくチッチが現れる。


コハク:コハクが通ってきた道を案内して!

エリス:よし、行こう!


シャトン:どうだ、調子は?

ティーナ:もうバッチリ!

ティーナ:タングリスニであーでもない、こーでもないって悩んでたのがウソみたいだよ。

ティーナ:頭の中に自然とメロディーが浮かんでくる感覚…

ティーナ:…楽しいな。

シャトン:…そうか。―!


―シャトンの耳がピクッと動く。


マズダー:(お…?あれは…)

マズダー:面白くなってきたじゃねーか…!


ティーナ:…?シャトンちゃん?

シャトン:…誰か来る。

シャトン:(足音が2人分に羽ばたく音…)

シャトン(1人はなるべく足音を立てないように走ってる。走る時の重心のかけ方といい、弓と剣を持ってる…恐らくリーベル軍の者だ。)

シャトン:…戻ろう。

ティーナ:何で?もう少しで曲が書きあがるのに…

シャトン:面倒なことになる、早く―


―シャトンが渋るティーナの腕を引っ張ると、森の奥から風切り音と共に4本の矢が現れ、2人の間に割って入るかの様に地面に突き立てられた。


シャトン:―!!

ティーナ:え?何っ?!

エリス:そこ!何をしている!

シャトン:…。(舌打ち)

ティーナ:…え?

マズダー:まさかいきなりリーベルの皇族、エリス・オーベルが敵意剥き出しで現れるたぁな…想定外だが面白れぇ!

コハク:…!!

コハク:エリスお姉ちゃん、この人達だよ!コハクが見たの!!


―エリス、ティーナの腕が掴まれているのを見て再び弓を構える。


エリス:お前、こんなところで何をしている…。

エリス:―答えよ!

シャトン:…。

エリス:ここはリーベルの国境、知らぬとは言わせんぞ…!

シャトン:…別に何も。

エリス:何も?ならその手は何だ。

シャトン:…。

エリス:答えぬか…。

エリス:―ならば答えさせるまで!!

マズダー:瞬間、エリスが4本の矢を放つ。

ティーナ:きゃあ!!

マズダー:頭で考えるよりも早く、シャトンはティーナを突き飛ばし地面に伏せたのを目の端で確認すると、体を捻った。

マズダー:獣人のしなやかな体躯のおかげか4本全ての矢は躱され、森の奥へと吸い込まれていく。

マズダー:シャトンは何度か飛び退いて距離をとると、自分も長弓を構え、次の矢に手を伸ばすエリス目がけて矢を放った。

エリス:コハク!彼女を安全な場所に…!

コハク:うん…!

コハク:お姉さん、危ないからこっち来て!

エリス:(4本全ての矢を躱し、更には態勢が整いきっていない私に向かって矢を射るなんて…)

エリス:コイツ…出来る。

マズダー:エリスはすかさず避けるも、矢は数秒前までエリスの頭があった場所を通過し、木の幹を深々と抉る。

エリス:(…狙いも威力も申し分ない。)

マズダー:2人共ほぼ同時に飛び退いて距離をとると、周囲には数枚の花弁と甘い花の香りが舞った。

エリス:その反射神経といい…極めつけはその精度と技術…。

エリス:大方他国…タングリスニの軍の者といったところか。

シャトン:…答える義理はない。

エリス:ならば手加減しない―!

マズダー:エリスは弓を構えるかと思いきや、その手を降ろし、一気に間合いを詰めてくる。

すかさずシャトンが短弓を構えて撃つも、エリスは横に飛び退いたため、シャトンが放った矢は頬を軽く掠めただけだった。

マズダー:エリスはコハク、ティーナを背に庇うように立つと再び距離を詰めるが、その際スカートの裾から何かを取り出すと、至近距離で投げつけてきた。

シャトン:―!?

シャトン:(避けられない!打つしか―!)

マズダー:シャトンは、当然それを次射で打ち抜く…が。


―バフッという音と共に、周囲が真っ白に包まれる。


マズダー:シャトンの視界を奪うことに成功したエリスは、すぐさまシャトンの背後に滑り込むと手を捻り上げ、懐から取り出したダガーをシャトンの首筋に当てた。

エリス:…勝負あったな。

シャトン:…っ!

コハク:エリスお姉ちゃんすごーい!!

コハク:アレ何したの?煙幕?

エリス:ちょっとコハクの荷物から小麦粉を頂いたんだよ。後でちゃんと返すからね。

エリス:…して、貴様の狙いは何だ、誘拐か?偵察か?―答えろ!!

ティーナ:あ…ち、ちが…

ティーナ:違うんですー!!

エリス:…は?


―数分後、リーベル国内エリス宅にて


エリス:―誠に申し訳ないっ!!

エリス:よく事情も確認せずに、こちらの一方的な勘違いで君の友人を攻撃してしまうとは…一生の不覚…。

ティーナ:いえ…、私もびっくりして声が出ませんでしたし…。ちゃんと否定すればよかったですね。

エリス:だが、そうだとしても…まさか一般人に剣を向けてしまうなんて…

シャトン:…気にしてない。


―風呂を借りて小麦粉を落としてきたシャトンが部屋に入ってくる。

―エリスはその姿を見てハッと口を開いたものの、すぐに申し訳ない顔に戻る。


エリス:いや、しかし―

シャトン:…なら、この国を案内してくれない?

シャトン:ティーナはずっとリーベルに来たがってたし、ティーナは作曲に必要なインスピレーションを求めてここまで来たんだ。

エリス:…君たちはそれでいいのか?

ティーナ:怪我もありませんでしたし、2人共守ろうとした結果のことなので気にしませんよ。それにもしリーベルを案内してもらえるならすごく嬉しいです!

エリス:…承知した。なら、私とコハクで案内しよう。

エリス:―コハク。


―エリスが玄関の方に目をやると、コハクがチラリとこちらを見る。


コハク:…お姉さん達、怒ってない?

エリス:許してくれるそうだ。

エリス:お礼とお詫びも兼ねて私達でリーベルを案内しないか?

コハク:…!

コハク:案内するー!!


―コハク、ティーナの手を引きながら、リーベルを案内していく。


コハク:ここが、国で一番きれいな泉でしょ?

コハク:透明度も凄いけど、味も良いんだよ!

コハク:この水を使って作るお酒はエルフのひしゅ?って言って絶品なんだってー

ティーナ:そうなんだ!

ティーナ:花畑も素敵だったけど、この泉も素敵ね…。

ティーナ:清浄な気に満たされているような…澄んだ旋律もいいなあ。

コハク:お姉さん、お花好きなの?

コハク:ならこっち―!きれいなお花いっぱい咲いてるんだよ!!


―エリスとシャトン、その後ろを並んで歩いていく。


エリス:先程は本当にすまなかった…。

エリス:言い訳にもならないが、私は幼い頃人攫いに遭ってね、タングリスニに売り飛ばされて労役に服していたことがあるんだ。

シャトン:…。

エリス:兄の助けで私はリーベルに命からがら逃げ伸びることが出来たが、それ以来鍛錬を欠かさず、同じような悲劇が起こらないよう見回りをしているんだよ。

シャトン:私がティーナの腕を引いている姿がそれに重なったのか。

エリス:ああ。

エリス:最近周辺諸国の動きも活発だからね、どうやら神経過敏になりすぎていたらしい。

シャトン:…自国を守ろうとする姿勢は誇っていいと思う。

エリス:ありがとう。

エリス:…シャトン、といったね。

エリス:君はもしかして、昔リーベルに住んでいたことがあるんじゃないか?

シャトン:―!

エリス:その反応は当たりかな?

エリス:コハクが案内する場所を見る君の目が、何処か懐かしそうに見えたものだから。

シャトン:…弓の腕を買われてタングリスニに渡るまでは、この国にいたよ。

エリス:そうか…

エリス:向こうでは苦労などなかったか?あちらは特に寒いだろう。

シャトン:寒さは慣れた。

シャトン:今は昔より統制されて苦労もほとんどない。

シャトン:優秀な人材も増えたからな。

エリス:なるほど。

エリス:…ならやっぱり恋しいのは豊かな緑や自然かな。

シャトン:…恋しくないと言ったら嘘になる。

エリス:私もそうだったよ。

エリス:リーベルの民は常に森や自然と触れ合って暮らしているからね。

エリス:特にリーベルに逃げ延びた時に見た、朝日に輝く森と花々の神々しさは忘れられそうにない。

シャトン:それはさぞ…美しいんでしょうね。

エリス:…シャトン。

エリス:君さえよければまたリーベルに戻ってこないか?

シャトン:!

エリス:君は弓の扱いに長けている。可能なら私と共に軍で自国民を、自国の自然を守るためにその力を奮ってもらいたい。

シャトン:その申し出はありがたいが…先程私は貴方に負けている。

シャトン:そんな人間が貴国の軍にふさわしいとは思えない。

エリス:そんなことはないよ。

エリス:正直、あそこで目くらましをしなければ泥仕合になっていたはずさ。そのくらい君の技術は高い。

シャトン:…。

エリス:ただ…これは君の人生に関わる事だ。どうするかはよく考えた上で君に決めてもらいたい。

エリス:返事は急がないから、一度考えてみてくれ。

エリス:私としてもシャトンが軍にいてくれると心強いよ。

シャトン:…。


―リーベルの案内が終わり、シャトンとティーナは一度タングリスニに帰国することになる。


ティーナ:色々とありがとうございました。本当に素敵な所でいろいろな場所が音楽で溢れていました!!

コハク:お姉さん達、また来てねー!

シャトン:迷惑をかけた。

エリス:いや、こちらも迷惑をかけたからお互い様だ。

エリス:…連絡、待っているよ。

シャトン:…。


―数日後、シャトンが仕事終わりにティーナの家を訪れる。


シャトン:…。

ティーナ:…どうしたの、シャトンちゃん。

シャトン:…。

ティーナ:シャトンちゃんからうちに来るなんて珍しいね。

シャトン:ティーナの声が、聴きたくなった。

ティーナ:ふふ、そっかぁ。

ティーナ:シャトンちゃんに頼られてるみたいで、何か嬉しいな。

シャトン:…リーベルに来ないかって、言われた。

ティーナ:…。

シャトン:正直、リーベルの豊かな自然が恋しいとは思っていた。

シャトン:タングリスニは寒くてなかなか緑を見ることないから…。

ティーナ:…うん。

シャトン:でも、リーベルに行きたいか?っていわれると分からない。

シャトン:タングリスニに不満がある訳じゃないのは分かってる。でも―!

ティーナ:…シャトンちゃん。

―ティーナ、シャトンの両手をふわりと包む。

ティーナ:私、シャトンちゃんはリーベルに戻りたいんじゃないかって思うんだ。

シャトン:…!

シャトン:どうして、そう思うの?

ティーナ:今回、シャトンちゃんとリーベルに行ってみて改めて思ったの。心と身体で感じたことは全て大切にすべき。きっとそれは魂の叫びとか自分自身が本能で感じていることだから。

シャトン:…。

シャトン:で、も…。

ティーナ:?

シャトン:でも…私が出て行ったら、ティーナとは…二度と会えなくなっちゃう。

ティーナ:あら、何で?

シャトン:ティーナ、方向音痴じゃん…それに巻き込まれ体質だし…時々ぼんやりしてるし…

ティーナ:大丈夫。

ティーナ:元々私は自分と同じ種族のエルフがいっぱいいるリーベルに行くつもりだった。でも何故かタングリスニに着いて、シャトンちゃんと会って、今回念願叶ってリーベルに行けた。

ティーナ:これってリーベルに行くことが重要だったんじゃなくて、多分シャトンちゃんと会うために私はタングリスニに辿り着いたんじゃないかと思うんだ。

ティーナ:だから私はどれだけかかっても、シャトンちゃんがいるならちゃんとまた会えるって信じてるの。

シャトン:…。

ティーナ:離れがたいと思ってもらえてるなら嬉しいよ?

ティーナ:でも、シャトンちゃんの枷になるのは嫌だなぁ。

シャトン:ティーナ…。

シャトン:…ありがとう。


―そう言うと、シャトンはゆっくりと離れ、ティーナの家を後にする。

―しかし、ティーナは追いかけず、笑顔のままぽろぽろと涙をこぼす。


ティーナ:やっぱり親友のことは笑って見送りたいからね。


―マズダー、ティーナの家の陰からこの様子を見ている。


マズダー:なるほどなぁ…いきなり戦闘が始まっててっきり捕縛されるのかと思ったものの―和解、交渉説得の末離れることを決めたか。

マズダー:争いってほどではねーが、追っかけてきて正解だったぜ。

マズダー:さてと、次はどの国に行ってみるかな…ティアンの奴もどっか行っちまったし、…ま、俺は俺で動くとしますか。


―マズダー、タングリスニの街に消えていく。


シャトン:(数日後、身の回りの整理を終えた私は夜更けにタングリスニを後にした。)

シャトン:(国境を抜けるかという頃、風に乗って微かに親友が奏でるハープの音色が聞こえた気がして、ふと立ち止まる。)


シャトン:…待ってるよ、親友。

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